12月近代陶芸-銀彩で見る藤本能道・北大路魯山人



先週末の近代美術PartⅡオークションにご来場、ご参加頂いたみなさま

ありがとうございました。今週は近代陶芸、近代美術PartⅡ(陶芸)オークションが開催されます。

 

 今回は「銀」を巧みに使った作品2点をご紹介したいと思います。

まず一点目は藤本能道の「草白釉釉描(そうはくゆうゆうびょう)色絵(いろえ)(ぎん)(さい)(もず)枯葉図(かれはず)四角(しかく)(すみ)切大筥(きりおおばこ)」です。

 


★LOT.105藤本能道「草白釉釉描色絵銀彩鵙枯葉図四角隅切大筥」H6.7×W32.3㎝  共箱 高台内に描き銘「能」、「鵙枯葉図」記 「藤本能道展」出品 有楽町西武/1988年  「藤本能道展」出品 青梅市立美術館/1988年 落札予想価格:¥2,500,000~3,500,000

★LOT.105藤本能道
「草白釉釉描色絵銀彩鵙枯葉図四角隅切大筥」
H6.7×W32.3㎝
共箱
高台内に描き銘「能」、「鵙枯葉図」記
「藤本能道展」出品 有楽町西武/1988年 
「藤本能道展」出品 青梅市立美術館/1988年
落札予想価格:¥2,500,000~3,500,000



(ふじ)本能(もとよし)(みち)(1919-1992)は、日本の色絵磁器のエリートとも言える道を歩んだ人物です。

東京美術学校(現:東京藝術大学)工芸科図案部を卒業後、富本憲吉、加藤土師萌から薫陶を受けました。両者とも色絵磁器で人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されています。初期の頃は富本の影響を強く受けた作品が多くありましたが、1970年(昭和45年)に東京藝術大学教授となってから亡くなるまでの約20年間、独自の色絵磁器の表現を追求していきました。

藤本作品の下地とも言える釉薬を自ら作り出し、「草白釉」「雪白釉」「梅白釉」「霜白釉」などと名付けました。モチーフも多くの鳥や花を描き春夏秋冬を感じさせ、歳を重ねる毎に技術が冴え渡っていきました。また、金銀彩で荘厳さを増し、最晩年には「(えん)()」という辰砂が溶け込むような技法で妖艶な図柄を生み出しました。それによって色絵磁器の硬さは消え、没骨描出法により「藤本能道」独特の絵画的色絵磁器を作り出したのです。1986年(昭和61年)には、能道自身も人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されました。

 

 今回の作品は、人間国宝になった後の作品です。秋空に鵙という図柄は、能道の得意とする図柄の一つです。澄んだ青空に孤高の鵙が一羽。そして先端には、赤く色づいた枯葉が一枚。たなびく雲とススキの穂に銀彩があしらわれ、淋しい秋ではなく、気品ある風情に仕上がっています。銀彩を風景に少し乗せただけで、作品の良さが凝縮されたように感じます。

 

一方、銀彩をふんだんに用いた作品が、北大路魯山人の「銀彩ネジ壷花入」です。


LOT.107 北大路魯山人 「銀彩ネジ壷花入」  H26.7×D22.0㎝  肩部に掻き銘「ロ」  共箱 落札予想金額:¥3,500,000~¥5,000,000.

LOT.107 北大路魯山人 「銀彩ネジ壷花入」
 H26.7×D22.0㎝
 肩部に掻き銘「ロ」
 共箱
落札予想金額:¥3,500,000~¥5,000,000.



北大路魯山人(1883-1959)は、あらゆる芸術を手掛けたアーティストでした。食に合った器を作るために、陶器の世界へ入った魯山人は、備前焼、信楽、織部、志野、染付、金襴手と他の作家ではありえないほど多くの種類の器を作りました。魯山人はある時、焼き過ぎなどの理由で、長い間放置していた備前焼に銀彩を施し再生し、売り出すことに成功しました。晩年はこの手法に凝り、銀が酸化し黒ずんでしまうのを防ぐために白金(プラチナ)を使用したと言われています。また銀彩の上から緑や黄、藍で水玉模様に加彩している事が多いのですが、今回の作品は緑と黄の太い線で捻子模様を付けています。たっぷりの銀の上から銀を隠すように線を入れるとは、なんとも大胆で豪快な作品です。

 

 「銀彩」に着眼点を置くだけでも、それぞれの作家性というものが垣間見えますね。

まだまだたくさんの作家作品が今回もご覧になれますので、ぜひ下見会場に足をお運びください。

下見会・オークションスケジュールはこちら。

(執筆者:E)