先週の陶芸オークションにお越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、7月に入りました。梅雨が明ければ夏本番を迎えますが、汗ばむこの季節、気をつけていただきたいのが金属アレルギーです。
人間にはもともと、自分の体を構成しているものとは異なったものを排除して、自分の体を健康に保とうとする仕組みが備わっています。異物が侵入した場合、普通は吸収され腸などを経て排泄されますが、何らかの理由で有害物質が入り、リンパ球がその物質を「排除すべき異物」と判断すると、リンパ球はその有害物質を攻撃し、死滅させ液体にします。これが皮膚表面に小さな水庖として現れ、かゆくなるのが「かぶれ」です。更に、リンパ球がその有害物質を覚えていて、再度同じ物質が侵入した時、直ちに過剰な拒絶反応を起こすようになることをアレルギーといいます。一度アレルギーになってしまうと、ほとんど治ることがありません。そして、アレルギーを起こす物質をアレルゲンといいますが、アレルゲンの量がほんのわずかでも拒絶反応を起こしてしまいます。

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金属は普通、水には溶けませんが、汗や体液(ピアッシングなどの傷口から出ます)には極微量に溶ける場合があります。これを金属のイオン化といいます。金属イオンは体内に取り込まれ、体の蛋白質と結合します。人によっては、この結合物質が身体の方で異常な物と認識されます。そのため「かぶれ」や「炎症」が起こり、一度炎症が治っても、同じ金属が触れる度に症状を繰り返します。これが、金属アレルギーです。

身の回りの金属で、金属アレルギーを起こす可能性のあるものは20種ほど知られています。そのうち、水銀、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウムが、パッチテスト反応が高いとの報告があります。水銀は装飾品に使われることはまずありませんので問題外として、ニッケルとパラジウムは、知らず知らずのうちに身につけている可能性が高い金属です。
現在ニッケルに関しては、(社)日本ジュエリー協会が、ピアスアッセンブリー(針、キャッチ及び、耳たぶに直接接する部分)にはニッケル含有金属を用いないよう、会員メーカーに働きかけています。ただし、ピアス以外のジュエリーで用いるホワイトゴールドには、割り金として微量のニッケルが使用されている場合があります。同協会では、ピアスアッセンブリー以外のニッケルの使用制限は設けていません。ニッケルが全面的に使用禁止であるとの間違った噂により、使用が避けられるようになったのも事実ですが、ホワイトゴールドでは特に、硬さ、ばね性、色調を求めるために、ニッケルの特性を活かすことがあります。また、ピアスでも、海外のものにはニッケルが用いられているものが稀にありますのでご注意下さい(ヨーロッパにもニッケル溶出率での使用制限はあります)。
そして、ニッケル以上に私たちが接することが多いものが、パラジウムです。一般にはあまり馴染みのない金属のように思いますが、実は大変白くて美しいということで20年ほど前に流行った金属です。価格が暴騰したことや、パラジウムによる公害が報告されたことで、ジュエリーに一定量以上を使うことははばかられるようになったとのことですが、今現在でもプラチナの割り金としてパラジウムは使われています。また、前出のホワイトゴールドに、ニッケルの代わりとして使われることも多い金属です。割り金として少量使う事で、見た目により白く、美しい輝きが出せるということから、用いられているようです。
また、非常に少ない割合ですが、プラチナや金そのものに対してアレルギーを示す方もいらっしゃいます。

人によってアレルギー反応を起こす金属が違いますし、実際何の金属が原因でアレルギーが起きているのかは調べてみるまで分かりません。肌が弱く心配な方や、何らかのアレルギー症状が見られた方は、早めに病院へ行き、パッチテストを受けることをお勧めします。アレルギー反応が見られた金属を避けてジュエリーを選ぶことで、より安全に身につけていただけることと思います。商品によっては、「ニッケルフリー」「ノンニッケル」「パラジウムフリー」などの表示があったり、使用している金属が明記されているものがありますので、そういう物を選ばれると良いですね。そして何より、ジュエリー自体を清潔に保っておくことが、金属のイオン化を防ぎます。夏場は特にお手入れには気をつけて、ジュエリーを楽しんで下さい。