3月近代陶芸ご紹介―人間国宝・寛次郎の鐘渓窯・唐九郎の志野茶碗


こんにちは。ここ最近ようやく関東でも春めいてきましたが、まだまだ寒さが尾をひきそうですね。そして花粉も飛ぶ季節となってきましたので、皆様体調管理にはぜひお気を付けください。

 さて、今回は「近代陶芸・人間国宝・近代陶芸PartⅡオークション」の出品作の中からいくつかご紹介します。

人間国宝200

人間国宝」とは、「重要無形文化財保持者」の通称です。この「重要無形文化財保持者」は戦後、伝統工芸を守るために定められた文化財保護法の制度の一つで、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形などに関する工芸技術を「無形の文化的所産」とし、その中でも、我が国にとって歴史上または芸術上特に価値の高い「技」を保持する作家(団体)が、それを後世へ継承し、発展させていくために認定をされるというもの。認定の際、陶芸ならば「色絵磁器」や「染付」など、その「技」も明示されます。

本オークションでは、初年に認定を受けた富本憲吉や濱田庄司をはじめ、弊社でも久しぶりの出品となる木工芸の黒田辰秋など32人(一団体を含む)の「人間国宝」の優れた作品をご紹介します。

 伝統の技と高度に成熟した芸術性を兼ね備えた匠たちの作品をぜひご覧ください。

 

続いて「近代陶芸」の作品をご紹介します。

鐘渓窯_200

河井寛次郎の作品は、今までも数多く出品されていますが、今回は初期の作品が出品されます。

 この二作品には、どちらも「鐘渓窯」(しょうけいよう)という印銘が押されています。後に自分は“無銘の陶工”でありたいという信念から銘を入れなくなるまでの、およそ4年間にしか見られない珍しい作です。

寛次郎は、1920年(大正9年)、30歳の時に、五条坂鐘鋳(かねい)町にあった清水六兵衛の窯を譲り受け、「鐘渓窯」と名付け住居と窯を構えました。現在の河井寛次郎記念館がある場所です。

その頃は宋の陶器に憧れ、唐子のモチーフや、青磁、辰砂、菁華などの技法を用いたものを多く作陶しました。当時の事を寛次郎は、「ねてもさめても宋の陶器、宋の太陽が輝いておったわけです。」註)と後に述懐しています。宋の太陽に魅入られていた頃の寛次郎作品をぜひご堪能ください。

 

そして、加藤唐九郎「志野茶碗」も出品されます。

唐九郎300-2

鮮やかで濃い赤紫の志野茶碗です。「玄」の掻き銘も高台脇に施され、晩年の作であることが伺えます。「玄」は「くろう」と読み、「陶玄」(とうくろう)という当て字を用いた銘から派生しました。一度は陶芸界の一線から遠ざかった唐九郎ですが、連作の志野茶碗を作ることにより見事に返り咲き、その勢いは最期まで増していきました。

堂々たる加藤唐九郎の志野茶碗をぜひお楽しみに。

また今回は、オークション当日に下見会を開催致しませんので、

お気を付けください。

下見会・オークションスケジュールはこちら。

註)『生命の歓喜 生誕120年河井寛次郎展』河井寛次郎記念館・毎日新聞社編集/2010年

 

                      執筆者:E