伊東深水の美人画―《春雪》



こんにちは。
早いもので11月もそろそろ下旬、東京も紅葉の見頃になってきました。
神宮外苑のいちょう祭りや六義園のライトアップなど、名所めぐりも楽しそうですが、
通勤途中や外出先で紅葉のきれいな場所を見つけると気分が上がりますね。
今週23日(日)の近代美術/近代美術PartⅡオークションでは、《紅葉可里》(もみじがり)と題した美人画や紅葉真っ盛りの山を描いた風景画など、秋を満喫できる作品がたくさん出品されます。
紅葉散歩のついでに、ぜひ下見会にもお越しください。

さて、今日はこのオークションの中からおすすめの作品をご紹介します。
こちらは紅葉が散ってしまった後、これからの季節にぴったりの美人画です。

lot.50  伊東深水(1898-1972)
《春雪》
66.5×72.5cm
絹本・彩色  額装
昭和23年頃作
右下に落款・印
濱田台兒シール
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
『伊東深水』№18(日本経済新聞社)掲載
落札予想価格 ¥10,000,000~15,000,000

 【オークション終了につき、画像は削除いたしました】

上村松園や鏑木清方ではなく、「美人画家といえば伊東深水」という方は多いのではないでしょうか。深水は、美人画のジャンルでそれほど大衆的な人気を博した画家です。

 東京の下町に生まれた深水は、10歳のときから印刷会社で働く傍ら日本画を学び始めます。1911年鏑木清方に入門し、「深水」の号を与えられました。新聞小説の挿絵や新版画運動で活躍した後、帝展を中心に作品の発表を開始。1927年には深水画塾を設立(後に朗峯画塾と改称)し、同年に第8回帝展、1929年第10回帝展にて特選を受賞するなど、美人画家として確固たる地位を築きました。浮世絵歌川派の系統を継ぐ美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で広く親しまれています。


松園

上村松園《雪》(昭和14年作)



 昭和231948)年頃に制作されたこの作品は、浮世絵の好画題、雪中の「傘美人」を描いたものです。
雪が大好きで、雪が降ると早朝からスケッチに出かけたという深水は、この主題を得意とし、画業を通して描き続けました。本作のように上半身をクローズアップした構図は、上村松園が描いた「傘美人」(図版右)にも影響を受けたといわれています。

 本作では、吹きつける雪に対し、蛇の目傘を半開きにして前のめりに
進む若い女性を描いています。傘の柄を袖でしっかりと握る様子や袖口 からのぞく指がとても寒そうです。
そして、何と言っても目を引くのは、雪に映える華やかな赤の着物と、それがよく似合う女性の可憐さでしょう。着物の緻密な柄、結綿(ゆいわた)を結った美しい黒髪など、モティーフの細部にいたるまで端正な線描によって表現されています。また、傘に積もった雪と雪を運ぶ冷たい風、ほのかに赤らんだ女性の指や耳を表わす色面の描写も見事です。

戦後の混乱がまだまだ続く時期に制作されたとは、とても想像できないほど優美な世界観が表現されており、深水の美人画家としての本領が発揮された作品です。
この圧倒的な美しさ、下見会でぜひご堪能ください。

オークション・下見会スケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

また、前回のブログでもお知らせいたしましたが、
23日の近代美術オークションは日経チャンネルにてライブ中継されることが決定いたしました。
「会場には行けない」という方も、ご自宅にいながらリアルタイムでオークションをご覧いただけます。
こちらもぜひ利用ください。

◆配信情報

配信開始日時:2014年11月23日(日) 17:30~
配信チャンネル:【NIKKEI Channel Culture】
http://www.ustream.tv/channel/nikkei-channel-culture

(佐藤)