カテゴリー別アーカイブ: 韓国

「2012 韓国国際アートフェア」

先週の「近代美術 / 近代美術PartⅡオークション」にご参加いただいたお客様、誠にありがとうございました。
来週10月6日(土)には「BAGS/JEWELLERY & WATCHESオークション」を開催します。3日(水)からの下見会をお楽しみに。

さて今日は、9月12日から17日にかけて開催された韓国を代表するアート・フェスティバル「2012韓国国際アートフェア(KIAF:Korea International Art Fair)」をご紹介します。

今年で11回目を迎えたKIAFは毎年9月半ばに開催されますが、今年は世界20カ国から181のギャラリーが参加し、約7,000点の作品が展示されました。

20120924-1.jpg 20120924-2.jpg
< 入り口の行列と会場内の風景>

毎年主賓国を選定し、選ばれた国のアートについてより詳しく紹介する企画を持つKIAF-今年は韓国-ラテン・アメリカ修交50周年を記念し、アルゼンチン・コロンビア・メキシコ・ドミニカ・ウルグアイ・ベネズエラなど、ラテン・アメリカの国々から14のギャラリーが発信した様々な作品を見ることができました。
中でも、ベネズエラ出身の世界的なアーティスト、カルロス・クルス=ディエスのスペシャルブースや日本でも多くのファンを持つフェルナンド・ボテロの作品群にはたくさんの人々が集まっていました。

20120924-4.jpg
< ボテロの作品を撮影する来場者>

コンテンポラリーアートを取り扱うギャラリーの参加が多いKIAFですが、日本人アーティストの中では、名和晃平の立体作品「シカ」が、今回のアートフェアのメインイメージとして広告に使われるなど、その人気の高さが感じられました。

20120924-3.jpg
名和晃平 「シカ」(202×182×150cm、韓国・アラリオギャラリー)
   
20120924-5.jpg 20120924-6.jpg
< 日本人作家の作品のブース風景>

アートフェアは、よく「美術愛好家たちのお祭りである」などと言われますが、本来の目的は展示や観賞だけではなく、コレクターの財布を開けさせることにあります。今回のKIAFでは、いわゆる“スーパー・リッチ”と呼ばれるお客様へのサービスに特に力を注いでいました。VIPプレビューはもちろん、美術投資への成功戦略を主題とする様々な講座、「VIP・ナイト・パーティー」等の催しや提携美術館での無料観覧サービス、また、BMWコリアの協賛で、会場からVIPの行きたい先までの「カー・サービス」の提供などもあったとか。今までよりも更に充実した様々なサービスを通じて、この不景気を乗り越えようとする努力がひしひしと伝わってきました。

KIAFは9月17日閉幕、5日間で-来場者数85,000名、売上140億ウォン(約10億円)と、結果としてはほぼ昨年並みだったそうです。

(執筆:W)

続きを読む

Area Parkの「写真の路」@エルメス・コリア

「写真の路-宮城県でアルバムを拾う」展

1_20120124121047.jpg

エルメス・コリアが運営するアトリエ・エルメスは、アーティストの発掘及び支援、またその企画展示を目的に、2000年ソウル一番のオシャレのメッカと呼ばれるチョンダムドンに設立されました。今年初の企画展には、日本を拠点に情熱溢れる活動を見せている韓国出身の写真作家、Area Park(エリア パク)が選ばれ日韓アート界の注目を浴びています。


4_20120124121127.jpg
〈オープニングパーティの風景〉


作家、Area Park(エリア パク
本名は、朴晋暎(パク、ジンヨン)、「Area Park」というアーティストネームで日本と韓国を中心に活動している若手写真家です。
1972年韓国の釜山生まれ。大学と大学院で報道写真とドキュメンタリー写真を勉強したパクは、韓国のテレビ局であるMBCのフォトエッセイ<人>、KBSの<人物現代史>、<日曜スペシャル>などのドキュメンタリー番組でスチール写真を担当し、作家としての基礎を固めました。2004年朝興(ゾフン)ギャラリーでの<ソウル...間隔の社会>展で作家としてデビューして以降、Kumho美術館で5回の個展と共に、ドイツでの韓国現代写真展<Fast Forward>、ロダンギャラリー<思春期の徴候>、第1回デグ写真ビエンナーレ<テーマ展>、国立現代美術館<韓国写真60年>、ソウル市立美術館<韓国現代写真の風景>、ヒューストンミュージアム<Chaotic Harmony>の他、およそ100回の国内外グループ展に参加し、現在は東京に居住しながら活動を続けています。


