いよいよお正月ですね。
今年一年、シンワブログをご愛読いただきました皆様、本当にありがとうございました。
せっかくの長いお休み、楽しくエネルギーを充電して新年を迎えたいですね。
今日は、お仕事がお休みのあいだに美術館でも行こう、とお考えの方のために、お勧めの展覧会情報をご紹介します。
名画を見たり、若手の作品に触れたりして、気持ちの充電もできたらいいですね。
<展覧会情報>
1.お正月からアート鑑賞!
東京国立近代美術館、ブリヂストン美術館は1月2日(土)AM10:00から開館しています!
東京国立近代美術館「ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた……」
1月2日(土)~2月14日(日)
ブリヂストン美術館「安井曾太郎の肖像画」
開催中~1月17日(日)
安井ファンの方は必見です。《金蓉》は、モデル小田切峯子さんの写真と並べられています。
2.美しいコンテンポラリーアートで癒されたい
資生堂ギャラリー 「第4回shiseido art egg 曽谷朝絵展」
1月8日(金)~1月31日(日)
淡く透き通るような色彩に癒されます。
3.やはり名画こそ見たい
国立新美術館「ルノワール—伝統と革新」
1月20日(土)~4月5日(月)
《レースの帽子の少女》《ブージヴァルのダンス》ほか80点が揃います。(※開催は1月20日(土)からです。)
京都国立博物館「THE ハプスブルク」
1月6日(水)~3月14日(日)
東京で見逃した方、京都でならまだ間に合います。
4.ミュージアムついでに新春のお買いもの!
三菱一号館美術館「竣工記念展 一丁倫敦と丸の内スタイル展」
開催中~1月11日(月)
今話題の丸の内ブリックスクエアに隣接している三菱一号館美術館。どちらも2日から開いています。
美術館の正式なオープンは4月ですが、今から竣工記念展が見られます。
渋谷区立松濤美術館「没後90年 村山槐多 ガランスの悦楽」
開催中~1月24日(日)
東急百貨店本店の先にあります。槐多作品を150点集め回顧する展覧会。※新春は4日(月)からです。
5.時間があるときに足を延ばして美術館
川崎市岡本太郎美術館「対照 佐内正史の写真」
開催中~1月11日(月)
700点の写真を展示。手にとって見ることができます。こちらは「TAROブレンド」が飲めるカフェや、ショップも 面白いですよ。
待ちに待った冬休み、ご家族との楽しいひと時をどうぞ健やかにお過ごしください。
来年もまたシンワアートオークションをよろしくお願い申し上げます。
(井上素子)
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カテゴリー別アーカイブ: 展覧会イベントレビュー
via art 2009
メリークリスマス!
イヴの今日はいかがお過ごしでしょうか。
先日当ブログで告知しました「via art展」がいよいよスタートしました!
展示と22日のオープニングに行われた授賞式やパーティの模様をご紹介します。
まずはエントランスを入って1F。
例年はペインティングが多い印象ですが、今年は大型作品や映像作品、インスタレーションが目立っています。
増永七生さんの巨大木版《マスナガスポーツ~妊娠~》(写真左奥)はすごいインパクトです。つい細部まで熟読してしまいました。
とっても気になったのがこちら。
太田祐司さんの《半馬博物館分館》です。展示スペースにオリジナルの「半馬博物館」を設置。収蔵品?をいろいろ展示しています。
写真は、絶滅してしまったという「UMA」のミイラ。かなり精巧なつくりです。
今回一番大きな作品はこちら。
蔭山忠臣さんの《GO!GO!マイルーム 漢は自家発電》です。
ワンルームの部屋です!!
失礼してドアを開けると・・・、
暗がりに自転車が!!
部屋の中が暗いのは、この自転車をこぐことによって、部屋の電気がつく仕組みになっているからなんです。
このときはお留守でしたが、展示期間中は自転車をこぐ蔭山さんにきっと会えますよ。
B1Fは平面作品を中心に展示しています。
こちらでは各賞の授賞式とパーティーが行われました。
(左)審査員賞、KURATA賞の受賞式 (右)オープニングパーティー
今回も各賞のほかに観客賞が設けられています。ご来場の際は、お気に入りの作家さんにぜひご投票ください。どの作家さんがお客様の一番人気だったか、楽しみですね。
連日アーティストトークなどのイベントも開催しておりますので、まだご覧になっていない方はぜひお越しください!
