写真界のカリスマ、森山大道


国際的に高く支持され、国内外の美術界にも大きな影響力を持つ写真家、
森山大道。現在、東京都写真美術館において「森山大道展 Ⅰ.レトロスペクティヴ1965-2005/Ⅱ.ハワイ」(~6月29日まで)が開催されていることもあり、ますます注目を集めています。

lot115 森山大道

森山大道(B.1938-)
lot115《犬の町》 
102.8×130.8cm/ゼラチンシルバープリント
落札予想価格:120万円~180万円


写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経た後、1963年に独立した森山大道は、1967年、寺山修司の文章につける写真原稿として雑誌『カメラ毎日』に発表した「にっぽん劇場」シリーズにより注目を集め、同年、日本写真批評家協会新人賞を受賞します。翌年、「挑発」を意味する写真同人誌『プロヴォーク』が創刊されると、第2号から参加。「アレ、ブレ、ボケ」という言葉で形容される被写体がブレたりボケたりする革新的な表現は、それまでの写真の概念を覆し、激しい賛否両論を引き起こしました。

この時期、「写真とは何か」という問いに対して極限まで写真表現を追求し、スランプに陥りますが、北海道をはじめとする旅先でのスナップを発表する一方、ワークショップ写真学校への参加、イメージショップCAMPの設立など、写真表現以外においても日本の写真界を切り開いていきます。

その後、「写真は光と時間の化石である」と述べた写真技術の先駆者、ニエプスの言葉から問いへの答えを見出し、1981年、花などを単純な光の中で捉えた「光と影」シリーズを開始。翌年、写真集『光と影』を刊行します。これが高く評価され、1983年に日本写真協会年度賞を受賞。そして90年代にはサンフランシスコ近代美術館での個展をはじめ、世界各国で展覧会が開催されるようになり、国際的な地位を確立していくことになるのです。

2002年には活動の拠点である新宿を撮った写真集『新宿』で毎日芸術賞を受賞。
今年70歳を迎えますが、現在に至っても精力的な活動を展開し続けています。

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黒と白の強烈なコントラスト、そしてその中間の灰色のグラデーションが独特の雰囲気を醸し出すモノクロ写真。そこには、都市の混沌や退廃的な雰囲気を冷静に見つめる、森山大道の視線が感じられます。