当代の樂・黒茶碗登場ー9月近代陶芸オークションー



こんにちは。あっという間に肌寒くなり、秋めいてきましたね。

体調を崩されることなく、9月のオークションにぜひご来場くださいませ。

さて、今週末に行われます「近代陶芸/近代美術PartⅡ(陶芸)オークション」出品作についてご紹介させて頂きます。

 

LOT.214 大

 

「樂家」は、茶道・日本の陶芸界で特別大きな役割を果たされている窯元です。

千利休が登場し、千家の茶の湯が繁栄していくなか、同時に千家に仕える職人も代々受け継がれていきました。そして現在「千家十職(せんけじっしょく)」と呼ばれる十人の職方がいます。(樂吉左衛門・中村宗哲・永楽善五郎・中川浄益・黒田正玄・大西清右衛門・飛来一閑・駒澤利斎・土田友湖・奥村吉兵衛)中でも最古参が樂家であり、初代・長次郎は瓦職人でしたが、利休に頼まれ茶碗を焼成するようになりました。以後樂家は「御茶碗師(おちゃわんし)」として現在に至ります。

 樂焼は、轆轤を使わず手捏(てづく)ねで作られ、柔らかく、手になじむような形をしており、黒釉の「黒樂」と赤釉の「赤樂」が基本です。その釉薬の調合は一子相伝と言われています。

当主は十五代。東京芸大・彫刻科を卒業し、イタリアへ留学。帰国後、父・十四代吉左衛門(覚入)の元で作陶を始めました。400年という樂家の伝統の重圧のなかで、伝統を踏まえながらも“今様”であることを目指し、白釉の「皪釉(れきゆう)」や、四代・一入の頃からあったものの、茶碗にはあまり使われなかった「焼貫(やきぬき)」の技法を茶碗に用いて、新たな“樂家の茶碗”を作陶しています。

 そして今回の黒茶碗は、「天問(てんもん)」という1990年に開催された当代の伝説的な展覧会に出品された作品です。

この展覧会の出品作は、襲名後二度の個展を経て、六年を費やし制作されました。今までの樂焼とは明らかに違うオブジェともいえるような作品群であり、現代陶芸としても高く評価され、以後多くの賞を受賞するに到りました。展覧会時に当代自身が「六年間の私の歩みの全てです。」*と寄せており、その真摯な姿勢と意気込みが25年立った今でもひしひしと伝わってきます。本作は、十五代樂吉左衛門の原点と言うべき作品のひとつに当たると言えるでしょう。

 また今回は他に、五代樂宗入「黒茶碗」・「黒平茶碗」、十代樂旦入「赤茶碗 銘 壷中」、十二代樂弘入「赤茶碗」、十四代樂覚入「赤平茶碗 銘 涼風」も出品されます。ぜひ歴代の樂家当主の茶碗をご覧ください。

 

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*「天問 樂吉左衛門作品集」現代陶芸寛土里/1990年 参照

                              (執筆者・E)