吉祥文ー瓢箪と椿《12月近代陶芸/古美術》       


こんにちは。

気が付けば師走。あっという間に「もういくつ寝るとお正月」の歌が聞こえてきそうです。来年は、令和としての初めての年明けでもあり、オリンピックが開催されるなど華やかな一年になりそうですね。そんな年始にふさわしい、おめでたい吉祥文をモチーフにした作品を今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」からいくつかご紹介したいと思います。

まずは古美術オークションより、瓢箪(ひょうたん)に関する作品から。

瓢箪は、三つで「三拍(瓢)子揃って縁起が良い」や、六つで「無病(六瓢)息災」など語呂合わせで縁起が良いとして古くから人気のあるモチーフです。『日本書記』にはすでに記述があり、戦国武将や大名茶人、絵師たちが好み「瓢(ひさご・ふくべ)」形の品が多く伝世されてきました。

LOT.71は、「浮瓢軒」とも名乗っていた片桐石州が所蔵していたのではないかとされる小さく愛らしい形の茶入です。LOT.74は、良く見るふくよかな瓢形ではなく、ひょろ長く寂びた絵付けを施している香合で、仁清という作家の奇抜な人となりを伺い知ることができます。そして、LOT.75は、上部を切り取った、瓢そのものを乾燥させ花入にしたものです。元々、千利休が考案した掛花入で、利休の侘茶を目指していた大名茶人の松平不昧が模して作ったとされています。最後にLOT.108狩野探幽「朱印瓢箪畫名印」ですが、金彩のみで瓢の一部を浮き上がらせ、自身の瓢形の朱印を用いて瓢箪そのものとしているところが珍しく、洗練された趣があり「洒脱」という言葉がふさわしい一幅です。

他にも、立身出世の蟹が彫刻された「郭索硯」(LOT.68)や、子孫繁栄の象徴の唐子が描かれた「南京赤繪唐子火入」(LOT.78)、また唐子を背に乗せた麒麟の香爐「色繪銅麒麟人物香爐」(LOT.103)、そして松竹梅を「松茸・筍・梅果」で表現した呉春の「松竹梅 三幅対」(LOT.81)など様々な吉祥文を用いた作品が、古美術オークションに彩りを加えています。

 

続きまして近代陶芸オークションより、椿があしらわれた作品をご紹介します。

椿は常緑樹で青々とした葉が落ちないことから、繁栄の象徴と考えられています。11月下旬頃に開花するので、最近ご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

紅椿の花言葉は、「謙虚な美徳」。彌弌の香盒と香爐にも紅椿がありますが、どちらも蕾の姿をしており、その控えめな花言葉にふさわしい美しい図柄です。また白椿の花言葉「完全な美しさ」を知ってから香爐を見ると、ぱっと咲いた白い椿の華やかさが際立つ気がします。音丸の椿香合も、花びらの部分をあえて白くしていることから、白椿を元にしているのかもしれません。金箔も使用されており、お正月の初釜に見合う一品ではないでしょうか。

 

新たな年へ向けて道具の取り合わせを考えながらご覧になるのも、一興かと思います。

ぜひ下見会、オークション会場へ足をお運びください。

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                        【執筆者:E】