2_20120124121103.jpg
名取市_写真額縁(14.7m), light jet print, 220×180cm, 2011 

3_20120124121118.jpg
名取市_カメラ(14.7m), light jet print, 220×180cm, 2011 


今回の「写真の路-宮城県でアルバムを拾う」展は、昨年の東日本大震災発生の4日後に酷い交通渋滞と通行制限された道路を潜り抜けて訪ねた宮城県で作家の目に入った印象的な風景から始まります。泥まみれになって風に揺れている持ち主の分からない数枚の写真、そしてその写真を拾い集めて水で洗っている人々の姿、「今一番探したいものは何か」という質問に「家族のアルバムだ」と一様に答える人々。そして跡形もなく消えてしまった写真館の建物と既にゴミになってしまった数百個のカメラ。作家の目の前に広がったその全ての場面は、まるで巨大な「死」の下で忘却と闘争する人類の現状、そのものであったのでしょうか。


5_20120124121145.jpg
石巻市_銅像(13.8m), light jet print, 120×150cm, 2011 

6.jpg
陸前高田_Yamaha(16.7m), light jet print, 150×120cm, 2011 


今回の展示のモチーフは、被災地の宮城県で偶然に拾った金子さんというアマチュア写真家のアルバム。娘であるマリさん(生存していれば60歳前後)の成長過程を残したものと類推されるこのアルバムの発見から、パクの作業は記録としての行為だけではなく、時や言葉を超えた写真家同士、あるいは同じ人間としての共感を求める行為が加わります。

アナログカメラの研ぎ澄まされた視線とフィルムの純粋性をいまだに信頼すると言い、「写真の路」の連作を通して写真本来の意味とその存在価値を問い掛けてきたパクが、何万人もの人々が亡くなったこの場所で見つけたのはいったい何だったのでしょうか。それは「家族のアルバム」という再び取り戻すことのできない世の中で一番大切な「懐かしさ」だったのではないでしょうか。
「おそらく展示会場には私が撮った写真もあるだろうが、それよりも私が見つけた数枚の写真がもっと重要な意味を付け加えてくれるだろう。」と作家は語ります。


【展示概要】
会期:2012年1月6日~3月13日
会場:アトリエ・エルメス
   MAISON HERMES Dosan Park
630-26 Shinsa-dong, Gangnam-gu, Seoul KOREA
TEL: 82・2・544・7722


そして、いよいよ今週からは「近代美術PartⅡオークションの下見会」をはじめ、新年初のオークション月間に入ります。皆様のご来場を心からお待ちしております。

【オークション】
2012年2月4日 丸ビルホール
15:00-近代美術PartⅡ/ 福井良之助コレクション
18:00-近代美術

【下見会】
近代美術PartⅡ/ 福井良之助コレクション
シンワアートミュージアム
2012年1月25日(水)~27日(金) 10:00~18:00
2012年1月28日(土)      10:00~17:00

近代美術
シンワアートミュージアム
2012年2月1日(水)~3日(金) 10:00~18:00
2012年2月4日(土)      10:00~12:00


〈執筆:W〉

続きを読む

63スカイアート『FACES展』

63スカイアート(63 Sky Art)は、ソウル市内が一望できる63ビル(1985年に完成した地上60階地下3階からなる超高層ビル)の60階に位置する美術館です。「国際文化交流や国内の美術文化の発展のため」というスローガンを揚げ、63ビルの所有企業であるハンファ・グループによって2008年に開館されました。
地上246mから、ソウルの中心を貫いて流れる漢江(ハンガン)や都市風景、そして現代美術が一緒に楽しめる63スカイアートは、六本木ヒルズの森美術館をベンチマーキングしたものだそうです。

20110801.jpg 20110802.jpg
〈まるで、外の景色を望めるように展示された造形作品〉

63ビルは完成以来20年以上も展望台としてよく知られてきたので、特に美術を求めて訪ねる人よりは家族や恋人と眺めを楽しむ一般の観客が多いことから、難解な美術よりは身近で親しみやすい作家や作品が多く展示されています。

今回の『FACES展』も、韓国内外の作家7名によって「停止された顔」、「単純な顔」、「優しい顔」、「偽装された顔」、「明快な顔」、「楽しい顔」の、六つのコーナーに分けられ、人の顔というやさしいテーマとアニメ風の作風で、夏休み中の子供たちも楽しめそうな企画でした。

