日本の近代木彫―朝山、雲海、玄々の名作


こんにちは。
先週のBRAND JEWELLERY/近代美術PartⅡ 下見会にお越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。
今週の19日(土)は、BRAND JEWELLERY/近代美術PartⅡ/木梨憲武/近代美術 オークションを開催いたします。4ジャンルにわたる盛りだくさんの内容となりますので、開始時間などお間違えのないようご注意ください。

さて、この19日の近代美術オークションカタログはもうご覧いただきましたか?
今回は、高村光雲をはじめとする近代の木彫作家の名作5点が出品されるため、「髙村光雲と日本の近代木彫」と題しまして、カタログの中に特集コーナーを設けました。
「まだ見ていない」という方や「細部のアップが見たい」という方のために、光雲の弟子や孫弟子にあたる、山崎朝雲、米原雲海、佐藤玄々の作品を当ブログでもご紹介いたします。

57-1

57 山崎朝雲 (1867-1954)
《見参 頼義》
H63.2cm(台座含む)
木彫
大正3(1914)年作
下部に刻銘
共箱
台座(共箱付)裏に銘・年代
ケース付
山崎澄枝鑑定証付
落札予想価格 ¥2,000,000~¥4,000,000

 


    
     57-357-2のコピー 

↑ まだ赤ん坊ですが、義家は後に歴史に残る     ↑ 頼義の左足に刻銘があります。
  源氏の名将となります。            
  甲冑の表現がなんとも細やか。

山崎朝雲は、米原雲海とともに「高村光雲門下の双璧」といわれた木彫の名手です。
文展や帝展を中心に活躍し、伝統的な木彫技術に西洋の写実表現を取り入れた穏健な作風を展開しました。
《見参 頼義》は、平安中期の源氏の棟梁・源頼義が甲冑の袖を産衣の代わりにして生まれたばかりの長男・義家を抱き、小一条院のもとへ参内したという逸話を表したもの。歴史や文学の題材を得意とした朝雲らしい、勇壮な作品です。


58 米原 雲海 (1869-1925)58-1
《木彫竹取翁》
H41.2cm
木彫
背面に刻銘
共箱
落札予想価格 ¥2,000,000~¥4,000,000

米原雲海も、山崎朝雲と並ぶ光雲門下の逸材の一人です。その確かな刀技から光雲の信頼も厚く、光雲が代表作《老猿》(重要文化財・東京国立博物館蔵)を制作する際の助手や、長男・高村光太郎の木彫の指導もつとめました。
また、石膏の形態を比例コンパスで木材に写し取る「星取り法」を初めて木彫に応用したことでも知られています。                             58-3のコピー

本作品は、翁が光り輝く竹の中からかぐや姫を見つける、『竹取物語』の名場面を表したものです。
「なんと小さな女の子じゃ!」と驚く翁の様子がユーモアたっぷりに表現されています。また、木目をまるで文様のように造形に生かした点に、雲海の類まれな技術が見て取れます。

                          ↑ 背面、足元に刻銘があります。


59 佐藤 玄々(1888-1963)59-1のコピー

《大黒天》
H23.3cm
木彫・彩色
下部に刻銘
共箱
落札予想価格 ¥5,000,000~¥10,000,000


山崎朝雲の弟子・佐藤玄々は、「佐藤朝山」という名前でも活躍しました。大正11年にはフランスに渡り、ブールデルにも師事しています。
彩色木彫を得意とした玄々の代表作は、日本橋三越の1階に展示されている巨大な彫刻作品、《天女像》(まごころ)です。皆様も一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。

《大黒天》は七福神の一柱で、福徳や財宝をもたらす福の59-2のコピー
神です。見どころは、なんと言ってもこの艶やかな極彩色でしょう。細く切った金箔を貼付して文様を表わす伝統技法・截金(きりかね)も所々に用いられているようです。また、玄々が同時期に心血を注いだ《天女像》の装飾との類似性も見て取れます。

背面も絢爛豪華で、いかにもご利益がありそうです。→

 



これらの作品は16日(水)からの下見会にて展示いたします。
ぜひ近代の木彫作家たちの超絶技巧を間近でご覧ください。
下見会・オークションスケジュールはこちら

皆様のお越しを心よりお待ちしています。

(佐藤)