米で描くアーティストLee・DongJae


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『icon』
acrylic, bean on canvas / 72.7×92cm / 2005

上の作品は、豆(bean)で再現されたイギリスのコメディの主人公、「ミスター・ビーン(Mr. Bean)」。
米に代表されるいろいろな穀物で時代のアイコン(icon)を描いてきたLee・DongJae(イ・ドンゼ)は、韓国をはじめ、世界各国で開催される個展やグループ展で活躍する若手の作家。韓国では彼が使用したはじめての素材が米であったことから「米で描く作家」としてよく知られています。また、アジアを中心にヨーロッパやアメリカの各オークション会社からのラブコールが多いLeeの作品は、韓国のオークション界ではすでにブルーチップ作家として認知されています。
上のミスター・ビーンの他にも、「米」で表したアメリカのライス国務長官や、レジン(resin)のモチーフで知られるイギリスの作家ダミアン・ハーストの顔を、またレジンで完成させた作品(下)など、作家の面白い逆転の発想は、観る人に愉快な気持ちを与えてくれます。


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『icon』
acrylic, resin on canvas / 120×120cm / 2008
<イギリスの作家、ダミアン・ハースト>

一色で綺麗に塗られたキャンバスの上に、コーティングした一個一個の米や豆、アワやカプセル剤、あるいはクリスタルなどを丁寧に集中して貼り付けるLeeは、「オブジェの有機性、物質と図像との有機的な関係、図像の有機的な拡張」という意識を持ちながら制作を進めるそうです。つまり、20世紀を代表する有名な人物の肖像というモチーフは、観客へのアプローチとして作用し、米に代表されるいろいろな素材は、それ自体が有機性をもつ物質であること、そして人間の体を構成・維持する食べ物としての「米」と、また別の有機体としての人間の「体」との間に生じる関係性や拡張を表しています。

 Leeの作品によく登場する、マリリン・モンロー、アンディ・ウォーホル、ルイス・アームストロング、マザー・テレサ、ナムジュン・パイク、ジョン・レノン、チェ・ゲバラなどの、芸術家・政治家・宗教家にわたる20世紀を代表するアイコンたちは、各界での熱情的な活動を果たし、また歴史の中に去って行った人物が多く見られます。彼らは、作家の有機的な作業によって生成と消滅の繰返しと言われる人類の歴史の中にまた新たに生き返ったように見えます。

日本では2009年の冬、東京での日・韓グループ展で彼の作品を見ることができましたが、今後ともLeeの日本での活動を期待したいと思います。


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『rice_price』
acrylic, rice on canvas / 91×116.7cm / 2004


【プロフィール】:Lee・DongJae (B.1974)
1999 (韓国)Dong-Guk大学校 美術学科 卒業
2002 (韓国)Dong-Guk大学校 大学院 美術学科 卒業

【レジデンス】
2006-2009 ジャンフン(Jang Heung)・アトリエ、ジャンフン
2008 パリ国際芸術共同体 / Cite Internationale des Arts, Paris

【個展】
2009 Two Icons (Gallery Artside Beijing SpaceⅡ, 北京)
2008 icon (Cite Internationale des Arts, パリ)
2007 The Contemporary (Insa Art Center, ソウル)
2004 rice_price (Insa Art Center, ソウル)
rice, rice (Seoul Arts Center, ソウル)
2003 seed (Gallery Chang, ソウル)

【主な団体展】
2011 Beyond Limits (Shinsegae Gallery, ブサン)
記憶の未来を追いかける人たち (Gana Art Center, ソウル)
2010 思惟の森(Youngeun Museum of Contemporary Art, 光州)
My Room Our Atelier (Gana Art Center, ソウル)
2009 The Great Hands (Gallery Hyundai, ソウル)
未来の作家 (Gallery Rho, ソウル)
2008 Real Illusion (Gana Art Gallery New York, ニューヨーク)
Let a thousand flowers blossom (Cite Internationale des Arts, パリ)
2007 ARCO art fair, Spain (Juan Carlos I Exhibition Centre, マドリード)
SH Contemporary Art fair (上海)
2006 Contemporary Asian Art (Sotheby`s New York, ニューヨーク)
10 Faces of DAKS (DAKS Plaza, ソウル) 



<執筆:W>