富士山を描く―川合玉堂、片岡球子、山下清



こんにちは。
今日は富士山のお話をしたいと思います。

今年の6月、富士山が世界文化遺産に登録されました。
その後、入山料が導入される、登山鉄道を作る構想がある…などの新しい話題に事欠かず、毎日のように映像や写真を見かけるので、ブームはまだまだ続いているようです。
もしかしたら、この夏に登られた方もたくさんいらっしゃるかもしれませんね。
今年の登山シーズンはもう終わってしまったので、私も来年こそは!と思っています。

富士山が世界「自然」遺産ではなく、「文化」遺産に登録されたのは、古くから日本人の「信仰の対象であり芸術の源泉」だったことが評価されたためだそうです。
平安時代の絵巻《聖徳太子絵伝》(国宝・東京国立博物館蔵)にはすでに富士山が描かれていますし、江戸時代には葛飾北斎や歌川広重が富士山をテーマとした浮世絵の連作を制作しました。

ご存知のように、横山大観や梅原龍三郎など、近代にも富士山に魅了され、その雄大な姿を描いた作家たちがたくさんいます。
9月28日(土)の近代美術オークションにも富士山を描いた作品が出品されますので、その中からおすすめの3点をご紹介したいと思います。

【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

lot.40 川合玉堂
(1873-1957)  
《富嶽》
57.4×73.5cm
絹本・彩色 額装
右下に落款・印
川合修二シール
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 \1,000,000~2,000,000


 川合玉堂は最近出版された、富士山の名作を集めた作品集『富士山百画』の中にも作品が収録されています。「玉堂の富士山が好き」という方がたくさんいるということですね。
 この作品は、落款・印より昭和20年代の作と思われます。この時期、川合玉堂は現在の東京都青梅市御岳に住居を構え、豊かな自然の中で充実した画業を展開しました。
 ここに描かれたのは玉堂の画室の近く、奥多摩の山から見た富士山でしょうか。実際の風景をもとに、樹木やほかの低山と組み合わせた心象風景として表現しています。辺りに漂う霞が、山のしっとりとした濃密な空気を表わすとともに、平面的に配置された各モティーフを調和させています。日本の原風景を描き続けた玉堂らしい、清々しく穏やかな富士山です。


【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

lot.44 片岡球子
(1905-2008)   
《富士》
37.8×45.5cm
紙本・彩色 額装
右下に落款・印
共シール
東京美術倶楽部鑑定委員会付
落札予想価格 \8,000,000~12,000,000


 片岡球子は富士山をたくさん描いた作家です。特に、晩年の20年間は制作の大半が富士山になるほど没頭し、歴史上の人物を題材にした「面構え」シリーズとともに球子のライフワークとなりました。
 この作品では、中央に大きな大きな赤富士がそびえ、それを飾るように裾野に様々な花と樹木が描かれています。これらは「描かせてくれてありがとう」というお礼の気持ちを込めて、球子から富士山への献花として、まるで山に華やかな着物を着せるように描き添えられたものです。形の大胆なデフォルメ、三原色や金泥を使った鮮やかな色調などの装飾的な表現によって、富士山の満ち溢れるような生命のエネルギーを描き出しています。


【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

lot.81 山下清(1922-1971)
《富士山》
43.8×36.4cm
紙・ペン 額装
右上にサイン・印
山下清鑑定会鑑定書付
落札予想価格 
\1,300,000~1,800,000



 「裸の大将」でおなじみの山下清の富士山です。
山下は放浪の旅で訪れた日本各地の風景を、貼り絵や油彩画、ペン画によって表現しました。
 この作品は富士山のよく見える場所を訪れたときのスケッチをもとに描かれたものでしょうか。細やかな点描のタッチとデフォルメされた形から、和やかで物語的な雰囲気が漂います。また、どことなく葛飾北斎の《富嶽三十六景》を思わせるような雲をまとった富士山の佇まい、そのスケール感を引き立たせるような構図が秀逸です。

今週のオークションには、田崎広助、福王寺法林、平松礼二、松尾敏男、松林桂月、松本哲男など、ほかにも富士山を描いた作品がたくさん出品されます。
本日からの下見会で、ぜひお気に入りの1点を見つけてみてはいかがでしょうか。
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皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)