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オノサトトシノブ 「S-A」

 こんにちは。本日より、近代美術PartⅡオークションの下見会が始まりました。例によってどの作品をご紹介しようかとカタログを繰りながら思案していたところ、ふと目に止まった作品がありました。
 
 その作品はカタログ製作の作業中に目にして覚えていたのですが、小品なのに妙に惹きつけられる作品でした。今回近代美術PartⅡオークションに出品されている、lot732 オノサトトシノブの「S-A」です。

 この作品をご紹介するに当たり、社内にある資料を改めて読んでみました。そうすると、オノサトトシノブについて恥ずかしながら知らなかったことばかり。作家名が本名であることは知っていましたが、漢字で「小野里利信」と書くことや、太平洋戦争に徴兵され終戦後シベリアに抑留されていたこと、帰国後は絵を描きながらも1962年に職業画家となるまでは養鶏場を営んでいたことなど、意外に思われることを数多く知りました。

 この絵の描かれた1965年と言うと、オノサトは53歳。養鶏場を止めてから3年、個展を開催し、美術展で賞を取り、’64年にはベネチアビエンナーレに出品(’66年にも出品)という、オノサトのキャリアの中でも充実していたといえる時期です。
 作品に関して言えば、1950年代まではフリーハンドで描かれていた「丸」のモチーフが(オノサト自身は「モチーフ」ではなく「ルール」と呼んでいますが)、’60年前後よりコンパスを使うようになり、色も一色で塗りつぶされていたものが四角や三角で分割されるようになります。
  今回出品されているこの絵も、サムホールと言う小品ながらオノサト独自の幾何学的な法則に則った図柄。額装もシンプルな木の枠で、規則正しい模様やその色合いともうまくマッチしています。

 戦前より独自の視点で抽象画を模索し続け、ついには「絵画を離脱する」ところまで突き詰めたオノサトトシノブ。「丸」はモチーフではなく、「絵を描くことの面白さがモチーフ」であるという彼の主張が、この小さな絵を眺めていると静かに伝わってくる気がします。

 この作品は、近代美術PartⅡオークション下見会でご覧いただけます。
 下見会、オークションのスケジュールはこちらから。
下見会場1 


 皆様のお越しを心よりお待ちしております。

 (平野)

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