みなさまのご来場、心よりお待ちしています。
via art 2009
会期:開催中~12月26日(土) 10:00~18:00
会場:シンワアートミュージアム
東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F
お問い合わせ:info@viaart.jp
公式ホームページ:http://www.viaart.jp
(執筆:S)
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via art2009 Coming Soon!!
こんにちは。クリスマスが近づくにつれ、銀座のイルミネーションがなつかしくなってしまう今日この頃です。
さて、シンワアートオークションのクリスマスといえば・・・、今年3回目を迎える「via art展」です。22日から始まる展覧会に向けて、今日は少しだけご紹介します。
via art展は、「社会とアートをつなぐ」をコンセプトに掲げ、学生アーティストを社会に発信するアートイベントです。過去2回の出展作家の中には、現在も活躍されている方がたくさんいらっしゃいます。今回は、全国の美術を志す学生さんたちの中から27名が選ばれました。その出品作品の中から、美術家・天明屋尚氏をはじめ、そうそうたる顔ぶれの審査員の方々により審査員賞の作品が選ばれます。そのほかに、シンワからはKURATA賞としまして、シンワアートミュージアムで展覧会を開催できる権利を贈呈します。例年通り、トークショーなどのイベントも開催予定です。連休を含む5日間開催しておりますので、クリスマスの予定がもうお決まりの方も、そうでない方もぜひぜひお越しください!
展覧会の模様は当ブログでまたお知らせいたします。
via art 2009
会期:2009年12月22日(火)~12月26日(土) 10:00~18:00
会場:シンワアートミュージアム
東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F
お問い合わせ:info@viaart.jp
公式ホームページ:http://www.viaart.jp
(執筆:S)
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カンノサカン個展「hunch」
窓の外から見られる華麗なクリスマス・イルミネーションやツリーは今年も相変わらずキラキラと輝いていますね。ちょっとドキドキしてしまう今の季節、皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、今日は、近年世界から注目を集めている日本の現代アーティストの中でも、躍動感溢れる独特の線による抽象画でよく知られるカンノサカンさんの個展をご紹介したいと思います。
●カンノサカンさんの略歴
1970 東京生まれ。東京都在住。
個展
2008 「spread」ラディウム-レントゲンヴェルケ、東京
「pile」Michael Ku Gallery、台北
2007 「trans.」ヴァイスフェルト-レントゲンヴェルケ、東京
2006 「synchro」ヴァイスフェルト-レントゲンヴェルケ、東京
「fusion」コーネリアス・プレーザーギャラリー、ミュンヘン
2004-5 「trace」レントゲンヴェルケ、東京
グループ展
2006「縄文と現代 ~二つの時代をつなぐ『かたち』と『こころ』」青森県立美術館、青森
2005 「マックス・ヘッドルーム-頭上注意の絵画」 ヴァイスフェルト-レントゲンヴェルケ、 東京
パブリックコレクション
2009 ザ・ペニンシュラ上海、上海
2007 ヒルトン東京、東京
展示風景
カンノサカンさんの個展「hunch」が開催されるラディウム – レントゲンヴェルケ・ギャラリー。一階から展示スペースの二階へ上がっていくと、まるで夜空の星のかけらが、外からギャラリーの壁の三面に入り込んだかのような風景が開けます。
それは、今まで四角のキャンバスの上にウレタン塗装による艶やかな画面作りでよく知られているカンノサカンさんの作品が、なんと円形、つまり凸レンズの形に変わったからでした。
HUNCH-1002190. mephisto
urethane and acrylic paint on FRP
135×13.5cm
精巧な技術から得られた円形の支持体、見る角度によって変化を見せるベースの色彩、それに作家の無意識から生じた独特の線たちが発する光は、展示スペースとの美しいコラボレーションで、静かなオーラを発散していました。これが今回の個展で初めて発表するカンノサカンさんの新しいスタイルです。
HUNCH-2002190. mephisto
urethane and acrylic paint on FRP
135×13.5cm
