こんにちは。
当社では、6月28日(土)に近代美術・近代陶芸・近代美術PartⅡと3つのオークションを同時開催致します。まず今週は、近代陶芸の下見会が6月18日(水)から20日(金)まで行われます。今年は実に雨の多い梅雨ですが、憂鬱な気分を吹き飛ばすためにも、気分転換に下見会場へいらしてみてはいかがでしょう?
今回の陶芸オークションの見所は、なんと言っても加守田章二の「彩陶壷」です。
「天才」、「鬼才」、「異才」。加守田章二はあまたの異名を取りました。50歳になる年に早世してしまった加守田は、もはや誰も越えることのできない伝説的な陶芸家と言えるでしょう。
その圧倒的な人気の大きな要因は、個展で発表する毎にその作風を一変させていったことにあるのかもしれません。以前にこのブログでもその変遷をご紹介しましたが、中でも1970年、1971年、1972年の3年間の作品に特に高い人気があると言われており、なかなか表舞台に出てくることはありません。
70年は「曲線彫文」という多面体の壷の周りに曲線の彫を貼り巡らせてある作品。
71年は「彩陶」という、彫ではなく朱・緑・白を基調とし、波文や鱗模様を巡らせた作品。
72年は「彩色」という緑・白・黒と穴とで波状、幾何学模様を描いた作品。
特に今回出品される71年の鱗模様の作品は、その模様の巧妙さと色の鮮やかさから、高い人気を誇っています。その模様は底部にまでつながり、銘と年代さえも巻き込み、全体を美しく包み込んでいます。
加守田は、71年にこの作品を発表した個展会場で次のような文章を発表しています。
「私は矛盾を感じ
抵抗を感じ
内に暗さや重さを秘めながら
軽く明るく飛翔したい欲望がある
そんな気持ちが私に色を使わせた」註)
内から湧き出た情熱的な思いが、陶器全面に「朱」を使わせたのかもしれません。力強さだけでなく計算された曲線と円の中に、観ているうちに吸い込まれていくような気さえしてきます。
“1971年”の加守田と向かい合い対話できるチャンスをお見逃しなく!
加守田章二の作品は、この他に湯呑や盃も出品されます。
一般の人たちにも広く陶芸作品の魅力を伝えたいと願っていた加守田は、湯呑や盃なども多く作っています。
そのデザイン性は、今も色褪せることはありません。どうぞお手に取りご覧ください。
今回は下見会の日時が平常とは違っております。お気を付けください。こちら。
皆さまのお越しを心よりお待ちしております。
註)『加守田章二』 益子陶芸美術館編集/印象社 2004年
(執筆者:E)