菱田春草の《朝顔》


こんにちは。 
梅雨とは思えないようなよいお天気ですね。
どうやら今週の前半は晴れの暑い日が続くようです。
もう海開きしている海水浴場も多いですし、
こんな日は海もいいですねー。

 先週の大阪下見会、東京のPartⅡ下見会にご来場くださったみなさま、
ありがとうございました。
 今週は、いよいよ近代美術、近代陶芸、ジュエリー&ウォッチの東京下見会が始まります!水曜日のオープンに向けて、社内では今日から展示作業に入っています。

 では今日も、土曜日の近代美術オークション出品作品から1点ご紹介いたします。

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Lot.12 菱田春草 《朝顔》
126.0×31.3cm
紙本・彩色 軸装
右下に落款・印
横山大観箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト \1,000,000~1,500,000



 まずは、菱田春草(1874-1911)のご紹介。
横山大観と並び称される日本画の巨匠ですが、37歳という若さで亡くなってしまったために、その画業はわずか16年ほどの短い期間しかありません。
晩年の作品《黒き猫》(明治43年・永青文庫蔵)が重要文化財に指定されています。
 
 長野県に生まれた春草は、上京して狩野派の結城正明に学んだ後、1890年東京美術学校に入学。岡倉天心に学びました。1896年同校の教員となりましたが、1898年天心の辞職とともに自らも美術学校を去り、日本美術院の創設に参加。天心や盟友・横山大観とともに新しい日本画の創造を目指していきます。線描を用いない没骨彩色の方法で、空気や光線を表現した「朦朧体」の急先鋒として革新的な作品を発表しました。1903年から数年間にわたって、大観とともにインド、アメリカ、ヨーロッパを歴訪。1906年日本美術院が茨城県五浦に移転した後は、大観らと同地で画業に励み、琳派の装飾性や西洋画の技法を取り入れた作風を展開。晩年は、視力に異常をきたしながらもそれを感じさせない澄明な色彩の名作《落葉》、《黒き猫》などを制作しました。

 本作品は、この季節にぴったりの花、朝顔を描いた作品です。実際は今が見頃の朝顔ですが、旧暦に由来する季語としては、秋の季語となります。
 落款と印から、晩年の作でしょうか。この時期は、西洋画の構図と日本や中国の古典絵画の研究の成果を生かし、西洋の技と東洋の精神性を巧みに融合させた作品を制作しました。
 本作品では、朝顔のつるが見せる曲線の妙に画興をそそられたのでしょう。その様子を、縦に長い構図を活かして描いています。朝顔の葉に用いられた「たらしこみ」の技法に目を奪われますが、鎖には没線描法が用いられており、春草らしい味わいが漂っています。大胆にとった余白と墨彩の中に際立つ鮮やかな青色が夏らしく、清々しい作品です。この作品がお部屋に掛かっていたら、真夏の暑い日もなんとなく涼しく感じられそうですね。

※俵屋宗達が始めたと言われる日本画の彩色技法。色を塗ってまだ乾かないうちに他の色をたらし、その滲みによって彩色の効果を出すもの。琳派の画家たちが盛んに用いた。

この作品は、今週東京でご覧になれます。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

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(執筆:S)