1972年の前衛陶芸家-八木一夫・加守田章二-     寛永(1624-44)の三筆-光悦・近衛信尹・松花堂昭乗-


こんにちは。

もう数日で、12月に突入。あっという間に今年の弊社のオークションも最後の開催となりました。今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」から、

こちらの作品をご紹介いたします。

■LOT.195 八木一夫「ページ」

H11.0×W29.0×D16.8cm

1972(昭和47)年作

見込みに掻き銘

共箱

『やきものの美 現代日本陶芸全集 第十四巻 八木一夫』掲載 No.22(集英社)

落札予想価格:200万円~400万円

■LOT.210 加守田章二「壷」

H15.6×W15.0cm

1972(昭和47)年作

底部に掻き銘「章」、「一九七二」刻

加守田昌子箱

落札予想価格:400万円~800万円

 八木一夫(1918-1979)と加守田章二(1933-1983)は、日本の陶芸史に名を遺す、前衛陶芸家として知られる陶芸作家です。

 八木一夫は、1918年に京焼の本場・五条坂で陶芸作家の八木一艸の長男として生まれました。37年に京都市立美術工芸学校(現京都市立銅駝美術工芸高等学)を卒業後、小中学校で図画工作の教員となっていましたが、終戦を迎え作陶に専念しました。そして48年に、京都五条坂の若手陶芸家らとともに、前衛陶芸集団・走泥社を設立し、鑑賞陶器に思いきり舵を切り、実用性のないオブジェを制作し始めます。日本の陶芸界では革命的な出来事であったと言えるでしょう。54年には、代表作《ザムザ氏の散歩》を発表。その後パリやニューヨーク近代美術館などで巡回展が開催され、プラハで開催された第3回国際陶芸展では、《碑 妃》がグランプリを受賞するなど、国内外で高い評価を得ました。71年には、京都市立芸術大学美術学部陶芸科教授に就任しています。この頃《頁(ページ)1》《頁2》《頁3》を「現代の陶芸―アメリカ・カナダ・メキシコ・日本展」に出品しており、本作はその翌年に制作されています。その年から始まる「本シリーズ」に続く作品だと考えられます。そして奇しくも同じ年に制作されたのが、LOT.210加守田章二「壷」です。

 加守田章二は、1933年に大阪岸和田に生まれ、京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)に入学しました。八木が前述の《ザムザ氏の散歩》を発表した頃に在学しており、走泥社の勢いを間近に感じていたのかもしれません。その後、加守田は益子へ移住し作陶を開始し、69年に岩手県遠野で築窯。71年、72年に色鮮やかな色彩を用いた「彩陶」は、加守田の中でも最高評価を受けています。本作は「彩陶」と名付けられていないものの、その流れを汲んだ作品です。

 八木一夫、54歳。加守田章二、39歳。時代の寵児として活躍していた二人の作をぜひご覧ください。

 

また今回は、古美術オークションに、「寛永の三筆」と呼ばれた三人の作と伝わる軸が出品されます。

 

 

■LOT.81 松花堂昭乗・狩野探幽「竹菊 遠州蔵帳」

90.1×29.1cm

紙本・軸装(173.0×35.4cm)

小堀遠州(宗甫)書付

小堀宗慶書付

『観空庵遺愛品入札もくろく』掲載 五一

東京美術倶楽部/昭和16(1941)年【目録付】

落札予想価格:60万円~120万円

松花堂昭乗(しょうかどう しょうじょう)【天正十二年-寛永十六年(1584-1639)】は江戸初期の社僧で、能書家。小堀遠州(宗甫)と並び茶道芸術の完成に貢献したことで知られ、松花堂が所持した茶道具名物は「八幡名物」と称されています。今回は、松花堂が竹、狩野探幽が菊を描いた二人の合作で、書は認められていません。ですが、あたかも一人で描いたかのように、ともにたらし込みの技法を用いた軽妙な筆致で対象を表しており、その技量の高さをうかがわせます。

■LOT.117 光悦「消息」

28.4×38.6cm

紙本・軸装(122.0×57.8cm)

『光悦』掲載 P.123 No.86(第一法規出版)【本付】

『光悦書状 一』掲載 No.82(二玄社)【本付】

落札予想価格:250万円~350万円

続いて光悦(こうえつ)【永禄一年-寛永十四年(1558-1637)】ですが、光悦は代々刀剣の鑑定を生業とする本阿弥家分家に生まれ、家業の傍ら、書画・陶芸・漆芸・茶道・作庭など、諸芸に類まれな才覚を発揮しました。同時期に活躍した俵屋宗達とともに斬新な意匠の作品を次々に生み出し、琳派の祖と称されています。書においては、上代様に学び、光悦流という独自の書境を拓きました。本作は、誰に宛てたものかは不明ですが、光悦が催す茶会の出欠に関する内容の手紙です。墨色の潤渇、筆線の太細、文字の大小に変化をもたせた闊達自在な書風が見て取れます。

■LOT.118近衛信尹「源氏物語抄」

35.3×94.5cm

紙本・軸装(134.0×103.5cm)

「書の流儀II ‐美の継承と創意」出品 出光美術館/平成29(2017)年【図録付】

「特別展 桃山 ‐天下人の100年」出品 東京国立博物館/令和2(2020)年【図録付】

落札予想価格:230万円~330万円

そして最後にもう一人、安土桃山時代から江戸初期にかけての公卿・近衛信尹(このえのぶただ)【永禄八年-慶長十九年(1565-1614)】です。五摂家筆頭の近衛家に生まれ、慶長十(1605)年に関白となりました。書に優れ、近衛流(三藐院流(さんみゃくいんりゅう))を創始しています。本作は、『源氏物語』「宇治十帖」の一つ、第四十九帖「宿木」の一部を抜粋し、散らし書きした幅です。書風は、父・前久(さきひさ)が得意とした伝統的な宮廷様の書法を継承し、定家流を取り入れたものであり、本作でも字形に信伊が確立した近衛流の特徴がよく表れています。また、薄緑色の料紙には、銀泥により藤が描かれ、金銀箔が散らされており、信伊が自ら注文して作らせた装飾料紙と推測されます註)「作品解説」『特別展 桃山―天下人の一〇〇年』読売新聞社 2020年。安土桃山時代の華やかな貴族文化を現在に伝える優美な作です。

 三者三様の幅であり、同時に鑑賞できる機会もすくないかと思いますので、ぜひ下見会場へ足をお運びください。

 

下見会・オークションスケジュールはこちら。

 

また、今回もオークション当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。

 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。

引き続き、感染予防対策をしっかりと行ってまいりますので、皆様のご参加を心よりお待ちしております。

 

                                        (江口)