魯山人と芹沢作品に見る遊び心


桃の節句も過ぎ、いよいよ春が間近に感じられるようになってきましたね。

さて、今週末に行われます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」から、こちらの作品をご紹介致します。

LOT.213・北大路魯山人「そめつけ唐子花入」
      H36.2×D22.1cm
      高台内に描き銘「魯山人」
      共箱
     ¥4,000,000~¥6,000,000

 

北大路魯山人の染付の大きな花入と言えば、詩文などを袋文字で絵付けしたものか、染付一色で描かれる魚図等が代表的ですが、こちらは唐子図で赤玉が入った珍しい作品です。

 明末あたりによく描かれた呉須赤絵の模様のひとつである、赤や緑の網目と花模様の中に赤い玉が描かれた「赤玉手」と呼ばれるこの模様を、魯山人は甚く気に入っていたようで、初期のころから約30年間作り続けました。ここではその赤玉のみを抽出し、ぐるりと配置することで、唐子たちがリズミカルに歩く様子を演出しています。唐子図は通常七人、五人、三人の図柄があり、松の木の下で様々な遊びをしている様子が描かれます。こちらの図柄は、孟母三遷、司馬温公の瓶割、木馬遊び、風車遊び、そして采配を振って遊んでいる五人の唐子が描かれています。人物を描くこと自体稀有な作家ですが、それぞれの動きがなんとも愛嬌のある作品に仕上がっています。

LOT.214・芹沢銈介「型絵染 いろは文六曲屏風」
     134.7×29.5cm
     六曲一隻(171.5×279.0cm)
     芹沢長介シール
    ¥700,000~¥1,200,000

芹沢銈介は、「型絵染(かたえぞめ)」で1956年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された作家です。元々芹沢は、静岡で図案家(デザイナー)として仕事をしていましたが、1928年に日本民藝館にて展示された沖縄の「紅型(びんがた)」に魅了され、染織家としての道を歩き始めました。「紅型」は、一枚の型絵を使い、多彩な色を木綿地やまたは上布に染める沖縄の民藝品です。図案家としての技も型絵染に反映させ、染布表紙の装幀の仕事や、屏風、のれん等を数多く手掛けました。また、ガラス絵や板絵、絵本も制作するなど多岐にわたる活動を続けました。

「いろは文」は、芹沢の代名詞ともいうべき作風です。1959年に第一作が作られたとされています。画面に踊るようなデザイン的な文字回りに描かれている様々な民藝品・四季を感じさせる動植物などは、見ているものを飽きさせない遊び心に溢れた作品と言えるでしょう。

 

今回はその他に、印籠や根付が多く出品されます。江戸後期に隆盛を誇った印籠や根付は、身近な装飾品として男女問わず身につけることができ、かつ江戸の人々の繊細な美意識やユーモアを凝縮したような工芸品です。当時の人々の粋な装飾文化もぜひ併せてお楽しみください。

 

下見会場・スケジュールはこちら。                   (執筆者E)