横山大観の傑作《山に因む十題》《海に因む十題》を忠実に再現―《山海各十題巧藝画》


こんにちは。
立冬を過ぎ、朝晩は寒さを感じるようになってきましたね。
一日の気温差が大きい時期なので、風邪にはお気を付けください。

さて、先週の浮世絵/近代美術PartⅡオークションにご参加いただいた皆様、
誠にありがとうございました。
今週19日(土)は近代美術オークションを開催いたします。
本日はその出品作品の中から1点ご紹介いたします。

Lot.40 横山大観
《山海各十題巧藝画》
巧藝画 各額装
横山大観自筆箱
エスティメイト \2,500,000~5,000,000
 

横山大観の代表作として名高い《海山十題》の巧藝画です。
《山に因む十題》、《海に因む十題》の各10点に、大観が監修したことを示す自筆の箱書きがついています。

まずはこの巧藝画のもとになった本画、《山に因む十題》、《海に因む十題》についてお話します。
昭和15年、紀元2600年と大観自身の画業50年に際して開催された奉祝記念展覧会の出品作として、大観は《海に因む十題》《山に因む十題》、計20点を制作しました。戦時色が次第に強くなっていく時局を鑑み、「彩管報国」つまり絵を描くことで国家に報いるという考えから制作に至ったそうです。その販売の収益50万円は陸海軍に献納され、4機の軍機「大観号」となりました。多作で知られる大観が他の制作を抑え、約1年の月日を費やして力を注いだこのシリーズは、評論家たちに絶賛されその充実した内容でも大きな話題を呼びました。会場となった日本橋三越・日本橋高島屋には、評判を聞きつけた人々の大行列ができたといわれています。以後、横山大観という人物のスケールの大きさを語る伝説となった通称《海山十題》は、大観の精神主義の権化にして画業の集大成とも言うべき名作です。

 本作品はこの展覧会の後に制作された大観監修による巧藝画です。巧藝画とは、大正中期に大観が提唱したもので、本画と同等の材料を用いて写真製版により印刷を行い、さらに手彩色を施して一点ずつ丹念に仕上げる複製画を指します。本画と見紛うほどの精巧さから、《海山十題》の巧藝画は所在不明となった作品の代わりとして「生誕120年記念横山大観《海山十題》展」などに出品されました。山種美術館にも同サイズのセットが収蔵されています。

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《龍躍る》                     《海潮四題・秋》
上記の展覧会では、ともに同型の巧藝画が出品されました。


巧藝画では本画同様、海浜と富士という日本を象徴する自然を主題とし、季節や時間の変化、自然の光や音など様々な要素を絵画化しています。大観の自由で豊かな構想力により、西洋絵画のような複数の視点や東洋の古典様式を取り入れ、シリーズが単調にならないように工夫が施されました。また、安田靫彦を驚かせたという本画の優れた写実の筆技はここにも見て取れ、精緻な線と質感に富む色面による表現、たらし込みや片ぼかしといった様々な技法が見事に再現されています。本画では困難と思われる全20点が揃う様は圧巻で、大観が画業を通して追求してきた自然表現の一つの帰結をうかがわせる希少な作品です。


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《波騒ぐ》                    《霊峰四趣・夏》

今回の下見会は、会場の一部がまるで大観の「海山十題展」のようになっています。ぜひその精巧さを会場でご確認ください。
皆様のお越しを心よりお待ちしています。

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(執筆:佐藤)