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この冬の韓国アート情報

 年末年始、世界中から発信される不況というニュース。ただ落ち込んでいるわけにはいきませんね!ならば、今の時期の一番のお楽しみは、やはり海外旅行ではないかと思われます。

 「円高」というせっかくのチャンスを逃さないよう、冬休みをうまく使ってみるのはいかがでしょうか?すでに、すぐ近くの韓国には、「ここって、ソウル?東京?」と思ってしまうほど、日本人の観光客が溢れていると伝わってきています。

 韓国観光といえば、もちろん焼き肉を始め、美味しい韓国料理や、韓流、エステなどが一番先に思い浮かぶのは間違いありませんが、首都であるソウルには国立美術館やギャラリー街も多くあり、美術を愛する皆様には、東京とはまた異なる新鮮なアートとの出会いをお勧めします。

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日本語が溢れるソウルの明洞(ミョンドン)の風景です


 まず目を引くのは、韓国芸術文化の‘公演・展示の歴史’とも言われる「セゾン文化会館」の「ルーベンス・バロック傑作展(Rubens, Baroque Masterpieces)」です。

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「Rubens, Baroque Masterpieces」
12.10-2009.3.13  /  Sejong Center of Performing Arts Museum
Tel. 82-2-1544-4594 / 
www.korearubens.co.kr

 この「ルーベンス、バロック傑作展」とは、皆様のよくご存知の、バロック美術の頂点と言われるルーベンス(Peter Paul Rubens, 1577-1640年)の作品や、彼の弟子たち、そして彼とともに同時代の芸術世界を一緒に創り出した「アンソニー・ヴァン・ダイク(Anthony Van Dyck)」、「ヤーコプ・ファン・ロイスダール(Jacob van Ruisdael)」、「ヤン・ファン・ホイエン(Jan van Goyen)」など、いわゆるバロック画家たちの傑作が集められた絵画展です。

 バロックの成熟した美を見せてくれる多くの作品や、北部オランダの革命的な市民芸術作品などを含んだ、17世紀オランダの黄金時代を一望することができる展覧会です。全75点という展示の中、ルーベンスの作品は19点も出品されるそうです。


また、ソウル市立美術館で開催している「フランス、国立ポンピドゥーセンター展:画家たちの天国」も見逃せません。

 <アルカディア(Arkadhía)-天国のイメージ>という副題を掲げて構成されたこの展覧会には、ピカソ、マティス、シャガール、ミロ、ビュッフェなど、日本の方々も親しみを感じられる近・現代の西洋美術の巨匠たちの作品が見られます。絵画を主とする既存の展示から離れ、彫刻、ビデオ、インスタレーションなどの多様なジャンルの作品を展示したのがこの展覧会の特徴です。

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「Musee National del `Art Moderne du Centre Pompidou : Paradis d’ artistes」
11.22-2009.3.22 / Seoul Museum of Art
Tel. 82-2-2124-8800 / http://seoulmoa.seoul.go.kr/main.html


 これ以外にも、韓国の美術をもっと知りたいと思われるお客様のためには「韓国美術巨匠展:近代を聞く」をお勧めいたします。

 昔の李朝のお城であった壽宮(トクスグン)の中に美しく建てられた「国立壽宮美術館」では、今「韓国美術巨匠展:近代を聞く」という展覧会が開催されています。
 20世紀初頭の激動の歴史の痕跡、そして当時の韓国の美術界が内包していた先駆的な要素だけを揃えたこの展覧会は、韓国の近代美術の歴史、そしてその時代から今に至る美術の変化を一目で知ることができる展示です。ここでは、リ・ジュンソップ、パク・スグンなど、現在の韓国人に最も愛されている近代美術作家たちの貴重な作品もご覧になれます。

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「Korean Modern Masterpieces」
12.22-2009.3.22 / National Museum of Art, Deoksugung
Tel. 82-2-2022-0600 / http://deoksugung.moca.go.kr/deok.jsp


 昼間には、ソウルのアートをゆっくり味わい、そのあと、美味しい韓国料理やエステで、心から身体までリフレッシュという冬休みはいかがでしょうか?韓国アートの旅に、いってらっしゃい!

