加山又造の動物画―《黒豹》と《日輪》



こんにちは。
いたるところでクリスマスイルミネーションの点灯が始まり、早いもので今年も残すところ1ヶ月余りとなりました。
シンワアートオークションでは、今週から4週にわたってオークションを開催いたします。
最高の盛り上がりで2013年を締めくくりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今日も23日(土)開催の近代美術オークションの出品作品から、おすすめの作品をご紹介いたします。
現代日本画の偉才・加山又造(1927-2004)の動物画2点です。

 

 【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

《黒豹》
60.2×72.2cm
紙本・彩色 額装
昭和32年頃作
左下に落款・印
共シール
「加山又造全集 第一巻 動物たち/風景」№40(学習研究社)
落札予想価格 ¥12,000,000~18,000,000

 

  【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

《日輪》
52.8×73.7cm
紙本・彩色 額装
右下に落款・印
共シール
落札予想価格 ¥8,000,000~15,000,000

 昭和24(1949)年、東京美術学校を卒業した加山又造は、創造美術への出品を機に画壇にデビューを飾りました。以後10年余りにわたって主題となったのがこの動物画です。
 加山はこのテーマのために上野動物園に通い、世界各国からやってきた動物の造形の面白さや生命感、孤独や悲哀といった様々な様相を描き出しました。また、ルソーやピカソ、ブリューゲルなどの西洋美術、琳派や室町水墨画などの日本の古典絵画といった、古今東西の手法を取り入れて彼らを斬新かつ装飾性豊かに表現し、戦後の新しい時代にふさわしい日本画の創造を追求していきました。
 加山作品の魅力を一言で表わすならば「革新性と装飾性」ですが、晩年までの様々なテーマの中で最も革新的だったのはこの動物画ではないでしょうか。

 《黒豹》は、動物園の檻の中の2頭の黒豹を描いたものです。
牙を剥き、鋭い眼光で檻の外を睨む姿には、野性を奪われた猛獣の哀愁が漂っています。この作品では、網の目状に錯綜する無数の線によって黒豹や檻、園内の風景を描き、黒豹の精悍な体を立体的に表わして、画面に奥行きと装飾性をもたらしています。

 《日輪》は、太陽に向かって鴉(からす)の群れが飛び交う情景を描いたものです。一見風景画のようですが、主役は鴉たちです。
 動物画シリーズの後期には、このように鴉をモチーフとした個性的な作品が制作されました。それは、それまでの動物画とは異なる精神的密度の高い心象表現により、極めて暗示的で象徴性の強い作品群となりました。
 この作品では、鴉だけでなく、夕焼けに染まる樹木までもが妖しく神経質な枝を太陽へ伸ばすという求心的な画面構成が、まさに象徴的な空間を創り出しています。鴉とともに描かれた太陽は、彼らを温かく包み込むような存在ではなく、惹きつけながらも寄せつけぬような気高く神秘的な気配を醸し出すようです。
 また、ここでは古典絵画の地肌のひび割れにヒントを得たという金箔を押した揉み紙を支持体に用いて、燃えるような夕焼け空のただならぬ空気を装飾的に表現しています。

 窮屈な檻から出ることのできない黒豹、絶対的な存在に立ち向かうように羽ばたく鴉、加山はそれぞれに深い共感を抱き、自分自身を重ね合わせるように描きました。そこには、新しい日本画の創造を求めて、戦後の日本画が直面した逆境や日本画壇の古い因習と闘い続けた加山の孤独な魂、揺るぎない信念が映し出されています。

ご紹介しました2点は、ただいま下見会場でご覧いただけます。
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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)