伊東深水の美人画(2)―冬を描く


こんにちは。
今年は暖冬と言われていましたが、先週から急に寒くなりましたね。全国各地で雪が降っているようですが、皆様のお住まいの地域はいかがでしょうか。

さて、30日(土)は2016年1回目のオークションを開催いたします。
このオークションは近代美術/近代陶芸/近代美術PartⅡの3ジャンル合同となりますが、今回は近代美術オークションの中から伊東深水の美人画2点をご紹介いたします。



Lot.91 《初春》

70.2×51.8cm
紙本・彩色 額装
右下に落款・印
共シール
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
「伊東深水展」
   (2006年、美術館「えき」KYOTO/京都新聞社)出品

落札予想価格 ¥5,000,000~8,000,000

【 オークション終了につき画像は削除いたしました 】


Lot.92 《牡丹雪》

61.8×71.8cm
絹本・彩色 額装
右上に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥7,000,000~10,000,000

【 オークション終了につき画像は削除いたしました 】


以前も当ブログでご紹介したことがありますが、伊東深水(1898-1972)は上村松園、鏑木清方と並び称される、近代日本画を代表する美人画家です。浮世絵歌川派の系統を継ぐ美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で、広く大衆の人気を博しました。

《初春》は、艶やかな裾模様が施された黒紋付の着物を装い、島田髷を結った女性を描いたものです。黒は女性を美しく見せると言いますが、肌の白さが引き立てられて、洗練された雰囲気と色香を感じさせます。そして、縁起物と言われる稲穂に鳩の簪(かんざし)と傍らの梅の花、金彩を施した背景が、めでたい新年の気分を高めています。
実在のモデルをもとに、理想の女性美を表現したものと思われますが、女性が身に着けた着物や小物には現在、すなわち「浮世」の風俗を描きとめようとする画家の眼差しを感じさせます。それは、江戸の流行を鮮やかに捉えた浮世絵の立場に連なるものであり、松園や清方の美人画とは異なる深水芸術の魅力と言えるでしょう。

《牡丹雪》には、襖を開け、花びらのような雪が舞う様子を楽しむ女性が描かれています。
両輪という髪型を結い、帯を前結びに締めていることから、江戸時代中期の婦人でしょうか。
雪と梅柄の赤い着物とのコントラストが華やかで、襖の直線を生かした画面構成が女性の美しさをいっそう際立たせているようです。
こちらは《初春》のような同時代の女性像ではなく、浮世絵においてしばしば描かれた「雪見」の主題に取り組んだものでしょう。深水の浮世絵への憧れを感じさせます。

このように2点は時代もテーマも異なりますが、ともに冬の風物と美人を組み合わせたこと、描かれた女性たちが「粋」であること、という共通点も見て取れます。また、深水芸術の根幹には江戸の浮世絵があり、自らの生きている「浮世」を描くことがその本領であったということがわかります。

これらの作品は27日(水)からの下見会でご覧いただけます。
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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)