オリンピックと芸術


 早いもので2016年も、はや2カ月が経とうとしています。今年の2月最終日は29日、4年に一度の閏年です。4年に一度と言えば今年はオリンピックも開催されます。世界中のアスリートたちが一つの都市に集い、しのぎを削って競い合う、スポーツの一大イベントであるオリンピックですが、かつてはスポーツのみならず、各国の文化を競い合う「芸術競技」なるものが実施されていたことを皆さまご存知でしょうか?

 芸術競技の種目は絵画、彫刻、文学、建築、音楽があり、スポーツを題材にした芸術作品を制作して採点し、順位を決めるというものでした。近代オリンピックの提唱者クーベルタン男爵は、古代オリンピックの姿を理想として、芸術をオリンピック競技に加えることを希望して、1912年の第5回ストックホルム大会から、1948年の第14回ロンドン大会まで続けられました。この芸術競技では、1936年のベルリンオリンピックにおいて2名の日本人芸術家が絵画種目で銅メダルを獲得しています。しかし、作品輸送の難しさや、客観的な審査が困難であり、恣意的な審査があったのではという批判もあったため、1952年のヘルシンキ大会以降、「芸術競技」は廃止され「芸術展示」へと転換されました。

 オリンピック憲章には「短くともオリンピック村の開村期間、複数の文化イベントのプログラムを計画しなければならない」とあり、1964年の東京オリンピックでも芸術展示は行われました。それまではスポーツのモチーフに限った作品のみの展示でしたが、東京オリンピックからスポーツモチーフに限ることを止め、「日本最高の芸術作品を展示する」という方針のもとに、芸術、芸能など様々な公演や展覧会が催されました。東京国立博物館では鳥獣(人物)戯画や源氏物語絵巻など、国宝を含む「日本古美術展」が開催され、40万人が来場したという記録が残っています。また、弊社オークションでも人気のある、横山大観や前田青邨、青木繁や岸田劉生といった近代美術の作家の作品も展示され、日本文化の発信という意味において、大きな成功を収めたといわれています。

 2020年の東京オリンピックに向けても、この文化プログラムをどのように実施していくのか、既に検討が始まっているようです。56年ぶりの東京でのオリンピック、スポーツの祭典とだけ思われがちですが、さまざまな芸術分野でも盛り上がりを見せることは間違いないでしょう。メダルの獲得数のみならず、文化イベントなどでも日本の底力に大きく期待したいと思います。

(平野)