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具体・元永定正の抽象絵画《いち》

こんにちは。
12日にオープンしましたJEWELLERY&BRAND SHOPにはもうご来店いただけましたか?
オークション開催日を除き、土日も営業しておりますので、銀座にお出かけの際はぜひお立ち寄りください。

さて、今日は22日(土)開催の近代美術オークション出品作品の中から注目の一点をご紹介します。


【オークション終了につき、画像は削除いたしました】


Lot.77 元永定正
(1922-2011)
《いち》
90.9×72.7cm
キャンバス・アクリル 額装
1982年作
右下にサイン、年代


文献:『元永定正作品集 1955-1989』P.Ⅰ-90(アラベル)
   『元永定正展図録』目録掲載 P.115 №303(西宮市大谷記念美術館/毎日新聞社)
   『元永定正展図録』目録掲載 p.139 №307(三重県立美術館/中日新聞社)
エスティメイト \500,000~800,000


 元永定正は、具体美術協会のメンバーの一人です。
具体は、戦後の高度経済成長期、リーダーの吉原治良の「今までにないものをつくれ」という指導のもと、ユニークな活動を展開した前衛美術グループ。
彼らは今再び世界的に注目を集めており、今年開催された「田中敦子―アート・オブ・コネクティング」(東京都現代美術館)や「具体―ニッポンの前衛18年の軌跡展」(国立新美術館)も記憶に新しいところです。当社の7月の近代美術オークションにも吉原治良の作品が出品されました。

 10代の頃、漫画家を志していた元永は、郷里の三重在住の画家に師事して油彩画を学びました。1955年、吉原治良との出会いを機に具体に参加し、抽象画制作とともに水を使った立体作品や煙によるパフォーマンスを発表して注目を集めます。1966年、ジャパン・ソサエティの招聘によりニューヨークでの制作の機会を得ると、ユーモラスな造形と鮮やかな色彩による抽象絵画を展開。そのほかにもインスタレーションやパブリックアート、絵本など、多岐にわたる創作活動で国内外から高く評価されました。

 1982年作(当時60歳)の本作品は、ニューヨーク時代から手掛け始めたエアブラシを使用したシリーズのひとつです。
描かれた生き物のようなものは、人や山などの有機的なイメージをもとに生み出された「かたち」。エアブラシによって立体感が表わされています。具体的なモティーフを描いたものではありませんが、親しみやすくキャラクター性が強いのは、この時期の元永が絵本の制作にも力を注いでいたためでしょう。
絵本をご覧になったことがある方はご存知かもしれませんが、『かにつんつん』や『おおきいちいさい』のキャラクターにも少し似ていますよね。

 この「かたち」に対し、私たちは例えば漢数字の「一」や「のそのそと歩く姿」など、様々なイメージを想像してしまいます。
このように鑑賞者が「自由に作品を観て楽しみ、そこに美を見出す」ことは、元永が自作に求めたものです。すなわち、作品は「美のかたちは無限に存在し、新しいもの、新しい美を生み出す力が人間には備わっている」という元永の思想を映し出したものとも言えるでしょう。
具体のテーマだった「新しい美」の追求は、解散後も元永自身のテーマとして作品に表現されていったことがわかります。

この作品は19日(水)からの下見会で展示いたします。
オークション・下見会のスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)

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