展覧会だより「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」 その1



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東京の街中でこのポスターを見かけたことがある方は多いのではないでしょうか。
主に駅構内に大々的に掲示されていたこのポスター。奇抜で大胆な色づかいに、アクロバティックなポーズでこちらを見つめている金ピカの彫刻。「一体何の展覧会なんだろう…。」と首をかしげた方もいらっしゃるはず。正体は「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展ヤゲオ財団コレクションより」という東京国立近代美術館で開催中の展覧会のメインイメージです。

このユニークなタイトルの展覧会では、台湾を拠点とするヤゲオ財団が世界中から収集した現代美術の名品がハイライト的に展示されています。ヤゲオ財団とは台湾資本の大手パッシブ電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションの会長、ピエール・チェン氏によって設立された非営利の組織です。設立から25年という短い期間でありながら、チェン氏の精力的な活動により国際的に評価の高い現代美術のコレクションが形成されています。

 この華やかな展覧会には学芸員によって美術の世界に対するいくつかの願いが込められていますが、その中には「アートコレクターやアートマーケットについて多くの人に興味を持ってもらいたい」という趣旨も含まれています。
会場内やカタログにちりばめられた学芸員のテキストには、美術史的な作品解説とともに大手オークションハウスであるクリスティーズやサザビーズでの落札結果や、展示されている作品の経済的価値がどのように形成されたのかなど、作品にまつわる経済的な考察がユーモアを交えた優しい文章で綴られています。

 

【著作権の都合のつき、画像の公開は終了致しました。】
マーク・クイン 《ミニチュアのヴィーナス》2008年 ヤゲオ財団蔵
©Marc Quinn

【著作権の都合のつき、画像の公開は終了致しました。】
杉本博司 《最後の晩餐》1999年 ヤゲオ財団蔵
©Hiroshi Sugimoto/Courtesy of Gallery Koyanagi

実際のところアートマーケットと美術館はそれぞれが完全に独立しているわけではなく、互いに作用したり影響を及ぼしあったりするものですが、日本に暮らす私達の実感としては、両者は距離を置いた世界という印象が強いため、今回の展覧会は新鮮な試みのように感じます。

会場内に掲示されているヤゲオ財団からのメッセージには「與藝術一起生活」(「起」の字は「己」の部分が「巳」の字形)という言葉が登場します。日本語では「アートとともに生活すること」という意味。手に入れた作品を暮らしの中でどのように楽しむのか、私たちの日常に近いところに重きを置いた展覧会です。

本展覧会は今後、名古屋市美術館、広島市現代美術館、京都国立近代美術館に巡回していきます。お近くの会場にぜひ足を運んでみて下さい。

次回更新のブログも引き続き本展覧会について紹介していきます。
展覧会の具体的な内容についてお話をさせていただく予定です。

 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより
会期:2014 年6月20日(金)-8月24日(日)
開館時間:午前10時-午後5時(金曜は午後8 時まで、入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:月曜日
展覧会HP:http://sekainotakara.com

 (高井)