古代の美―アピュリア《赤絵手アンフォーラ》


こんにちは。
東京の桜は満開の頃を過ぎてしまったようですが、お花見は行かれましたか?
散っていく様子もきれいなので、まだの方はぜひ桜吹雪をお楽しみください。

さて、今週の15日(土)は、西洋美術オークションを開催いたします。
大理石彫刻のように重量のある作品やマイセンの人形のように繊細な作品の多いこのオークションは、下見会の準備がとても大変なのですが、オープンしてみると、ヨーロッパを中心とした様々な地域の様々な時代の美術品が一堂に介していて、非常に見ごたえがあります。

今回も出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。
このたびのオークションは古代の作品が充実していますが、まずはカタログの表紙にもなっているこの作品です。


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273 アピュリア
  《赤絵手アンフォーラ》
   H85.0×W40.6cm
       落札予想価格 
   ¥2,800,000~3,800,000














「アピュリア」とは、現在の南イタリアのプーリア州を指します。紀元前8~3世紀頃にかけて、古代ギリシアの植民地となり、「マグナ・グラエキア」(大ギリシア)の一部となったこの地域では、ギリシア陶器が盛んに制作されました。

この時期のギリシア陶器には、赤色の素地の上に黒いシルエットで図像や文様を描き、線刻を施してその細部を表わす「黒絵式(黒像式)」と、素地を黒く塗り、塗り残した図像や文様の細部を絵筆によって描く「赤絵式(赤像式)」という二種類の絵付けの手法がありますが、この作品は「赤絵式」の手法によって制作されたアンフォーラです。

胴部の中央には槍を持ち、馬を伴った戦士と神殿風の建物、その両側に鏡や団扇を持つ女性たち、頸部には装飾的な文様が精緻に表わされています。アンフォーラは、主にぶどう酒や水などの貯蔵や運搬に使用される実用品ですが、本作は細やかに描かれた表裏の図像と高さ85cmという大きさから、戦場に散った地位の高い戦士を弔う副葬品として制作されたものでしょうか。主役である戦士と神殿の図は、遠近法と鮮やかな白の釉薬によって美しく際立たされており、赤絵式陶器の産地としてよく知られるアピュリアの高度に成熟した絵画表現が見て取れます。



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裏面:戦士の墓石を中心として、鏡を持った       側面:文様が隙間なく描かれ、作品の
   二人の女性が描かれています。             装飾性が高められています。



このほかにも古代文明のロマン香る作品がたくさん出品されます。


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   《青銅製剣》
            34.6cm
   落札予想価格 
   ¥80,000~150,000

イラン南西部ルリスタン地方で出土したとされる青銅製の剣です。この地域では、紀元前1世紀頃を中心に青銅器文化が発達しました。



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  267 エトルリア
     《青銅製毛彫人物文鏡》
     27.0×12.8cm
                    市川清箱
     落札予想価格 ¥200,000~400,000

   
エトルリアは、まだ古代ローマの支配となる以前の紀         元前9~紀元前1世紀頃、イタリア中央部に栄えた公
   易都市です。
        本作の背面には、最古の彫金技法と言われる毛彫り  
      (たがねで金属板に細い線を描く手法)の鋭い線によ
        り、4人の人物像が表わされています。







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    280 エジプト
     《ウシャブティ》
    H14.3cm(台座含む)
    落札予想価格    ¥100,000~200,000

 
 《ウシャブティ》は古代エジプトのミイラ形の小像。
    死者に代わって冥界の賦役労働に従事する者として
    墳墓に納められた副葬品です。
    本作は石製ですが、木や陶で作られたものもあり、
    次第に副葬される数が増え、新王国時代以降のファ
    ラオの墓には365体以上ものウシャブティが納めら
       れたといいます。


    


また、今回は銀食器やアール・ヌーヴォーのガラス作品、ペルシャ絨毯などもたくさん出品されますので、ぜひ下見会場にお越しください。


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皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)