村上華岳の艶やかな牡丹図


残暑お見舞い申し上げます。ブログ担当者のMです。
皆様はどのような夏をお過ごしでしょうか?

当社では8月2日より17日まで、夏季休暇をいただいておりました。
私もこの休暇を利用して、旅をしたり、海や山に出かけたりと、思いっきり羽を伸ばしてきました。様々な場所に赴いたのですが…今年ならではの一大イベントといえば、出雲大社で行われていた、「御本殿特別拝観」でしょう。平成の大遷宮として、約60年ぶりに国宝である御本殿が一般公開されていました。
私は生まれ故郷が島根県なので出雲大社には度々訪れているのですが、御本殿に足を踏み入れた際はこれまでに感じたことのない神聖な気持ちと高揚感に包まれ、終始、胸の高鳴りを抑えることができませんでした。
おそらく一生に一度のチャンス。とても素晴らしい体験となりました。

さて、昨日近代美術オークションカタログが完成し、いよいよ秋のセールに向けて始動いたしました。当ブログでは、本日より近代美術オークションの9月13日までの間、近代美術に関する情報を更新していきます。

lot129 村上華岳
Lot129《春苑牡丹圖》
140.5×50.9cm/絹本・彩色 軸装
大正8年作/右上に落款・印/共箱
村上華岳展出品 1984年
(東京国立近代美術館)
「巨匠の日本画[9]村上華岳」掲載p.111
落札予想価格:500万円~800万円

本日は、村上華岳の《春苑牡丹圖》をご紹介いたします。

村上華岳は、深い精神性と官能性を併せ持つ観音像や牡丹、山水画などにおいて、独自の世界を形成した画家です。

明治21年大阪に生まれ、7歳の頃から神戸市花隈で育ち、京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校で学びます。そして、円山四条派の流れを汲みながらも、浮世絵、あるいはイタリアの中世ルネサンス絵画やインド美術などを取り入れた作風を展開していきます。在学中から文展で活躍していましたが、大正7年、学友である土田麦僊、小野竹喬、榊原紫峰らと国画創作協会を結成します。

本作品はその翌年、大正8年(1919年)、31歳の時に制作されたものです。同年には、国画創作協会展に《日高河清姫図》(重要文化財。東京国立近代美術館蔵)を出品しています。

この頃の華岳は、芝居や文楽、都踊りなどを愛好し、またそういった文化が流行し始めていた時代との関連もあり、舞妓をテーマにした作品を多く手掛けています。
また華岳は終生、牡丹の花を好んで描き、絶筆も牡丹でしたが、この時期の牡丹は、豊かな色彩で彩られているのが特徴です。本作品においても、牡丹は馥郁たる香りを放つかのごとく優艶な花を咲かせており、なまめかしさを漂わせています。己の花粉を運ぶ虫を求めて大きく雌しべを突き出す花姿には、華岳一流の官能性が秘められているのです。


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