もうちょっと近くから見てみると、例のエッジの効いた緻密な描写は、生成なのか消滅なのか、ある生き物の足跡のような流線で、より不思議な造型を完成させています。また、始点も終点もが存在しないこれらの感性線は、作家のオリジナリティーへの熱望をよく伝えてくれます。
日本だけではなく、香港アートフェア・台湾での個展・上海と東京のパブリックコレクションなど、世界からの熱い視線を受けているカンノサカンさんは、「円って、一番自然な形ではないかと思い付きました。」と、今後の作品スタイルを耳打ちしてくれました。
今回の個展以外にも、カンノサカンさんの作品はシンワのコンテンポラリーアート・オークションによく出品されていますので、皆様、次の機会には是非お見逃しのないように。
●展覧会概要
カンノサカン個展
「hunch」
会期:2009年12月4日(金) – 26(土) 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)
会場:ラディウム – レントゲンヴェルケ
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17 TEL 03-3662-2666
http://www.roentgenwerke.com
(執筆:W)
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建築家・柳澤孝彦+水墨画家・王子江 二人展
今週は銀座のシンワアートミュージアムで、建築家・柳澤孝彦+水墨画家・王子江 二人展を開催しています。
柳澤先生のブース
王先生のブース
出品作家のお二人をご紹介します。
柳澤孝彦(やなぎさわたかひこ)先生
1935年 長野県松本市生まれ
1958年 東京藝術大学美術学部建築科卒業
1958年 株式会社竹中工務店設計部入社
1986年 「第二国立劇場(仮称)」国際設計競技で最優秀賞受賞を機に、株式会社
TAK建築・都市計画研究所を設立し、代表取締役に就任。文化施設を主
軸にした設計活動を展開。
1995年 「郡山市立美術館及び一連の美術館・記念館の建築設計」にて第51回
日本芸術賞受賞
1996年 株式会社柳澤孝彦+TAK建築研究所代表取締役就任
代表作:新国立劇場、東京オペラシティ、東京都現代美術館、郡山市立美術館、
真鶴町立中川一政美術館、有楽町マリオンなど
建築がお好きな方の中にはファンの方も多いかもしれません。柳澤先生は上記の施設以外にもたくさんの美術館を手掛けていらっしゃいますので、このブログをご覧のみなさまなら、先生が設計された施設に一度は行かれたことがあると思いますよ。今回展示されているアートワークは、建築とは違った柳澤先生の別の一面が見られる作品です。
2点とも《光陰・メタモルフォーゼ》というタイトルです。
作品はデカルコマニーの技法で制作されています。デカルコマニーとは、紙に絵具を塗り、別の紙を重ねたり二つ折りにするなどして、不定形で偶然のイメージを得る技法。シュルレアリスムの作家たちが用いた手法としてよく知られています。この技法は偶然性や無意識の表象でもありますが、柳澤先生は作為と偶然性が50%ずつの割合で表出するように制作されています。
今回のテーマは、《光陰・メタモルフォーゼ》というタイトルの通り「時間」。左の画像の作品は、まるで水が飛び散る瞬間を捉えたようにも見えます。そのほか、宇宙や細胞のようにマクロやミクロの世界を思わせる作品が展開されています。
王子江(おうすこう)先生
1958年 中国北京市の文人画家の家系に生まれる。国立北京芸術学校卒業。
1988年 来日
1996年 水墨障壁画《雄原大地》が茂原市立美術館に収蔵される
1999年 水墨障壁画《聖煌》が奈良・薬師寺に収蔵される
2004年 水墨障壁画《出雲勝境図》が島根県・出雲大社に収蔵される
2008年 国際オリンピック委員会中華人民共和国文化部の招待作品として、《農家
喜慶話奥運》がオリンピック芸術センターに収蔵される。「王子江展」(東
京・上野の森美術館)開催。
2009年 NHK「新漢詩紀行」主題画を制作
NHKの「新漢詩紀行」でおなじみの王先生です。王先生といえば100メートルの水墨画ですが、今回は展示会場に入りませんので、お得意のモティーフ、水のある風景を題材とした額装作品がたくさん出品されています。
《人生楽事》
王先生のライフワーク、100メートルの水墨画を思わせる群像です。
《蘇州水郷人家》
中国の水墨画に様々なジャンルの絵画の要素を取り入れた作品です。王先生は油彩画や日本画を学ばれたご経験があり、筆のタッチは油彩画を、墨の濃淡のぼかしは日本画を意識されているそうです。伝統的なモティーフを抒情豊かに表現した作品です。
両先生とも会場にいらっしゃることが多いので、もしお会いできたら直接お話をうかがえるかもしれませんよ!
