3月近代陶芸オークションより 平櫛田中・北大路魯山人・富本憲吉の名品


こんにちは。
ひなまつりも過ぎ、季節は少しずつ春めいてまいりました。花粉症の方にはつらい季節でもありますが、がんばって乗り越えてまいりましょう。

さて、今週9日(土)は近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークションを開催いたします。今回も出品ラインナップの中から注目作品をご紹介いたします。


【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

130   平櫛 田中
《洽堂萬福 郭汾陽》
H28.8×W18.6cm
背面に銘「九十三翁中作之」、「昭和甲辰十月」刻
共箱
平櫛弘子証明書付
1964(昭和39)年作

落札予想価格 
★¥1,500,000~¥3,000,000


平櫛田中(1872-1979)は、伝統的な木彫に西洋彫刻の写実性を取り入れ、明治・大正・昭和を通して、日本の近代彫刻を牽引した作家です。

モデルとなった郭汾陽(かくふんよう)は、中国の唐代中期、国家の危機を救ったと伝えられる武将で、別名を郭子儀(かくしぎ)と言います。
たくさんの子どもや孫がいたという汾陽は、皆の名前を覚えきれず、名前を記した札を見ながら子どもたちを呼んだと言われており、本作はその姿を表わしたものでしょう。
好々爺となった名将の佇まいが味わい深く表わされており、平野富山らが手掛けたと思われる彩色も見事な仕上がりです。子宝や長寿、多幸を象徴する作とも言えるでしょう。




131 北大路 魯山人

《織部手桶花入》
H16.6×D42.0cm
高台内に掻き銘「魯山人」
共箱

落札予想価格
¥3,000,000~¥5,000,000


北大路魯山人(1883-1959)は、研ぎ澄まされた審美眼と溢れる創作意欲により、書、篆刻、陶芸、漆芸、絵画、料理など、様々な分野で才覚を発揮した美の探究者としてよく知られています。

本作は、魯山人の作品の中でもとりわけ大振りの桶花入。美のある生活を求め、また、自らの料理の理想を茶の湯の懐石とした魯山人は、食器だけでなく、こうした花入や茶碗といった茶陶、暮らしを美しく彩るやきものを数多く制作しました。
織部焼の技法は、その技術を高く評価され、重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を打診されるも辞退したという、魯山人の陶芸を代表するものです。ところどころ青みがかった緑釉が奥深く優雅で、草花のある風景を題材としたと思われる絵付けも風趣に富み、花を生けたときの豪奢な雰囲気を様々に想像させます。




132  富本 憲吉
《色繪瓢形大徳利》
H33.4×D24.0cm
 高台内に描き銘「富」
共箱
1944(昭和19)年作

・「富本憲吉展」出品
  東京国立近代美術館工芸館/1991年
・「近代陶芸の巨匠 富本憲吉展―色絵・
  金銀彩の世界―」出品
  奈良県立美術館他/1992年
・『富本憲吉全集2 東京時代』
  P.93 №121(小学館)

落札予想価格
¥6,000,000~¥12,000,000


色絵磁器の第一人者としての高度な技が評価され、第1回重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された富本憲吉(1886-1963)の作品です。

戦争によって思想や物資が統制された1943年から45年までの間、富本は窮屈な世相への諷刺を込め、「ぶらり、のんびり」の象徴である瓢形の大徳利を数点制作したといいます。1944年作の本作はその一つで、染付を主調とした菱形の連続模様と、四弁の白い花を図案化し、格子状に配した模様が交互に斜めに表されています。特に、この四弁花模様は、自宅に植えた定家葛(ていかかずら)の花をもとに創作されたという、富本の多彩な模様の中でも代表的なものの一つです。二種類の模様が織りなすリズムと徳利の豊満なフォルムとが美しく響き合う優れた作例と言えます。
なお、本作では、菱形模様が一マスだけ、緑地に黒の水玉模様となっています。これも富本の遊び心を感じさせる見どころの一つ。ぜひ下見会場で作品をご覧になり、探してみてください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)