(執筆者:W)

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春のコンテンポラリーアート市場レビュー

~SUMMER+AUCTION 出品作品~

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松浦浩之「Pancake」
35.0×35.0cm / キャンバス・アクリル
落札予想価格:50万円~80万円
→松浦浩之はクリスティーズ香港のセールでも人気を集めました。
ご存知の通り、春は世界中のオークションハウスが大きなセールを開催する季節です。
そこで今回は、SUMMER+AUCTIONと関連深いアジアのコンテンポラリーアートを中心に、春のオークション月間を振り返ってみたいと思います。

まず1つ目にご紹介するのは、フィリップスが4月3日にLondonで開催した“Kyobai”です。
このオークションは、その名が示す通り、様々な分野の日本人アーティストの作品を集めたものです。
村上隆や奈良美智に始まり、若手アーティスト、陶芸作品そしてデザイン家具やフィギュアまで、幅広い作品が出品され、日本文化を俯瞰できる意欲的なセールとなりました。
フィリップスは、今年秋にも同様のセールを開催するとのこと。

そして2つ目は、アジアの若手アーティストの登竜門的存在でもある、クリスティーズ香港の”アジアン・コンテンポラリーアート”のセール。 参加者の中で大きなパートを占める、中国四川省で発生した大地震や、サブプライムローンの影響が心配されるなかでの開催となりましたが、結果的には活気あるオークションとなりました。
中国人コレクターの買い意欲は依然高く、ジャン・シャオ・ガンを初めとする中国人アーティストの作品が相変わらずの人気を集めたほか、インドネシア人アーティスト REDY RAHADIANや、インド人アーティスト SUBODH GUPTAの作品が高額で落札されたことなどは、新しい動きだったのではないでしょうか。
そして、注目の我らが日本人アーティストの活躍はといえば、これが総じて中々の高評価。
1000万円を超える落札価額の作品があったアーティストが7、8名。500万円以上の落札価額だったアーティストが4、5人と、日本人アーティストが世界でプレゼンスを確立しつつあることを確信させる結果となりました。特にデイセールは、全体で400ロットほどの作品数の内、4分の1近い作品が日本人アーティストのものであり、その層の厚さも感じさせる内容となったのでした。

しかし何といっても、今春一番の驚きの結果はN.Yサザビーズのセールで村上隆のフィギュア作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」がエスティメイトを大きく上回る、1516万ドル(約15億9500万円)で落札されたことではないでしょうか。4月のはじめに同じフィギュア作品「パンダ」が、過去最高の272万ドル(約2億6000万億円)で落札されたばかりでしたが、そのレコードをあっさりと塗り替えたことになります。
またこれは、3月に約14億円で落札された運慶の仏像をも上回る結果です。

このように、2008年春のオークションシーズンは大方の懸念を余所に、まずまずの盛り上がりを見せて幕を閉じたのでした。



~語句解説~
1.世界のオークションハウス
<サザビーズ>
1744年に書籍のオークションを開催したことに始まる、世界最古のオークションハウス。
世界最高額の落札記録(ピカソ「パイプを持つ少年」2004年 1億4000万ドル)を持つ。

<クリスティーズ>
1766年にイギリスの美術商のジェームズ・クリスティーにより、イギリスの首都ロンドンに設立されたオークションハウス。
ダイアナ妃やマリリン・モンローなど著名人の財産のオークションを度々手がけている。

<フィリップス>
1796年に創業した、クリスティーズ、サザビーズに次ぐ世界第3位のオークションハウス。

クリスティーズとサザビーズは、2社合せて1兆円を超える売り上げを誇る。

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