こんにちは。
4日(土)の近代陶芸/近代陶芸PartⅡ オークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週の18日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡ オークションを開催いたします。
東京は緊急事態宣言発令中となりますので、新型コロナウイルスの感染予防対策として、会場にご入場いただける人数に定員を設け、オークションは予約制にて開催させていただきます。
(下見会は予約制ではありません)
詳細はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染予防対策について
今回のオークションの出品作品には、ご注目いただきたい美人画がたくさんあります。その中でも特におすすめの3点をご紹介いたします。
199 伊東 深水
《夕涼み》
78.0×62.0cm
(額装サイズ104.5×88.5cm)
紙本・彩色
右上に落款・印
共シール
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ★¥3,000,000~¥5,000,000
まず一つ目は、歌川派浮世絵の流れを汲む美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で高く評価された伊東深水(1898—1972)の作品です。
本作では、絽の着物を身につけた女性が縁台に腰掛け、夕涼みをする様子が表されています。左手の指をじっと見つめる仕草と傍らに置かれた団扇。一目見て、あの名作を思い出された方も多いと思います。
本作は、「美人画家・伊東深水」の名を決定的なものとした出世作であり、代表作の一つとしても名高い《指》(1922年作)と同じ題材、同じポーズで描かれています。異なる点は、《指》のモデルが左手の薬指に指輪をはめた深水の妻であったことでしょうか。《指》では若妻らしい初々しさが表現されていたのに対し、本作のモデルは指輪をつけておらず、《指》よりも成熟した女性の色香を漂わせています。
200 竹久 夢二
《舞姫》
114.3×33.7cm(軸装サイズ184.5×52.6cm)
絹本・彩色
1921年作
右下に落款・印・年代
竹久みなみ箱
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
落札予想価格 ¥8,000,000~¥12,000,000
二つ目は、「夢二式美人画」と呼ばれる女性像を描き、大正ロマン香る詩情豊かな作風で大衆の人気を博した竹久夢二(1884-1934)の作品です。
明治末期から京都を度々訪れ、一時期住居も構えた夢二は、生涯を通して繰り返し舞妓を描きました。本作も画題の通り、舞妓を題材とした女性像です。画面右下には、「千九百二十一年晩秋」(大正10年)という年記と「為新瀧楼主人」という為書きが落款とともに記されています。この年の夏から秋にかけて、夢二は福島県を旅しており、本作は定宿の一つとして知られる会津東山温泉(会津若松市)の新瀧楼に宿泊した際、温泉場の舞妓をモデルに制作し、宿の主人に贈ったものでしょうか。
斜め後ろから舞妓を捉えた構図、足を描かず着物の裾を長く引いた危うげな立ち姿、舞妓の長いまつ毛と憂いを帯びた表情に、甘美な「夢二式美人画」の特徴が見て取れます。
203 上村 松園
《柳さくら》
163.2×64.8cm(軸装サイズ253.0×88.7cm)
絹本・彩色
左下に落款・印
共箱
東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
『鎌倉大谷記念美術館名品選』
(2000年/鎌倉大谷記念館)№62
落札予想価格 ¥40,000,000~¥60,000,000
そして最後は、生涯を通して理想の女性美を追求し、気品溢れる女性像を数多く残した上村松園(1875-1949)の作品です。
同画題の類似作品の制作年代より、本作は1938(昭和13)年頃に制作された幅でしょうか。この昭和前期、松園は代表作の一つ《序の舞》(1936年作・東京藝術大学蔵・重要文化財)や《砧》(1938年作・山種美術館蔵)などを次々と発表し、充実した画業を展開しました。
本作では、桜の花びらが舞い散る中、若い女性たちが花見に興じる姿が表されています。この四季の風物を楽しむ二人組の女性という題材は、松園が好んで繰り返し描いたもの。左の日傘を持つ女性はその可愛らしく華やかな装いから、京都の豊かな町家の令嬢と見て取れ、右の島田髷と思しき髪を結った女性は年長者らしい落ち着いた優美さを漂わせています。二人の着物と髪型、傘を持つ、あるいは袖の中に手を隠す仕草より、浮世絵などの古画を参照し、江戸中後期の風俗を主題としたものと考えられます。円熟味を感じさせる端正ではりのある線描、洗練された感性による優雅な色彩と均整の取れた構図には高い品格が漂い、松園が追い求めた「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」註)として描き上げられた作と言えるでしょう。
註)上村松園「棲霞軒雑記」『青眉抄・青眉抄拾遺』講談社 1976年
下見会では、近代を代表する美人画家による三者三様の女性美をお楽しみください。
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なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
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(佐藤)