中でも、「停止された顔」のタイトルで紹介されているアレックス・カッツ(Alex Katz)は、20世紀のアメリカ絵画を語る際に最も重要な一人として評価される作家です。自分の家族や友達、芸術家や有名人などの顔をアニメ風に描くカッツは、人の顔をクローズアップしたり画面をうまく分割することで、広告のイメージのように停止された場面を作り出します。細密な部分は果敢に省略し、著しい特徴だけをうまくデフォルメするカッツの代表作品を、今回の展示からも見ることができます。

20110803.jpg
〈カッツの「停止された顔」の展示風景〉

20110804.jpg
〈オピーの「単純な顔」の展示風景〉

また、近年コンテンポラリーアート界のブルーチップとして高い人気を集めるジュリアン・オピー(Julian Opie)の作品は、「単純な顔」というタイトルを持って展示されています。
オピーの肖像作品は、写真で撮った人物を、コンピューター作業を通した省略や単純化の過程を経って表現されます。目はただ2つの「点」に変化し、誰もが似たような顔をしているオピーの人物画ですが、個性は顔付きや表情ではなく、洋服やポーズ、ヘアスタイル、歩き方などの、その人物が選んだその他の要素によって表すものだというオピーのアート観がよくみえる展示だと思います。

他にも、「恋」をテーマに人の温かい感情をやさしいパステル色で画面に満たす韓国の人気作家イ・スドンの作品や、韓国の若手作家の作品も多く展示されていますので、ソウルに行かれる予定がある方は、ぜひご覧になってはいかがでしょうか。

20110805.jpg
〈韓国の若手作家、ユン・ギウォンの「明快な顔」の展示風景〉


【展示概要】
期間:2011年7月9日~11月13日
時間:10:00~22:00 年中無休
料金:12,000ウォン(約900円)
H P : http://www.63skyart.co.kr/

(執筆:W)

続きを読む

米で描くアーティストLee・DongJae

16icon-1.jpg

『icon』
acrylic, bean on canvas / 72.7×92cm / 2005

上の作品は、豆(bean)で再現されたイギリスのコメディの主人公、「ミスター・ビーン(Mr. Bean)」。
米に代表されるいろいろな穀物で時代のアイコン(icon)を描いてきたLee・DongJae(イ・ドンゼ)は、韓国をはじめ、世界各国で開催される個展やグループ展で活躍する若手の作家。韓国では彼が使用したはじめての素材が米であったことから「米で描く作家」としてよく知られています。また、アジアを中心にヨーロッパやアメリカの各オークション会社からのラブコールが多いLeeの作品は、韓国のオークション界ではすでにブルーチップ作家として認知されています。
上のミスター・ビーンの他にも、「米」で表したアメリカのライス国務長官や、レジン(resin)のモチーフで知られるイギリスの作家ダミアン・ハーストの顔を、またレジンで完成させた作品(下)など、作家の面白い逆転の発想は、観る人に愉快な気持ちを与えてくれます。


resin-1.jpg

『icon』
acrylic, resin on canvas / 120×120cm / 2008
<イギリスの作家、ダミアン・ハースト>

一色で綺麗に塗られたキャンバスの上に、コーティングした一個一個の米や豆、アワやカプセル剤、あるいはクリスタルなどを丁寧に集中して貼り付けるLeeは、「オブジェの有機性、物質と図像との有機的な関係、図像の有機的な拡張」という意識を持ちながら制作を進めるそうです。つまり、20世紀を代表する有名な人物の肖像というモチーフは、観客へのアプローチとして作用し、米に代表されるいろいろな素材は、それ自体が有機性をもつ物質であること、そして人間の体を構成・維持する食べ物としての「米」と、また別の有機体としての人間の「体」との間に生じる関係性や拡張を表しています。

 Leeの作品によく登場する、マリリン・モンロー、アンディ・ウォーホル、ルイス・アームストロング、マザー・テレサ、ナムジュン・パイク、ジョン・レノン、チェ・ゲバラなどの、芸術家・政治家・宗教家にわたる20世紀を代表するアイコンたちは、各界での熱情的な活動を果たし、また歴史の中に去って行った人物が多く見られます。彼らは、作家の有機的な作業によって生成と消滅の繰返しと言われる人類の歴史の中にまた新たに生き返ったように見えます。

