近代日本画の巨匠・横山大観と菱田春草の合作―《飛泉》



こんにちは。
今週は真夏のような暑さが続きましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
39度を超える猛暑の地域もあったそうですので、熱中症にはくれぐれもお気をつけください。
予報では来週も暑いようですが、梅雨明けもそろそろ?ということでしょうか。

さて、今週18日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今日もオークション出品作品の中からおすすめの一点をご紹介いたします。

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菱田春草/横山大観 《飛泉》

(左)菱田春草        (右)横山大観
121.5×48.3cm          121.3×48.4cm
絹本・彩色 軸装        絹本・彩色 軸装
左下に落款・印         右上に落款・印
東京美術倶楽部鑑定委員会    横山大観記念館登録有り
鑑定証書付           横山大観箱
菱田春夫鑑定証書付                                      


落札予想価格  ¥6,000,000~¥10,000,000


横山大観(1868-1958)と菱田春草(1874-1911)、のちに「近代美術の巨匠」と呼ばれることになる彼らは、青年時代をともに歩んだ盟友にして、良きライバルでした。
大観が21歳、春草が15歳のとき、二人は結城素明の画塾で出会います。
まもなくして東京美術学校(現・東京芸術大学)が新設されると、第一期生として大観が、翌年には春草が入学します。二人はともに岡倉天心のもとで様々な伝統技法を学び、それを生かした新しい日本画の創造を目指していきました。
明治31(1898)年、東京美術学校校長を辞任した天心は日本美術院を創設。
大観と春草もこれに参加し、「空気を描く工夫はないか」という天心の問いに答えるべく、二人で「朦朧体」という新しい技法を試みます。インドやヨーロッパ、アメリカへの外遊、そして日本美術院の茨城県五浦移転の際も苦楽をともにし、明治44年に春草が36歳という若さで早世するまで、互いに影響を与え合いながら日本画の近代化に取り組んでいきました。

《飛泉》、すなわち滝を題材とした本作品は大観と春草による合作です。両者の落款、印より明治33~36年頃に制作されたものでしょうか。この時期、新しい表現の追求の一環として二人はまさに「朦朧体」に取り組んでおり、伝統的な線による表現を排して光や空気、空間を没骨彩色の描法によって描きました。
そのため、本作のような合作もこの時期に集中して制作されています。

本作では、墨の濃淡によって大きな滝が激しく流れ落ちる情景が描かれています。
そして、「朦朧体」のポイントとなる“ 空刷毛”(からばけ)※によるぼかしを画面全体に施し、水しぶきや辺りの潤いに満ちた空気を表わしています。
大観がごうごうと音を立てて勢いよく流れる滝の流動感や雄渾な趣を際立たせたのに対し、春草は前景にヴォリュームのある岩を配して空間に奥行きをつくり出し、滝の神秘的な雰囲気を表現しています。
豪放で情熱的な大観と繊細で理知的な春草、それぞれの個性がよく表われた合作であり、巨匠たちの若き日を偲ばせるとても貴重な作品です。

※ 乾いた刷毛を刷いて画面をぼかす技法

この作品はただいま下見会場でご覧いただけます。
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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)