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。
会期:開催中~11月29日(日)
10:00~18:00(最終日は17:00まで)
会場:シンワアートミュージアム 1F
東京都中央区銀座7-4-12 ぎょうせいビル1F
TEL 03-3569-0030
(執筆:S)
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速水御舟展レポート
※展示期間終了につき、画像掲載を終了いたしました。
《名樹散椿》
(重要文化財)1929(昭和4)年 再興第16回院展
紙本金地・彩色 山種美術館蔵
雨上がりの秋空が広がる10月1日、広尾に移転オープンした山種美術館に、「速水御舟―日本画への挑戦―」展を観に行って参りました。
<美術館の“おもてなし”精神>
今、美術の業界で最も旬なスポット、新・山種美術館。
スタイリッシュかつ風格あるエントランスでは、安田靫彦(やすだゆきひこ)が揮毫した館名の看板がお出迎え。
入ってすぐ左には上質なくつろぎを提供する「カフェ椿」があり、展覧会終了後には多くのお客様で賑わっておりました。
和菓子が頂けるカフェは、コンセプトからしても、お客様をおもてなしする精神に溢れるしつらえです。
<展示>
速水御舟の画業を、入門から絶筆に至るまでじっくりと堪能することができるこの展覧会。
重要文化財の指定を受ける《炎舞》(えんぶ)や、《名樹散椿》(めいじゅちりつばき)など、近代の美術を愛する方には一度は本物をご覧頂きたい作品が並びます。
音声ガイドによる解説によると、《炎舞》で炎に群がる美しい蛾は、美というものに惹きつけられる御舟自身なのかもしれない、とのこと。御舟が毎晩、焚き火をしながら炎を見つめ、そのような思いを抱いていたのだとしたら・・・。
※展示期間終了につき、画像掲載を終了いたしました。
《炎舞》
(重要文化財)1925(大正15)年 第1回個展
絹本・彩色 山種美術館蔵
こうして美術館に足を運ぶ大勢の御舟ファンもまた、美に吸い寄せられる虫のようなものかもしれませんね。
<コレクター山種二、愛蔵の軸>
完成された美の境地を示す上掲の作品群以外に、この展覧会で印象的だった作品は、大コレクターで御舟のパトロンであった初代館長・山種二が愛蔵していたという軸。
この作品はとりわけ好んで、よく自室に掛けていたそうです。
梅の香気と初冬の冷気が、画面から優しく伝わってくる名品でした。
※展示期間終了につき、画像掲載を終了いたしました。
《紅梅・白梅》1929(昭和4)年
絹本・彩色 山種美術館蔵
<日本画の挑戦>
よく、20世紀最大の画家はピカソであると言われますが、その理由は、キュビスムやフォービスムといった重要な美術の動向をいくつも提案してはそれを自ら超えていったところにあるでしょう。
御舟は、間違いなく近代の日本美術の頂にいる画家の一人です。その理由もまた、ピカソと同様に、様々な「挑戦」をしては、それに安住しなかった点にありましょう。
※展示期間終了につき、画像掲載を終了いたしました。
《婦女群像(大下図)》1934(昭和9)年
紙本・木炭 個人蔵
展覧会の後半に展示されている《婦女群像》にはそれが感じられ、御舟による人物画を見てみたかったという気持ちを抱かせられるのでした。
<速水御舟展 概要>
会 期 : 2009年10月1日(木)~11月29日(日)
開館時間: 午前10時から午後7時 (入館は6時30分まで)
*新美術館の通常開館時間は、午前10時~午後5時です。
*本展覧会は開館記念特別展につき、延長して開催いたします。
休館日: 月曜日(10/12、11/23は開館、翌火曜日は休館)
入館料: 一般1200(1000)円・大高生900(800)円・中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金および前売料金
*障害者手帳持参者は1000円
*本展覧会は特別展のため、通常展とは料金が異なります。
(井上素子)
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日本・韓国 戦後現代美術展②
こんにちは。
先日に続きまして、現在銀座のシンワアートミュージアムで開催中の「日本・韓国 戦後現代美術展」のご紹介をさせていただきます。
今日は、この展覧会の主役、山口長男のお話です。
