3月20日(土)、浮世絵や近世絵画など226ロットを集めた浮世絵オークションが開催されます(近代陶芸および近代美術パートⅡ(陶芸)オークションと同日開催)。
東洲斎写楽をはじめ、葛飾北斎、喜多川歌麿、歌川広重、鈴木春信・・・と、優品ぞろいです!
今日はその中からいくつか見どころをご紹介します。
<初摺りと後摺り>
Lot 326 歌川 広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
初摺 36.7×24.8㎝
落札予想価格:700万~1100万円
今回のオークションには、初摺りと後摺りの両方が、別のロットで出品されているものがあります。
上図の歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》は、風景画の名手・広重の代表的な作例ですが、Lot326は初摺り、Lot324は後摺りのものです。後摺りは落札予想価格150万円~250万円となっています。
初摺りでは橋の上や川の中景にぼかしが入っており、タイトル部分に当たる「関防(かんぼう)」には二色のグラデーションが用いられています。また、黒くたちこめる雨雲の表現も、後摺りでは横に真一文字の表現に変えられています。
広重の《名所江戸百景》のうち、「王子装束ゑの木大晦日の狐火」も初刷りと後摺りが出品されます。
Lot322の後摺りは落札予想価格50万円~80万円、初刷りのLot325は同500万円~800万円です。
東京都北区にある王子稲荷神社にまつわる民話をもとに作られた作品。大晦日の夜、榎木(ゑの木)のもとに数百の狐が集まって、装束を整え、参拝に行くというお話です。ユーモアと日本的なオカルト趣味が、味わいある高度な木版の技で表現されています。
下見会ではぜひ実物を見比べて違いをお楽しみください。
<土佐派「中興の祖」、光起>
Lot 384 土佐 光起《人麿図 後西天皇宸翰讃》
絹本・彩色 軸装 重要美術品認定 118.0×44.0㎝
落札予想価格:1200万~1800万円
土佐光起(とさ・みつおき 1617-91)は江戸前期の画家です。
江戸時代、幕府の御用絵師となった狩野派や住吉派に押され気味であった土佐派を、再び宮廷の絵師として高い地位にまで押し上げた、中興の祖と言われています。
土佐派は室町時代からの長い伝統を持つ名門一族でしたが、江戸幕府が奥絵師として新興の漢画系である狩野派を召し抱えたため、光起の父の代までは京都を離れて大阪(堺)に活躍の場を見出していました。
しかし土佐光起の活躍により、一家は再び京の地へ戻り、そこで貴族的で優雅・繊細な画風を確立したのです。
本作品は「土佐派の絵画展」(1982年、サントリー美術館)に出品されたもので、三十六歌仙のひとり、柿本人麻呂を描いています。宮廷歌人を題材とした、いかにも土佐派らしい作品です。
浮世絵オークション日程など詳細
(井上素子)