山口長男のかたちと構成―《五つの線》


こんにちは。
12日(土)の「WINE/LIQUORオークション」にご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
30日(水)は、「United Asian Auctioneers   SHINWA AUCTION×LARASATI Auctioneers×iART auction×ISE COLLECTION」を開催いたします。今回のオークションはDAY SALEとEVENING SALEの2部構成となり、下見会とオークションは通常と一部会場が異なりますので、ご確認の上ご来場くださいますようお願いいたします。
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また、オークションは予約制となります。(下見会はご予約なしでご覧いただけます)
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さて、今回も出品作品の中からおすすめの1点をご紹介いたします。
日本の抽象絵画のパイオニアの一人、山口長男(やまぐちたけお)の大作です。


【 オークション終了につき、画像は削除いたしました】

352  山口 長男(1902-1983)
《五つの線》
 180.0×180.0cm
 板・油彩 額装
1954年(昭和29)作
 山口長男作品登録会登録カード付

落札予想価格 
¥70,000,000~¥120,000,000

掲載文献
・『山口長男作品集』(1981年/講談社)№92

出品歴
・「第39回二科展」1954年
・「第3回サンパウロ・ビエンナーレ展」1955年
・「現代日本洋画展―戦前から戦後へ―」1980年(群馬県立近代美術館)
・「山口長男展」1987年(練馬区立美術館)
・「山口長男とM氏コレクション展」2016年(ときの忘れもの)

山口長男は、イエロー・オーカー(黄土色)やヴェネチアン・レッド(赤茶色)の色彩を用いて、かたちの構成や色面の広がりを表現した、日本の抽象美術の先駆的な存在です。朝鮮の漢城(現・ソウル)に生まれ、19歳の時、東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科に入学するために上京。1927年の同校卒業後すぐに渡仏し、パリでは佐伯祐三らとともに制作に励みました。1931年に朝鮮に戻った後は二科会を主な発表の場としながら、九室会や日本アヴァンギャルド美術家クラブなどにも参加し、戦前から戦後にかけての前衛美術運動に深く関わっていきました。
戦後は東京に住居を構え、自然の実体を大らかに捉えて簡潔なかたちによって表現する抽象絵画を追求し、円熟期にはかたちの面的な広がりとともに、「絵具を塗る」というプリミティブな動作の表象へと作品を還元していきました。1955年に第3回サンパウロ・ビエンナーレ、1956年には第28回ヴェネチア・ビエンナーレに出品するなど、国際的にも活躍しました。

1954(昭和29)年作の本作は、同年の第39回二科展、翌年の第3回サンパウロ・ビエンナーレに出品された、この時期を代表する作品の一つ。山口が限定して使用した二組の色彩のうち、プルシャン・ブルー(紺青色)の地とヴェネチアン・レッドの図の組み合わせが表されています。これは山口が自身の「性格色」*1)と呼んでこだわり続けた色彩であり、特にヴェネチアン・レッドは山口が生まれ育った朝鮮をイメージした色彩であるといいます。
円形とそれを中心として構成された五つの帯状の矩形は、幾何学的な抽象とは異なり、手仕事ならではの自然なゆがみを備え、有機的でぬくもりを感じさせます。さらに、それぞれが響きあうかのように均衡と緊張感を保ち、地と拮抗して確かな存在感を湛えているようです。また、色面が画面を覆い尽くすような円熟期の作品に見られる、塗ることへの強い執着は本作にはまだ表れていませんが、ペインティングナイフを用いた丹念な筆致と重厚なマチエールにはその萌芽が見て取れます。山口の創造の源泉である自然との交感、そして生命のリズムが、豊かに朴直に表現された作品と言えるでしょう。

この作品は保税対象作品となりますので、3/28(月)~3/29(火)の期間、羽田空港第1ターミナル内6F ギャラクシーホールの下見会場でご覧いただけます。(銀座下見会場には展示いたしません)
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(佐藤)


*1)山口長男「色いろの告白」『芸術新潮』第10巻6号 1959年