健やかな美「民藝」、生と死の三輪龍作の世界


こんにちは。

夏休みはいかがお過ごしになられましたか?

例年より雨に見舞われることの多い夏でしたので、レジャー先等でも悲喜こもごもあったのではないでしょうか。余談ですが、私は突然の大雨の後に虹を見ることが出来ましたので、ちょっと得した気分になりました。

 

さて、今週末に開催されます「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」についてご紹介いたします。今回は「民藝運動」を行った作家四人(富本憲吉/バーナード・リーチ/濱田庄司/河井寛次郎)にスポットを当てて、特集を組んでいます。

 

「民藝」とは、“民衆が日々用いる工藝品”のこと。「民藝」という言葉を造り出したのは、大正から昭和にかけての思想家・柳(やなぎ)宗悦(むねよし)(1889-1961)でした。柳は、無名の人々が造り出した日用雑器に魅了され、全国を行脚し、人々の暮らしのなかに当たり前のようにある工藝品として評価されていないものを蒐集し始めます。そこで集めたものを陳列する美術館を創設するべく、1926年(大正15・昭和元)に濱田庄司(1894-1978)・富本憲吉(1886-1963)・河井寛次郎(1890-1966)らとの連名で『日本民藝美術館設立趣意書』を発表しました。「民藝運動」のはじまりです。また、このころ日本に滞在していたバーナード・リーチ(1887-1979)も、それぞれの作家と共に作陶を行い、互いに影響を与え合いました。民藝派の窯元にも出向き、英国の伝統的な技法を教えるなど、初期の民藝運動を支えた一人と言えるでしょう。

当初は陶芸家のみの賛同でしたが、後に木工芸の黒田辰秋や、染色家の芹沢銈介、また木版画家の棟方志功らも参加し、運動は拡大して行きました。

★LOT.205  バーナード・リーチ 「HAROLD HYS SHIPPE」  D34.4cm   口縁部に描き銘「B・H・L」、「1919」記、 「HAROLD HYS SHIPPE 1066」記 高台内に「Bayeux」記 共箱(1920年) 1919年作 ホツ有 落札予想価格:30万円~60万円

★LOT.205 
バーナード・リーチ
「HAROLD HYS SHIPPE」
D34.4cm
口縁部に描き銘「B・H・L」、「1919」記、
「HAROLD HYS SHIPPE 1066」記
高台内に「Bayeux」記
共箱(1920年)
1919年作 ホツ有
落札予想価格:30万円~60万円

 

 バーナード・リーチの楽焼の大皿です。制作年が1919年となっていることから、同年に築窯された洋画家・黒田清輝邸内の「東門窯」で作陶された可能性が高い作品です。絵柄は、1066年に海を渡り戦いに出たイングランドの王・ハロルド2世であり、母国の歴史画を日本の楽焼で作陶するという、リーチだからこそ意味のある、東西の文化をつなぐ作品と言えるでしょう。その他にも、リーチの作品は染附の盒子や、箸置等も出品されます。濱田庄司や、富本憲吉の識箱の付いている作品も何点かありますので、より民藝派の絆を感じられるかと思います。

 

他にも以下のような民藝派の作品が出品されますので、ぜひご高覧ください。

民藝まとめ

 

その他今回のオークションでご注目頂きたいのが、三輪龍作の作品です。

いずれも大型作品で、「卑弥呼山」が2点と、「天・地・人」シリーズが3点出品されます。

LOT.132  三輪龍作  「天、地、人 後宮」   H22.6×W51.5cm   底部に描き銘「龍」   共箱 1986年作  「三輪龍作 天・地・人展」出品 京都四条・髙島屋/1986年  「陶芸・三輪龍作の世界―愛と死の造形―」出品 下関市立美術館/1994年 落札予想価格:20万円~30万円

LOT.132 
三輪龍作
 「天、地、人 後宮」
  H22.6×W51.5cm
  底部に描き銘「龍」
  共箱 1986年作
 「三輪龍作 天・地・人展」出品 京都四条・髙島屋/1986年
 「陶芸・三輪龍作の世界―愛と死の造形―」出品 下関市立美術館/1994年
落札予想価格:20万円~30万円

LOT.134  三輪龍作  「卑弥呼山」  H28.2×W33.5cm  胴部に掻き銘「龍」  共箱 落札予想価格:30万円~50万円

LOT.134
 三輪龍作
 「卑弥呼山」
 H28.2×W33.5cm
 胴部に掻き銘「龍」
 共箱
落札予想価格:30万円~50万円

 三輪龍作は、1940年に十一代三輪休雪の長男として生まれました。萩焼の名門に生まれた龍作は、東京藝術大学陶芸科大学院修了後、伝統的な茶道具ではなく、「ハイヒール」を代表とするオブジェ作品を次々と生み出しました。その作品群は、一貫して愛と死をテーマにしています。今回出品されます「天・地・人」シリーズは、釈迦の生誕から廟、そして新天地へと繋がる世界。もう一方の金色の「卑弥呼」シリーズは、三輪龍作のもっとも代表的なシリーズと言えるでしょう。「卑弥呼山」、「卑弥呼の書」などその世界は広がりを見せています。十二代三輪休雪を襲名された現在でも、黄金に輝く「オーロラ碗」や「シルクロード碗」など、龍作らしさを失わない新しい休雪像を築き上げています。

その独特な世界観をぜひご堪能ください。

                                 執筆者:E

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