三岸好太郎の風景画―《崖の風景》と《天白溪》


こんにちは。
3日(土)の近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡ オークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週の17日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート オークションを開催いたします。
今週、東京に緊急事態宣言が発令されましたので、新型コロナウイルスの感染予防対策として、会場にご入場いただける人数に定員を設け、オークションは予約制にて開催させていただきます。
詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について

では、今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
夭折の画家・三岸好太郎の油彩がなんと2作品同時に出品されることになりました。



334
 三岸 好太郎
《崖の風景》
  31.7×40.9cm
(額装サイズ 51.9×61.2cm)
  キャンバス・油彩 額装
   左上にサイン
   東美鑑定評価機構鑑定委員会
  鑑定証書付

  落札予想価格
  ★¥300,000~¥600,000







335
 三岸 好太郎
《天白溪》
  32.0×41.1cm
(額装サイズ 49.5×58.5cm)
キャンバス・油彩 額装
1933
裏木枠に署名・タイトル・年代
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
『三岸好太郎全画集』
(1983年/朝日新聞社)№260

落札予想価格
                                                                                                             ★¥300,000~¥600,000


三岸好太郎(1903-1934/明治36-昭和9)は、わずか11年の画業においてめまぐるしく作風を変貌させ、大正から昭和の初期を疾風のごとく駆け抜けた洋画家。ロマンティシズムと理知性に富んだその作品は、現在も多くのファンを魅了しています。

北海道札幌区(現・札幌市)に生まれた三岸は、中学在学中から油絵を描き始め、卒業とともに画家を目指して上京します。独学で絵画制作に励み、1924年の春陽会第2回展にて春陽会賞を首席で受賞。岸田劉生やアンリ・ルソーに感化された素朴な作風で、一躍脚光を浴びました。同じ頃、画家の吉田節子(後の三岸節子)と結婚。1930年、独立美術協会の結成に参加し、フォーヴィスム風の「道化」シリーズ、シュルレアリスムやコラージュなどの手法を取り入れた前衛的な作品を次々に制作していきました。1934年には代表作となった幻想的な「蝶と貝殻」の連作を発表しますが、持病の悪化により31歳で早世しました。

一つ目のLot.334《崖の風景》は、赤土が露になった崖を中心として、その上に鬱蒼と生い茂る木々、下に2軒の茅葺き屋根の家屋が描かれた作品です。モティーフや構図が類似していることから、1924年から2年間にわたり数点が制作された、千葉県我孫子に取材した風景画の一つでしょうか。岸田劉生をはじめとする草土社の画家たちが参加した初期の春陽会では、ルソーを思わせる「稚拙味」のある素朴な作風が流行しました。また、彼らの多くは我孫子に住居を構え、あるいは度々訪れ、こぞって手賀沼周辺の風景を描きました。この流行に倣ったと思われる本作では、遠近法によらず、対象を上に積み上げるように平面的に捉え、朴訥とした雰囲気とあたたかな抒情の漂う風景を表しています。

そして、二つ目のLot.335《天白溪》(てんぱくけい)は、名古屋市にかつて存在した同名の景勝地を、1933(昭和8)年に訪れた際に描いた作品です。この時期、造形に関する様々な実験を試みた三岸でしたが、本作ではフォーヴ的な感覚と伸びやかで勢いのあるタッチにより、身近な自然を生き生きと表現しています。

二つの風景画は、くしくも画業の初期と後期に制作されたものと考えられます。それゆえ、画家が関心を抱き、表現しようとしたものはそれぞれ異なりますが、共通しているのは、新たな美の創造に高揚し、心から歓びを感じながらキャンバスに向かう異才・三岸好太郎の姿を想像させる点ではないでしょうか。

下見会では、ぜひ二つの風景画を見比べてみてください。
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(※オークション当日は下見会を開催いたしません)

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)