山口長男は1902年、貿易商を営む父の勤務地、韓国のソウルで生まれました。1927年東京美術学校西洋画科を卒業し、渡仏。フランスでは、ドルドーニュの洞窟壁画とオシップ・ザッキンの先鋭的な芸術に影響を受けました。先史時代の美から芸術の原点とは何かを考える糸口を掴み、ザッキンの制作からはプリミティビスムとキュビスムとの調和を学んだといいます。
1931年ソウルに戻ると、半農半画家の生活をスタート。池や庭など、身近な自然との間に生まれた交感を表現していきます。対象の本質をできる限り簡単に、直接的に表現するために、形は単純化されていきました。1938年、吉原治良らとともに二科会の前衛集団「九室会」の結成に参加。終戦後は日本に引き揚げ、制作一筋の生活が始まります。1950年代に入ると、黒地に黄土色や赤茶色の形を組み合わせた作風を展開。1950年代後半には、ヴェネチア・ビエンナーレなど、様々な国際展に出品し、高い評価を得ました。山口作品の「形」と「マチエール」は、まるで1本の樹木のように、年齢を重ねるごとにゆっくりじっくりと変化を遂げ、晩年の豊かな実りに向けて充実していきました。
今回の展覧会には、戦前から晩年までの様々な作風の作品が出品されています。その中から今日は選りすぐりの2点をご紹介します。
【展覧会終了につき、図版は削除いたしました】
《五つの塊》
1940年作
油彩・キャンバス
73.0×73.0cm
白地に円や楕円が描かれた作品です。
「山口長男なのに白?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
これは、山口作品に初めて円が登場したもので、
この作品をきっかけに、山口の生涯をかけた形の追求が始まります。
いわば、黒地に形を組み合わせるというスタイルの原型となった作品です。
1940年、この作品は20数点のシリーズで制作されましたが、
その後火災に会い、この1点を残してすべて焼失してしまいました。
原型ではありますが、後の作品にまで通じる山口の視点を感じさせるという点で、
山口の画業において欠くことのできない重要な作品と言えるでしょう。
現存することに感謝すら覚えてしまいそうです。
そしてもう1点。
【展覧会終了につき、図版は削除いたしました】
《層》
1972年作
油彩・合板
90.9×91.0cm
円熟期の作品です。
形は次第に拡大していき、ここではすでに図と地の関係が逆転してしまいました。
ずっと形の背景にあった黒地は、画面の隅に残るのみです。
初期から、形の追求とともに山口は作品が「触覚的」であることを重んじてきました。
「絵具を板に塗る」という、絵画の最も基本となる行為を重視したのです。
そして、本作品を制作した時期には、山口の関心は、「形」から「絵具を塗る」という行為、動作そのものへと展開しています。ここにおいても、自らの肉体と魂とを一体化させるように「充実が出るまで」、絵具を板に塗りつけています。絵具と自分自身とが呼応する空間や塗ることに費やす時間も、すべて含めた一連の動作こそが山口の制作の核となっていったのでしょう。そうして描かれた本作品では、色面は一枚の板の大きさを超え、四辺の外側に限りなく続く広がりを想起させます。それはまるで、上空から俯瞰した大地や、宇宙から見た地球のような大いなるイメージを彷彿とさせるようです。
実際にご覧いただけましたら、「触覚的」という感覚をきっとおわかりいただけると思います。じっと見つめていると、柔らかそうにも動いているようにも、こちらに迫ってくるようにも見え、「生きている」と感じさせる作品です。
本日を含めて会期は残すこと、あと2日となりました。
まだお越しいただいていない方、ぜひ会場で本物をご覧ください。
展覧会の詳細はこちら
皆様のご来場、心よりお待ちしています。
(執筆:S)
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「ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで」展
今月は、秋の展覧会シーズンが始まる月です。
35万人超の人を集めた越後妻有アートトリエンナーレも9月13日で閉幕し、23日にはゴーギャン展も閉幕。
院展は東京での展示を終えて、今は京都を巡回しています。
夏から秋へと、展覧会も衣がえですね。
さて今日はこの秋にシンワアートオークションのお客様にお勧めしたい、主な展覧会をご紹介しましょう。
・9月3日~Bunkamuraザ・ミュージアム
「ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで」
