オークションの舞台裏 ‐オークショニア2‐


5月のブログではどうやってシンワアートオークションのオークショニアが誕生するか、について書きましたが、今回はそのオークショニアが実際にオークションに登場する時までにはどんな準備をしてオークションに臨むのか、をご案内したいと思います。

 まず、オークショニアが壇上に立つ際に必ず持っているものが三つあります。1つはもちろんハンマー、あとの二つは時計、そしてボールペンです。ハンマーは当然落札の際にたたくもの。時計は進行具合を確かめるために使います。弊社のオークションの場合は通常1時間に100ロット程進みますが、オークションが1日で二つあるときなどは、後半のオークション開始予定時刻との間が詰まりすぎないよう進行状況を確認しながら競っていきます。ボールペンは万が一途中でインクが切れた時のために2本持って臨みます。重なった紙の上で書くので私の場合はペン先の太いものを使っています。

水と時計

演台の上には、他に水の入ったコップとハンカチが置いてあります。時にはメインロットの前などにさりげなく水を飲んで会場の空気をあえて鎮めてから競りに入ることなどもありますが、我々も競っている間はひたすら発声しっぱなしなので水は必需品です。

 壇上ではスムーズな進行をしているオークショニア。しかしそのスムーズな進行のためにはそれ相応の準備が必要です。
オークション当日、オークショニアとはいえ営業担当を兼ねている者はまずは下見会場での接客の仕事があります。たとえば近代美術オークションですと、通常は午前10時から12時まで銀座のシンワアートミュージアムで下見会を行っています。そして、下見会が終わってオークションは午後5時からですが、その間にお客様への連絡や打ち合わせなどがありオークショニアとして準備に費やす時間は実はあまり多くはありません。

 下見会が終わり、オークション会場である丸ビルに移動するとまず会場内の確認をします。オークショニアの演台の位置や会場の椅子の並び、そしてライティングも目に入ってくると会場が見えにくくなるので必ずチェック。会場内のチェックが終わると、会議の合間をぬって今度はオークショニアの準備をします。
 ここで登場するのが「オークショニア台帳」と呼ばれる紙の束です。この台帳には1枚に3ロット分のロット番号、作家名および作品名、そしてエスティメイトが印刷されています。オークション本番でハンマーを叩くごとに、我々はここに落札金額とパドル番号を書き入れていきます。

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 準備の段階までにこの台帳に当日までの注文状況が記入され、オークショニアはその状況に合わせてスタート金額を決めていきます。同時に各ロットのリザーブ金額や時には作家名の確認などをしていきます。人気の作品で競り上がりそうであれば少し高めからスタートする場合もありますし、全く注文がない場合は出品担当者と話し合いながら、あえて安目のスタート金額を設定したりもします。そして台帳を見ながら、各ロットの問い合わせの具合やエスティメイトなどを見ながら本番をイメージして最終的な確認をします。
こうやって準備している間にも、ギリギリで追加の注文や変更が発生しその都度変更を余儀なくされ、その日のオークションで一人目のオークショニアを担当する場合は本番直前に準備が終了することもしばしばです。

 さて、なんとか準備も終わり、いざ本番。時間の限られた中、万端整えてようやく晴れ舞台。ですが、その模様は次回のブログでご紹介いたしたいと思います。

(平野)