「ヤン フードン―将軍的微笑」展@原美術館



Yang Fudong, The General’s Smile, multiple-channel video installation, 2009

12月19日(土)より東京の原美術館にて、近年国際的な活躍が目覚しい中国の映像作家、楊福東(ヤン フードンYang Fudong)の日本における初個展が開催されます。

楊福東は1971年北京に生まれ、杭州の中国美術学院絵画科を卒業後、現在は上海を拠点に制作をしています。写真や映像作品で注目され、2001年の横浜トリエンナーレの際、中国国外で作品を発表したのを機に、2002年の上海ビエンナーレ、ドクメンタ11、2003年、2007年のヴェネィツア・ビエンナーレに出品するなど、国際的な活躍の場を広げています。2004年にはヒューゴ・ボス現代美術賞を受賞、また同年、中国現代美術賞(CCAA)においても賞を受賞し、中国を代表する映像作家としての地位を確立しています。

楊福東は主に、現代の中国とそこに生きる人々を題材とし、35ミリフィルムを愛用した独特な質感と、完成度の高い構図による格調高い映像美を特徴としています。現実をそのまま写し撮ったかのようなドキュメンタリー調の作品もあれば、劇的な要素の強い作品もありますが、いずれもある種神秘的で象徴性が高く、観る者を引き込む独特な世界が広がっています。淡々と、静的に映し出された映像は、急速に発展している中国現代社会において失われたものを暗示しているようであり、また現代に生きる者たちの不安や困惑、無力感をも浮き彫りにしているようにみえます。
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Yang Fudong, The General’s Smile, multiple-channel video installation, 2009

30代にして中国を代表する映像作家の一人となり、いまや国際的な舞台で活躍する寵児として知られている楊福東ですが、生まれ育った環境に芸術に関心を持つ人はおらず、楊福東自身もサッカー選手を目指していたといいます。しかし、10代の頃に怪我をしたのを機に、絵を描くことに興味を抱くようになります。そして美大に進んでまもなく、独学で映像作品を制作し始めます。大学卒業後はゲームソフトを開発する会社に勤めながらも絵を描き続ける中で、次第に写真や映像作品の制作に向かうようになっていきます。大学を卒業したばかりで給料が少ない中、作品のためにしばしば友人にお金を借りてまで制作したといいます。「モノクロ映像から得られる距離感がすばらしい」とモノクロの作品を多数制作しています。自然を舞台にした作品では、一見、超現実的な世界を描いているようにも見えますが、特別な装置や特殊効果は用いておらず、欲しい映像のためには何日も待って実景を撮影しているといいます。
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Yang Fudong, The General’s Smile, multiple-channel video installation, 2009

原美術館で開催される個展では、老将軍を囲む祝宴の情景を通して、人間の普遍的な在りようを描いた大型の映像インスタレーション「The General’s Smile」(「将軍の微笑」2009年)、世俗を避け竹林で清談する賢人たちの故事を模して、現代の知識階級の若者像の内面に迫るシリーズ作品「Seven Intellectuals in a Bamboo Forest Part 3」(「竹林の七賢人 part3」2005年)などが紹介されます。前者の「将軍の微笑」は、今年の5月~8月にかけて上海証大現代芸術館で開催された楊福東の個展にも展示された大作です。一方「竹林の七賢人」は2007年のヴェネツィア・ビエンナーレの際にも上映され、話題を集めました。

この展覧会では、日曜、祝日には学芸員によるギャラリーガイドが実施されるほか、出品作品である「Backyard-Hey, Sun is Rising!」(「バックヤード ほら、陽が昇るよ!」2001年 13分)が35ミリフィルムで上映されるとのことです。また、関連イベントとして、20日(日)午後2時から3時30分まで、上海より楊福東を招いてアーティストトークを開催するとのことです。詳細は以下、原美術館へお問い合わせください。
(執筆:M)


【開催要項】
展覧会名 「ヤン フードン―将軍的微笑」
会期 2009年12月19日[土]-2010年3月28日[日]
主催/会場   原美術館 東京都品川区北品川4-7-25 Tel: 03-3445-0651
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
開館時間 11:00 -17:00
(12月23日を除く水曜日は20:00まで開館/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(1月11日、3月22日は開館)
    12月28日-1月4日、1月12日、3月23日
日曜・祝日には原美術館学芸員によるギャラリーガイドを実施(2:30pmより約30分)

関連イベント 「アーティストトーク: ヤン フードン」(中日逐次通訳付)
日時: 12月20日[日] 2:00 – 3:30pm 場所: 原美術館ザ・ホール 
料金: 2,000円(一般/入館料込み)、1,000円(原美術館メンバー及び同伴者2名まで)
要予約 Tel: 03-3445-0669 E-mail: info@haramuseum.or.jp

写真提供:原美術館