山口薫展


 田園調布駅からバスで15分ほど。イチョウや桜の葉がひらひらと舞う、砧公園の美しい並木を抜けて行くと、世田谷美術館があります。

 世田谷美術館では現在、「山口薫展」を開催しています。
 シンワアートオークションでも創業第一回目のオークションから人気を集め、現在も根強く絵画ファンに支持されている作家、山口薫――。
 とても素敵な展覧会でしたので、ご紹介いたします。(概要は文末)


(※図版は掲載許可の期間が終了したため削除させて頂きました。)
山口薫《矢》1952年頃作 油彩・キャンバス
100.3×80.3cm 世田谷美術館蔵


 展示は、画家の人生を辿るように構成されていました。
まずは、東京美術学校を卒業してパリに留学していた時代に描かれた作品。外国で試行錯誤していた山口が、当時流行していたセザンヌ、モディリアーニ、マティスらの影響を受けたことを感じさせます。
 戦時中に描かれた作品、《苔むす巌》は、ある種の戦争画で、このあたりの作品には、「山口薫も、かつてこんな絵を描いていたのか」という新鮮な驚きを抱きました。
 
 画風が確立して画壇での名声を得てからの大作は、アンフォルメル風にも見えますが、やはり山口らしい透明感が増していく感じがして、日本人の情緒を感じました。
 山口薫は、詩的な雰囲気や、ひし形を多用した造形遊びの面白さに魅力を感じる方が多いように思いますが、《矢》という作品では、ダイナミックな躍動感があって、その迫力が印象に残りました。

 展示の最後には、絶筆《おぼろ月に輪舞する子供達》という作品がかけられています。
 これは自らの死を予感しながら描いたと言われていて、本当に、死後はこのような世界が待っているのかもしれないと感じられる、不思議な作品です。

 今回の展覧会は、最近コンテンポラリーアートの展覧会を見慣れている私には、「絵を観るよろこび」を感じさせてくれるものでした。
 ご紹介が会期半ばになり恐縮ですが、世田谷美術館で12月23日まで開催中です。
この後、三重県立美術館に巡回(2009年1月4日~2月22日)しますので、関西方面の方はそちらでもご覧頂けます。

<山口薫展>
会場: 世田谷美術館
会期:2008年11月3日~12月23日
休館日: 月曜日
開館時間: 午前10時~午後6時(入場は閉館の30分前まで)
観覧料: 一般1,000(800)円、大高生/65歳以上800(640)円、中小生500(400)円 
( )内は20名以上の団体料金、障害者割引あり

(執筆者:I)