岩下記念館コレクションのご紹介



こんにちは。
先週の西洋美術オークションにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

さて、今週19日(土)は、特別オークションとして、岩下記念館コレクションを開催いたします。今日はその出品作品の中から、まさしく「ミュージアムピース」と呼ぶに相応しい名品をご紹介いたします。

224 板谷 波山(1872-1963) 227378-2
《彩磁蕗葉文大花瓶》

H78.3×D43.4cm
高台内に描き銘「波山」
板谷佐久良箱
1911(明治44)年頃作
展覧会:「没後50年板谷波山展」
       (茨城県陶芸美術館/2013-2014年)
文献:  『炎芸術 №115 2013秋』P.22(阿部出版)
       『花美術館 vol.33  2013年10月』P.26(蒼海出版)
エスティメイト ¥30,000,000~50,000,000

アール・ヌーヴォー様式を取り入れた意匠や幻想的な「葆光彩磁」で知られる板谷波山の作品です。
この作品、まず目をひくのは高さ78.3cmという大きさです。
波山が本作を制作した明治時代後期は、万国博覧会に出品して見ごたえのある大きな作品を作ることが流行しました。波山も大作を手掛けましたが、これほど大きなものは大変希少と言えます。

また、ご注目いただきたいのは、なんと言ってもアール・ヌーヴォー様式の大胆なデザインです。
大小の蕗(フキ)を組み合わせ、器の胴部にリズミカルに配しています。大地に力強く根を張り、天へと上昇するようなこの蕗のフォルムには、アール・ヌーヴォーの生命力溢れる植物の表現がよく表わされています。
こうした装飾的な表現の一方で、葉を薄肉彫で立体的かつ写実的に捉えた点には、東京美術学校で彫刻を学んだ波山の卓抜した造形力が見て取れます。

また、波山のアイデアが詰まったデッサン帳『器物図集 巻三』(出光美術館蔵)に図案が残されていることも特筆すべきでしょう。波山のアール・ヌーヴォーを代表する作例であり、波山一家の記念写真にその姿が写されていることから、波山にとって会心の作であったことが想像できます。

板谷波山は、このほかに以下の作品が出品されます。
こちらもその完成度の高さと優美さに思わずうっとりしてしまうような見事な作品です。

223 板谷 波山《彩磁草花文花瓶227379-1
H22.2×D25.1cm
高台内に印銘「波山」
共箱
「没後50年板谷波山展」
   (茨城県陶芸美術館/2013-2014年)
エスティメイト ¥30,000,000~50,000,000

 


このコレクションは陶芸だけではありません。
絵画のジャンルでは、昨年久しぶりに実現した回顧展でも披露されたあの名作が出品されます。

【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

315 杉山 寧(1909-1993)
《曈》
153.0×220.0cm
麻布・彩色  額装
昭和48(1973)年
共シール

展覧会:「改組第5回日展」
      (東京都美術館/1973年)
            「杉山寧展」
                (東京国立近代美術館/1987年)
            「杉山寧展」(日本橋高島屋/2013年) ほか多数
文献:   『杉山寧』P221-222(文藝春秋)
            『杉山寧自選画集』№40(芸術新聞社)
     『杉山寧 素描聚成Ⅱ』№219(小学館) ほか多数

エスティメイト ¥50,000,000~80,000,000

画像でお伝えできないのが残念ですが、こちらも横2.2mという大作です。
改組第5回日展に出品された際、「裸婦連作の決定版」と絶賛された作品で、画題は「トウ」と読み、夜明けの光を意味します。

本作では、水平線から昇る朝日によって海辺の風景がオレンジ色に染まっています。砂浜には逆光を受ける二人の裸婦の姿があり、空には光をはらんだ雲が抽象的に表されています。
画面に緊張感がみなぎっているのは、杉山が求める新しい空間構成のために、モティーフそれぞれの直線と曲線、垂直と水平、明と暗などの要素を強調したためでしょうか。特に、胸を張って立つポーズと身をかがめるポーズをとる対照的な裸婦の姿には肉体の美しさと力強さが際立たされ、まるで新鮮な光とともに辺りに充溢する生命感を象徴するようです。
また、近くでご覧いただくと、彫刻のように堅固で立体的なマチエールが圧巻で、作品の迫力を増しています。

ここに紹介しきれないのが残念ですが、ほかにも北大路魯山人《椿鉢》や岡部嶺男《窯変米色瓷砧》、杉山寧《ネフレト》や小磯良平《女と椅子》など、作家を代表する作品が多数出品されますので、ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください!

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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)