アンフォルメルの旗手・今井俊満



こんにちは。
5月に入り、暑すぎず寒すぎずの過ごしやすい日が続いていますが、沖縄・奄美地方はもう梅雨に入ったそうです。 関東地方は平年並みだと6月5日頃だとか。
梅雨入りまでの2~3週間、お天気の良い日曜日を大事にしていこうと思います。
 
さて、今週23日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
今井俊満の抽象絵画2点です。


【 オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました 】

117 《NORMAN BLUHM BLUE #3》

73.0×60.7cm
キャンバス・油彩 額装
1955年作
裏に署名・タイトル・年代
落札予想価格 ¥3,000,000~¥5,000,000





【 オークション終了につき、作品の画像は削除させていただきました 】

118 《Papillon Rouge》
72.7×91.9cm
キャンバス・ミスクトメディア 額装
1962年作
右下にサイン・年代
裏に署名・年代
落札予想価格 ¥6,000,000~¥10,000,000

 

 
 今井俊満(1928-2002)は、1950年代のパリで前衛芸術運動・アンフォルメルに身を投じ、日本の美術界における大流行の仕掛け人となった、アンフォルメルの旗手です。  
 1928年、京都に生まれた今井は、東京藝術大学の派遣学生として1年間油彩画を学んだ後、1952年単身パリに渡りました。評論家ミシェル・タピエやサム・フランシスとの出会いを機に抽象絵画に目覚め、激烈な色彩と重量感のあるマチエールによるダイナミックな作風を展開。1960年の第30回ヴェネチア・ビエンナーレなどの国際展に出品し、この運動の中心的な存在として高く評価されました。その後は次々にテーマを変貌させながら、「君が一生に一万枚描けば、必ず巨匠になれる」というピカソの言葉を実践し、夥しい数の作品をエネルギッシュに制作し続けました。  

 さて、今回のポイントは「アンフォルメル」です。
アンフォルメルとは、第二次世界大戦後のフランスで興った前衛芸術運動。フランス語で「非定型」という意味です。抒情的で非幾何学的な抽象、つまり「熱い」抽象表現を志向するものとして、評論家ミシェル・タピエが提唱し、サム・フランシスやジャン・デュビュッフェ、ジャン・フォートリエら、主にパリで活動する先鋭的な作家たちが参加しました。  
 1956年、日本に初めて紹介され、「アンフォルメル旋風が巻き起こった」と言われるほど大流行したことはよく知られていますが、このキーパーソンとなったのが今井俊満です。この時、現在再評価が高まっている具体美術協会をタピエに紹介し、後に「日本のアンフォルメル」と言われることになる彼らの国際的な活躍にも一役買うこととなりました。  

 117 《NORMAN BLUHM BLUE #3》は、そのタイトルから、アメリカ人画家ノーマン・ブルムへのオマージュとして制作されたものでしょうか。あるいは、優れた抽象作品から何かを学ぼうとしたのかもしれません。ノーマン・ブルムは、アンフォルメルと抽象表現主義、双方で活躍した今井の親友で、代表的な作家の一人として当時日本でも紹介されました。本作の、様々な色彩を薄く重ねた深みのあるオールオーヴァーの画面、混濁した色面の上を滴り落ちる青の美しさとリズムは、まさにブルムを思わせます。本作を描いた1955年(当時27歳)から、今井は一気にアンフォルメルの渦の中に突入していきます。  

 118 《Papillon Rouge》(赤い蝶)は、ドリッピングによって絵具の飛沫が激しく飛び散る「熱い」抽象です。 油絵具や砂などが厚く盛り上げられたマチエールは、まるで赤く燃えるマグマの塊。一つの生命体がキャンバスの上を流動するかのようです。こんなにも荒々しい表現ですが、画面にはきちんと図と背景が表わされ、中心から外側へ色彩の束が放たれているように見て取れます。この図は同じ1962年(当時34歳)に制作された、《作品》(東京国立近代美術館蔵)や《波の記録》(大原美術館蔵)と類似するものです。  
 また、マチエールのざらついた質感や厚み、画面を飛び散る黒の絵具には、日本のやきものや書との親近性を見出すこともできそうです。尖った前衛性の中に、こうした日本的な雰囲気が漂う点もまた今井作品の魅力であり、それが往時のパリや東京、そして世界を熱狂の渦に巻き込んだ理由なのかもしれません。

これらの作品は本日からの下見会でご覧いただけます。
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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)