・9月12日~損保ジャパン東郷青児美術館
「ベルギー近代絵画のあゆみ」
・9月12日~世田谷美術館
「オルセー美術館展 パリのアール・ヌーヴォー」
・9月16日~高島屋アートギャラリー
「クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」
・9月19日~国立西洋美術館
「古代ローマ帝国の遺産 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ」
・9月25日~国立新美術館
「ウィーン美術史美術館所蔵THE ハプスブルク」
・10月1日~山種美術館
「速水御舟展 日本画への挑戦—」
こうして見てみると、“ウィーン”と冠した展覧会が多いですね。
それは、今年が日本とオーストリアの国交開始から140周年にあたり、「日本オーストリア交流年2009」の関連イベントとして企画されている展覧会が多いからなのです。
今年は、国内でクリムトの油彩画が見られる数少ないチャンスと言えるでしょう。
また、山種美術館は10月に広尾に移転して、新しい美術館に生まれ変わります。
恵比寿から徒歩10分の場所になり、新しいカフェ「椿」では、展覧会に因んだスイーツ「散椿」(速水御舟《名樹散椿》より)をイタリア・カッシーナ製のテーブルで頂くことができるそうです。これは楽しみですね!!
この秋にもう一つ目に付くのは、「ベルギー幻想派」に因んだ展覧会です。
現在、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで」では、ウォーホルが旧蔵していたマグリットの絵画《幕の宮殿》や、ベルギーのシュルレアリスムを主導したポール・デルヴォーの大作も見ることが出来ます。
※展示期間終了につき、画像掲載を終了いたしました。
フェルナン・クノップフ
《ヴェネツィアの思い出》1901年頃
パステル、鉛筆・紙
姫路市立美術館蔵
※展示期間終了につき、画像掲載を終了いたしました。
レオン・フレデリック
《春の寓意》1924-25年
油彩・画布
姫路市立美術館蔵
他にも、エミール・ファブリという作家の《夜》という作品は、これまでに見たことのない不思議な作風の絵画なのに、どことなく日本のコンテンポラリーアートの最先端にある“日常”や“不安”の表現に共通するものを感じました。
「ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで」
会 期 :2009年9月3日(木)-10月25日(日) 開催期間中無休
開館時間 :10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
会 場 Bunkamuraザ・ミュージアム
(井上素子)
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日本・韓国 戦後現代美術展
こんにちは。
すっかり秋らしくなってきましたね。
銀座を歩く人たちのファッションも、有明から見える海の色も少しずつ変わってきたような気がします。
さて、銀座のシンワアートミュージアムでは、今週から「日本・韓国 戦後現代美術展」を開催しています。
この展覧会は、日本と韓国の戦後現代美術を代表する作家たち、17人の作品をご紹介するものです。
【出品作家】
日本:山口長男、斎藤義重、オノサト・トシノブ、菅井汲、白髪一雄、山田正亮、
工藤哲巳、三木富雄、河原温、難波田龍起
韓国:李禹煥、金煥基、金昌烈、鄭相和、朴栖甫、河鐘賢、尹亨根
“Post-War”の作品が好きな方にはたまらない豪華なラインナップですよね!
しかも、それぞれの作家の代表作と言っても、決して過言ではないレベルの作品が一堂に会しました。
今日は少しだけ会場の展示風景をご紹介します。
エントランスを入ると、白髪一雄の《天微星九絞龍》(1963年作)がお出迎え。
横270cmを超える大作です。
白髪は、天井から吊り下げたロープにつかまり、床に広げたキャンバスの上を素足で滑走して描くフット・ペインティングで知られる作家です。自らの肉体を介在させて描くことで、作品には白髪の気迫と情念が溢れんばかりに込められています。
通りを歩く人たちの中には、この作品に吸い寄せられるようにミュージアムに入って来られる方も。
撮影者(私です)の腕があまりよくないので、画像では伝わりづらくなってしまいましたが、実際の作品が放つパワーは圧巻です!
