上村松園の美人画


今週は長谷川利行・近代美術オークションを開催いたします。
近代美術オークションでは、上村松園の作品がたくさん出品されますのでご紹介いたします。

現在、京都国立近代美術館で上村松園展が開催されていますが、みなさまはご覧になりましたか?この展覧会は過去最大級の回顧展だそうで、東京展は来場者10万人を突破する人気だったそうです。私も先月東京展に行き、《序の舞》(昭和11年作・東京藝術大学蔵)など代表作の数々を見ることができました。

さて、今回のオークションでは、時代や題材の異なる様々な作品を通して松園の画業を辿ることができます。

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Lot.219《古代女房図》
32.0×36.3cm
絹本・彩色 額装
左下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト \1,400,000~1,800,000


松園は修行時代から膨大な数の古画の模写を制作し、構図や人物のポーズ、線を研究したといいます。また、古典文学を学び、その一場面を題材に用いることもありました。本作品は、松園が晩年まで描いた花を愛でる女性像ですが、女性の面立ちから平安・鎌倉期の大和絵を引用していることがわかります。

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(左)Lot.261《うららか》
112.2×41.4cm
絹本・彩色 軸装
右下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★\2,300,000~3,500,000


(右)Lot.259《良夜吹笛図》                
112.2×39.6㎝
絹本・彩色 軸装
右下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★\2,500,000~3,500,000


ともに落款・印から明治~大正のはじめ頃に制作されたと思われる作品です。
これらのように、柔らかで妖艶な雰囲気も漂う初期の顔立ちがお好きという方も多いのではないでしょうか。


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(左)Lot.256《寿》
111.0×38.0cm
絹本・彩色 額装
右下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
「女性画家が描く日本の女性たち展」出品 1998年(京都島屋グランドホール/朝日新聞社)
エスティメイト\1,200,000~1,800,000


(右)Lot.196《白拍子》
110.4×31.6cm
紙本・彩色 軸装
左下に落款・印
上村松篁箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき 
エスティメイト ★\700,000~1,000,000


若い頃から古典芸能にも関心を抱いていた松園は、大正のはじめ頃から謡曲を習い始め、後には三味線や長唄、鼓なども試みたそうです。それらはすぐに制作に反映され、代表作の一つ《花がたみ》(大正4年作・松伯美術館蔵)など、謡曲や能に取材した作品を描くようになりました。舞い姿の女性を描いたこうした作品も、松園の芸事への理解の深まりを感じさせます。

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Lot.217《春乃小鳥》
32.3×41.0cm
絹本・彩色 軸装
右上に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト 
★\1,200,000~1,800,000



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Lot.260《神ひな》
画面:94.4×28.0cm(全長:H118.6cm)
絹本・彩色 額装
右下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト\2,000,000~3,000,000


松園の作品では、市井の人々の暮らしのひとこまを描いたものがよく見られます。明治期には、写生に基づき身近な人々の姿を捉え、昭和期になると、江戸時代の雰囲気が残る京都の風俗を懐かしむように題材にしました。《神ひな》はそうした生活や風習への親しみから生まれたものでしょうか。男雛が向かって右側なのは松園が育った京都の様式です。



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 (左)Lot.258《志具連》
123.0×26.5cm
絹本・彩色 額装
左下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト ★\2,500,000~3,500,000


(右)Lot.197《花下美人》
47.1×28.0cm
絹本・彩色 軸装    
右下に落款・印 
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト\300,000~500,000      




img_278のコピー
Lot.278
《秋のよそおひ》
54.0×66.3cm
絹本・彩色 額装
右下に落款・印
共箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書つき
エスティメイト 
★\15,000,000~25,000,000


季節の風物を愛でる女性像は松園が生涯描き続けたものです。この主題では、《花下美人》のように花を見つめていた女性は、次第に《秋のよそおひ》のように視線を遠くに向けるようになっていきました。前者では、梅の花や蛍などとの組み合わせを通して、女性の美とともに四季折々の風情を表現しています。また、後者は女性の心の内を観賞者に想像させるようでもあり、「女性の内面性を表現すること」に松園の関心が注がれていることがわかります。

松園のほかにも、前田青邨、小林古径、横山大観、村上華岳など、今回は日本画がとても充実しています。
まだご覧になっていない方は、ぜひお越しください。
銀座の下見会と丸ビルのオークションで、みなさまのお越しをお待ちしております。

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(執筆:S)