「浮世絵ベルギーロイヤルコレクション」展



歌川国芳
歌川国芳
《金魚づくし 百ものがたり》
ベルギー王立美術歴史博物館蔵


皆さん、浮世絵はお好きですか?


おちょぼ口が愛らしい春信の美人画や、雄々しい春章の役者絵、モダンな写楽の肖像画や、ユーモア溢れる北斎マンガ・・・。

はかない浮世暮らしを謳歌してしまう人間のエネルギーが頼もしく、擬人化された金魚が三味線を弾く姿の可笑しいことと言ったら!今風に言うなら、「キモ可愛い」、「カワ面白い」といったところでしょうか。
私は、大好きです。


現在、原宿駅前にある太田記念美術館では、「浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展」として、ベルギー王立美術歴史博物館とベルギー王立図書館が所蔵する浮世絵を公開しています。

先日、オープニングパーティーにご招待をいただき、末席に連なって参りました。会場の東郷記念館には駐日ベルギー大使閣下もお見えになり、会場はフランス語での挨拶が飛び交います。

太田記念美術館では、ふだんから来館者の3割以上が外国のお客様だそうです。外国のガイドブックに美術館が掲載されていて、それをご覧になっていらっしゃる旅行者が多いとか。
原宿駅を出て、竹下通りで「Kawaii! カワイイ」、浮世絵の美術館で「Beautiful!」、表参道で「Luxury!」・・・、日本文化の奥行きを感じる旅になることでしょう。

浮世絵は、日本語がわからなくても、全く日本文化についてご存知なくても、楽しむことができる芸術です。大衆文化であった浮世絵版画を、芸術として認識したのはヨーロッパが先ですし、浮世絵の系譜にあたる日本のマンガやアニメーションも、海外で知られた途端に爆発的に人気を博しました。    
 
ベルギー王立図書館は、フランスのルーヴル美術館が浮世絵を収集するよりも早く、写楽や北斎の第一級の作品を購入しています。当時は、ヨーロッパ芸術の巨匠・ルーベンスの版画よりも、浮世絵一点当たりの価格が高かったにも関わらず、です。なんと先見の明と公平な評価を持ち合わせたコレクターでしょう。

写楽
東洲斎写楽《二代目小佐川常世》
ベルギー王立図書館蔵

今回の展覧会では、写楽が見ものです。例えば、本来はペアであったとされる作品の片方ずつを、世界で唯一、ベルギー王立美術歴史博物館とベルギー王立図書館が一点ずつ所蔵していて、それが組み合わせられて展示されています。何と感動的な再会でしょうか。どれも、木目も鮮やかな、保存状態が素晴らしい作品です。

アートをコレクションされるお客様にとって、一つの醍醐味は、自分が過去に蒐集した作品が後により高い評価を得るようになることでしょう。コンテンポラリーアートの若手作家の作品を、価格の安いうちに購入するのも一つの方法ですが、このベルギー王立図書館のように、古い作品の歴史的な価値を認めて購入するという方法もまた、大変に意義のあることです。

近代美術オークション出品作品を例に取ると、南薫造や萬鉄五郎、浅井忠は、歴史的な評価が高く、残して行かなければならない作家と言えるでしょう。またルシアン・クートーという作家は、シュールレアリスム風の作風で戦後いち早く日本に知られていたものの、当社のメインオークションでは初めて出品されます。

オークションは、現役の作家のMarket Value(市場的な価値)を知ることができると同時に、過去の作家の作品を売買することによって伝統的な美の価値を高めていく場でも、あるのですよね。(執筆:I)


<展覧会情報>
浮世絵 -ベルギーロイヤルコレクション展
2008年9月2日(火)~28日(日)
午前10時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
太田記念美術館
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H2009Belgium.html