オークションの舞台裏 -オークショニア-


先週土曜日オークションにご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。

オークションにおいて、皆様の正面に立ち、テンポよくビッドをとり競り上げていくオークショニア。肩書きとしてはおそらく珍しい部類に入るであろうこの仕事、その裏側をこのブログで少しずつご紹介していきたいと思います。今回はどうやってシンワオークショニアが生まれるか、です。

競り-1


弊社には現在3人のオークショニアがおりますが、それぞれがシンワオークショニアとしてのスタンダードをわきまえながら個性を発揮しています。
よく、どうしてオークショニアとなったのか?と聞かれますが、私の場合は留学時代にイギリスでオークションを見学した時に見たオークショニアが強く印象に残っていて、入社前からこの仕事に興味を抱いていました。過去在籍したオークショニアは私のように入社後自ら立候補した者が多いですが、中には会社が「彼ならできそうだ」と判断し声をかけられた者もおります。

欧米ではオークショニアとなるにはライセンスが必要な国が多いですが、オークション自体が始まってまだ歴史の浅い日本ではオークショニアのためのライセンスは必要ではありません。
ただし、高額な作品を大勢の前で会社を代表して競りを取り仕切るわけですから、ライセンスがないとはいえ、ただテンポよく競って行けばよいわけではなくオークションを通して常に一貫した基本姿勢で競りを行っていかなくてはいけません。このため、弊社ではオークショニアとなるために当然「研修」があります。この研修では、実際のオークションよりもずいぶんと難しい状況が作られます。来場者役の社員が、オークショニア候補が間違えるようわざと複数で同時にビッドするなどはまだやさしい方で、競っているふりをしてビッドを取ると競っていなかった、とんでもない金額で声を出して惑わせたりなど、数々の嫌がらせ…、いや、愛の鞭を振るってくれます。オークショニア候補はそれらの難題を乗り越え、研修によって公平性、一貫性の重要さを学びます。
また、そうした基本以外にもオークショニアには必要なものがあります。お客様が競り易くオークションを進行するために必要な要素、「リズム」です。オークションによく参加される方ならば、オークショニアの違いによって競り易い競りにくいというのを感じたことがあるかもしれません。弊社オークショニアは、できるだけお客様にビッドしやすく競っていただくためにこのリズムを重要と考えています。この「リズム」、簡単そうに見えるかもしれませんがやってみると案外難しく、刻一刻と変わる金額や誰が競っているかなどを示すために場所やパドル番号などを金額の合間に挟むとつい乱れがちになります。私も研修の頃は、通勤途中やお風呂でブツブツ「10万円、11万円、12万円…」などとつぶやいて練習していました。

こうして研修を終え、その時その時の状況に合わせて対処するための理論的な根拠や、スムーズな進行と競り易さのためのリズム、そして突発的なことが起こっても動じずに対応する力など、シンワオークショニアとしての基本をしっかりと身につけます。
ここまで来れば後は、いざ、デビューの日を待つばかり。

ハンマー


私が初めて壇上に立ったのはもう10年以上前ですが、緊張してオークション直前に水を飲む手が震えたのを今でも覚えています。いざ始まってみると無我夢中で何をどうしたのかよく覚えていませんが、大きなミスなく終えられたのは厳しい研修の成果と社員のみなさんのサポート、そしてお客様の寛大な心のおかげであったかもしれません。
これからもシンワアートオークションのオークショニアとして、公平でかつ楽しいオークションをお送りできるよう精進してまいりたいと思います。