ぜひ会場で本物をご覧ください。
こちらは韓国を代表する二人の作品です。
向かって左が、金昌烈《水滴》(1976年作)、右が李禹煥《From winds》(1986年作)です。2点とも縦220cmを超える大作ですが、この時期の作品でこれだけのサイズのものは、なかなか観ることができないのではないでしょうか。
もちろん李禹煥の《From point》や《From line》など、各シリーズを展示しています。
李禹煥、オノサト・トシノブ、金煥基です。
こうして観ているとやはり近い国なんだなあと思えますね。
東アジア共通の何かがあるのかもしれません。
そしてこの奥は・・・、「ロスコルーム」ならぬ「山口ルーム」です。
戦前から晩年まで、各時代の山口長男の作品が並んでいます。
焼失して幻となってしまった「白い絵画」シリーズのうち、焼け残った1点も出品されています。
とっても豊かで贅沢な空間ですよ。
山口については次回、また詳しくご紹介します!
展覧会の詳細はこちら
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。
(執筆:S)
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金子潤 展
18日のオークションにご参加いただいたみなさま、
どうもありがとうございました。
今回はジュエリー&ウォッチ、近代美術PartⅡ、近代美術、近代陶芸の4ジャンル合同オークションということで、たくさんのお客様がご来場くださり、
近代美術で落札率100%という大変な好結果になりました。
心よりお礼申し上げます。
さて、今週からシンワアートミュージアム(当社1F)では、
金子潤展を開催しております。
全米を代表する陶芸作家・金子潤さんは、1942年名古屋に生まれました。1963年に画家を志して渡米。ロサンゼルスのシャナード美術学校で土と出会い、ジェリー・ロスマン、ピーター・ヴォーコスといった現代陶芸作家に師事します。1964年に第23回全米陶芸展で入選を果たし、一躍脚光を浴びてからは、多くの展覧会に作品を出品するようになりました。1979年伝統あるクランブルック・アカデミーの教員として招聘。1984年には、ボストン美術館で開催された「アメリカ現代陶芸の動向」展において、アメリカを代表する15人の作家のひとりに選ばれています。現在もアメリカを拠点に、陶芸のほかにも絵画、ガラス、オペラの舞台や衣装のデザインを手がけるなど、多彩な活動を展開しています。
今回の展覧会は、金子潤さんの代表的なシリーズ、「Dango」と「Oval」を中心に約20点で構成されています。いずれも、酸化銅を主体とした釉薬に低温で還元をかける「ストライキング」という特殊な焼成技法で制作された作品です。金子さんは発色の良い仕上がりを求めて、この技法に行き着いたようですね。
「Dango」は丸みを帯びたやわらかなフォルムの立体作品です。「陶の彫刻家」とも呼ばれる金子さんの作品は、大変スケールが大きなことで知られていますが、「Dango」はその魅力を端的に伝えてくれるシリーズ。水玉やしま模様の色彩が鮮やかです。全体が文様で覆われているため、作品には正面性がありません。一つ一つが確固とした存在でありながら、何かの一部でもあるような、全体を鑑賞しながらも、まだ見えない部分があるような、さらなる奥行きを感じさせます。
シリーズとはいえ、作品はそれぞれが独立したものですが、同じ空間に並べるとまるで作品同士が対話しているかのような関係性が生まれています。
思わずなでてみたくなるような、ツヤとやさしいフォルムですが、展示作品には触れられませんのでお気をつけください!
(私も我慢しました)
ちなみに金子潤展は、東京ミッドタウンと二会場で同時開催中です。
http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/sp_contents/jun_kaneko/index.html
ミッドタウンは野外展示ですので、両方ご覧になると、作品の違った表情をお楽しみいただけるかもしれませんね。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。
■□■ 金子潤展 □■□
会場:シンワアートミュージアム
会期:開催中~8/1(土) 会期中は無休
開館時間:10:00~18:00
(執筆:S)
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