CCAA中国現代芸術賞


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日本では現代アートや若手アーティストを対象にした美術賞が多数開催されており、アーティストの登竜門として知られていますが、中国においても現代アートを対象とした中国現代芸術賞(CCAA Chinese Contemporary Art Awards)という芸術賞が開催されています。今年は評論部門が行われ、先日その受賞者が発表されました。

中国現代芸術賞とは 1997年、元在中国スイス大使、実業家のウリ・シグ(Uli Sigg)氏により独立した非営利団体として設立され、翌年第一回中国現代美術賞が開催されたのを機に、傑出した活躍を見せる芸術家に隔年で賞が贈られてきました。2007年に美術評論家賞が設立されてからは、アーティスト部門と評論部門の二つの部門が隔年で開催されています。

創立者のウリ・シグ氏は1995年から4年にわたる在中国スイス大使を機に中国美術の収集を始め、世界有数の中国現代美術を所蔵しています。ウリ・シグ氏は「中国の芸術文化に貢献した人物」として知られており、中国の現代アートが比較的まだアンダーグラウンドな存在であった頃から中国の現代アートに目を向け、それらをコレクションしてきたそうです。そして、中国の現代アートを世界へと広め、中国人アーティストを国際的な舞台へと導く架け橋となるべく賞が設立され、アーティスト部門に関しては現在、終身成就賞、最優秀芸術家賞、最優秀若手芸術家賞の3つの部門が設けられています。後者2つの賞は、中国現代芸術賞開催年次に至る過去2年の業績に基づいて審査されており、受賞者には賞金および制作費用を支援し、また展覧会への出品やカタログ掲載の機会が与えられています。

昨年は終身成就賞に艾未未(アイ・ウェイウェイ Ai Weiwei)、最優秀芸術家賞にリュウ・ウェイ(Liu Wei)、最優秀若手芸術家賞に曾御鉄(ツォン・ユーチン Tseng Yu-Chin)が選ばれ、それに付随する展覧会が北京のUCCA(ユーレンス現代美術センター)と上海のBound18クリエイティブセンターで開催されました。そのほか、これまでの受賞者には、周鉄海(チョウ・テイハイ Zhou Tiehai)や、現在原美術館でも個展が開催されている楊福東(ヤン フードン Yang Fudong)、中国の若手女性アーティストとして活躍する曹斐(ツァオ・フェイ Cao Fei)等が受賞しており、受賞者は現在、アートシーンにおいて国際的な評価を高めています。

一方、先日の香港クリスティーズでも中国の現代アートの高額落札が話題になっていたように、ここ数年、中国の現代アートに関心を抱く人やコレクターが増加している中、評論に関しては発展途上であり、作品の評価はマーケットに依存しているのが現状です。そのような中、独自の分析と評論が不可欠であると中国現代美術賞評論家賞が設立されました。この賞は、中国現代アートの現状を中心とした独創性のある分析と評論であることを基準に設け、論文のアウトラインのみを公募しています。

第2回目となる今年の評論賞は、27人の応募者から中央美術学院美術館学術部所属の王春辰(Wang Chunchen)が選ばれました。王春辰は研究論文「社会に介入する芸術―新しい芸術関係」を完成させる研究費として10,000ユーロを獲得、その著作は2010年にCCAAにて出版されることが決まっています。論文では、多数の芸術家が作品に日常の社会生活を投影させ、現代の政治及び芸術的規範を問題提起している点について考察しており、中国現代アートの現状に関連性があり、構成や言語の面においても適切であるとすべての評議委員の称賛を得たとのことです。

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今回の評議委員は中央美術学院副院長であり芸術家の徐冰(Xu Bing)氏、中国美術学院教授邱志傑(Qiu Zhijie)氏、雑誌『アート・イン・アメリカ』シニアエディターであるリチャード・バイン(Richard Vine)氏、CCAA創設者、ウリ・シグ氏の4人で構成され、ディレクターは元森美術館のシニアキュレーター、金善姫(キム・スンヒ)さんが務めています。金善姫さんは韓国人でありながら、欧米や日本のアート業界での豊富な経験を持ち、ここ数年は上海を拠点に活動されており、「中国においてこのような賞を立ち上げ、運営していくことは決して簡単なことではありませんが、発展途上だからこそやらなければならない」といいます。

今後も継続的に開催される予定だという中国現代芸術賞。この展覧会や出版物を通して、現在の中国においてどのようなアーティストが評価され、また評論家がどのように中国の現代アートを見ているのかを知ることができるでしょう。
(執筆:M)

中国現代芸術賞
http://ccaa-awards.org/ (中国語・英語のみ)