舟越保武の女性像


こんにちは。
朝晩はずいぶん涼しくなり、少しずつ秋らしくなってまいりました。
土日祝日がお休みの方は三連休が続きますが、銀座でショッピングをされる際は、ぜひオークションにもお立ち寄りください。

さて、今週21日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。今回のオークションでは、戦後の具象彫刻を代表する作家、舟越保武の作品が複数出品されますので、ご紹介いたします。

舟越保武(1912-2002)は、岩手県生まれ。17歳のときに高村光太郎訳『ロダンの言葉』に影響を受けて彫刻家を志し、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学します。在学中から良きライバルであった佐藤忠良とともに切磋琢磨し、卒業後は二人で新制作派協会彫刻部の創立に参加。1940年頃から大理石彫刻に着手し、1950年にはカトリックの洗礼を受け、キリスト教を主題とした作品を制作していきます。1962年に第5回高村光太郎賞、1972年には第3回中原悌二郎賞を受賞。1967年から東京藝術大学、多摩美術大学などで教鞭を執り、後進の指導にも力を尽くしました。
ブロンズの重厚さと大理石の柔らかな肌合いを生かし、自らの深い精神性や祈りを込めた静謐な作風で知られる作家です。


65 《田沢湖のたつこ》

        H96.8×W24.7cm
  ブロンズ
  側部に刻銘
  台座付(H57.5×W45.0×D45.0cm)
  舟越苗子鑑定証付

  落札予想価格
  ★¥500,000~¥800,000


秋田県の田沢湖のほとりに立つ《たつこ像》のエスキースです。この地に生まれた美しい娘たつこが、永遠の若さと美しさを願ってお百度参りをし、観音様のお告げにしたがって山の奥深くに湧く泉の水を飲んだところ、大きな龍の姿に変わり、田沢湖の主となったという伝説がテーマとなっています。
本作では、舟越が偶然見かけたという工事現場で働く若い女性の姿からイメージを膨らませ、龍神となる前のたつこを美しく清らかに表現しています。








 

 

 

 

66 《若い女の顔》                67 《LOLA》
  
H31.0×W23.6cm                  H43.0×W42.0cm
  大理石                      ブロンズ
  側部に刻銘                    背部に刻銘
  台座付(H18.0×W31.8×D31.2cm)            台座付(H8.8×W53.5×D32.2cm)
  自筆証明書付                                                                     自筆証明書付
  落札予想価格                                                                     落札予想価格
   ★¥500,000~¥800,000                                               ★¥300,000~¥500,000

66《若い女の顔》と67《LOLA》は、舟越の代名詞的な主題、若い女性の像です。どちらの作品も表情に古代ギリシャ彫刻のアルカイック・スマイルが取り入れられ、微かに微笑みを浮かべた端正な顔立ちとなっています。さらに、ともに理知的で優美な雰囲気が漂い、理想化された女性美が表現されています。
また、66《若い女の顔》では、舟越芸術の根幹をなす大理石が素材とされています。滑らかに磨き上げられた顔と鑿の跡の残る頭髪部分に表われた柔らかな陰影、石肌の優しい風合いが女性像の魅力を増しているようです。


     68 《聖ベロニカ》
             H35.5×W26.0cm
            ブロンズ
             昭和52(1977)年作
             側部に刻銘 
            台座付(H17.0×W16.0×D16.0cm)
            舟越苗子鑑定証付
            落札予想価格
              ★¥300,000~¥500,000

舟越は、洗礼後、自身の信仰心を反映させた聖女像を数多く制作しました。
本作は、十字架を背負い、血と汗を流しながらゴルゴダの
丘を登るキリストのために、自らが身につけていたヴェールを差し出した女性、ベロニカが題材となっています。
キリストが汗を拭った後、ヴェールにはその顔が浮かび上                                                                        がり、それは「聖顔布」として現在もローマの教会に保存されているといいます。本作では、静けさの中にも、キリストの受難を前にしたベロニカの深い悲しみが眼差しや口元によく表されています。


角度によって表情が様々に違って見えるのも彫刻作品の魅力の一つです。
ぜひ下見会場で、舟越が創り出した女性像の美を360度からご堪能ください。

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皆様のご来場を心よりお待ちしています。

(佐藤)