―明治期に生まれた二大陶芸作家 《板谷波山と富本憲吉》―


こんにちは。

先週末からようやく春の気配が感じられるようになり、梅の見頃も近づいてきているところが多いのではないでしょうか?引き続きコロナ禍のなかではありますが、感染対策につとめながら下見会とオークションを行います。ぜひ気分転換のつもりで足をお運びくださいね。

 

さて、今週末に行われます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」からこちらの作品をご紹介いたします。

明治に入り、近代化する社会のなかで、職人としての陶工ではなく、作家としての陶芸作家の地位を確立させたのは、板谷波山(いたや はざん)【1872-1963(明治5-昭和38)】と富本憲吉(とみもと けんきち)【1886-1963(明治19-昭和38)】の影響が大きかったと言われています。

 波山は、代々の家業を継ぐ形で陶工になったのではなく、美術学校で様々な工芸を学び、それぞれの技術を総合し融和させ、地場産業ではない陶芸(当時は波山焼きと呼ばれていました)を生み出しました。また、富本も大和(奈良)、東京、京都と制作地を変えながらも、西欧化する生活のなかに於いて“インテリア”としての陶芸を追求しました。

 両者に共通していることは、「図案」に強い信念を持っていたことでしょう。まずは波山ですが、波山はアールヌーヴォーや、インド更紗、ネイティブ・アメリカンの土器模様など異文化社会の芸術を取り入れ、巧みに発展させた意匠を生みました。とりわけ大正中期頃からは、吉祥文を好んで描いています。今回出品の「瑞凰雲龍文」や「瑞芝(ずいし)文」も不老長寿などを意味する吉祥文です。

そして富本は、既存の模様を使うのではなく、自ら模様を生み出していきました。今回の1952年に作られた「羊歯(しだ)模様」は、前年に金と銀を同時に焼き付けることに成功し出来た金銀彩が、最も映えるとされ、富本を代表する模様であると言われています。4枚の羊歯の葉を菱型に配置し、それを連続させており、鑑賞者を引き込む力強いものです。

その他にも、波山は「青磁」と「裂文(れつもん)青瓷」の袴腰(はかまごし)形の香爐が、富本は「天目釉蝋抜模様壷」、色絵の「風景曲がり道」と「壷と花」の陶板、そして四弁花の「大鉢」が1点出品されます。

 

また、色絵磁器でも、佐賀の地場を引き継いでいる作家も多く出品されます。重要無形文化財保持者(人間国宝)十四代今泉今右衛門の作品をはじめ、洗練された技術を誇る当世作家の作品もお楽しみください。

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なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。

新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

【江口】