日本では2009年の冬、東京での日・韓グループ展で彼の作品を見ることができましたが、今後ともLeeの日本での活動を期待したいと思います。


riceprice-1.jpg

『rice_price』
acrylic, rice on canvas / 91×116.7cm / 2004


【プロフィール】:Lee・DongJae (B.1974)
1999 (韓国)Dong-Guk大学校 美術学科 卒業
2002 (韓国)Dong-Guk大学校 大学院 美術学科 卒業

【レジデンス】
2006-2009 ジャンフン(Jang Heung)・アトリエ、ジャンフン
2008 パリ国際芸術共同体 / Cite Internationale des Arts, Paris

【個展】
2009 Two Icons (Gallery Artside Beijing SpaceⅡ, 北京)
2008 icon (Cite Internationale des Arts, パリ)
2007 The Contemporary (Insa Art Center, ソウル)
2004 rice_price (Insa Art Center, ソウル)
rice, rice (Seoul Arts Center, ソウル)
2003 seed (Gallery Chang, ソウル)

【主な団体展】
2011 Beyond Limits (Shinsegae Gallery, ブサン)
記憶の未来を追いかける人たち (Gana Art Center, ソウル)
2010 思惟の森(Youngeun Museum of Contemporary Art, 光州)
My Room Our Atelier (Gana Art Center, ソウル)
2009 The Great Hands (Gallery Hyundai, ソウル)
未来の作家 (Gallery Rho, ソウル)
2008 Real Illusion (Gana Art Gallery New York, ニューヨーク)
Let a thousand flowers blossom (Cite Internationale des Arts, パリ)
2007 ARCO art fair, Spain (Juan Carlos I Exhibition Centre, マドリード)
SH Contemporary Art fair (上海)
2006 Contemporary Asian Art (Sotheby`s New York, ニューヨーク)
10 Faces of DAKS (DAKS Plaza, ソウル) 



<執筆:W>

続きを読む

光州ビエンナーレ『萬人譜 10,000 Lives』

光州ビエンナーレ『萬人譜 10,000 Lives』

【ビエンナーレ展示概要】
会期:2010年9月3日(金)~2010年11月7日(日)
場所:光州ビエンナーレ展示館・光州市立美術館・光州市立民族博物館
http://www.gb.or.kr/


光の都市と言われる韓国の光州。第8回を迎えた「光州ビエンナーレ」の取材で活気に溢れる秋の光州に行って参りました。

1.jpg

今回の光州ビエンナーレのテーマは『萬人譜 10,000 Lives』。
『萬人譜10,000 Lives』とは、韓国では民衆詩人と呼ばれる、ゴ・ウン(Go Eun)の同名の連作詩から採用されたテーマです。ゴ・ウンは、今年のノーベル文学賞にノミネートされたことで世界によく知られています。「萬人譜」は、ゴ・ウンが、1980年光州事件(正式名:光州民主化運動‐民主化を求める活動家とそれを支持する学生や市民が韓国軍と衝突し、多数の死傷者を出した事件)に関わった疑いで監禁された時から創作し始めた作品で、今年の4月にそのラストになる30巻を発表することで完結しました。それは、詩人が一生の間直接会った人、または歴史や文学を通して影響を受けた人物など、およそ3,800名の人生を要約して紹介した一種の肖像画集とも言えます。

ビエンナーレのディレクターは、「イエスより若い:Younger than Jesus」という展示企画でニューヨークのダーリン(寵児)に浮上したイタリア出身のマッシミリアーノ・ジョーニ(Massimiliano Gioni)。写真評論家であるスーザン・ソンタグ(Susan Sontag)の「生きることとは、撮られること:To live is to be photographed」という言葉を副タイトルに考えていたというジョーニの話通り、展示の構成は圧倒的に写真が多いようでした。

出品作品は、1901年から2010年まで活動した作家、31ヶ国134名の作品で、ドキュメンタリー写真、映像、民芸品などが展示されています。中には今回の光州ビエンナーレのために制作された新作も含まれています。

2.jpg < ビエンナーレ館> 3b.jpg < 光州市立美術館>

          
展示空間は、ビエンナーレ館(1~5展示館)、光州市立美術館、そして光州市立民族博物館と大きく三つに分けられ、各展示館ごとに個性的な空間演出がなされています。各展示スペースが持つ小主題、そしてそれに関わる一連の作品群は、形や使われたメディア、あるいは歴史的な意味などによって分類され、『萬人譜10,000 Lives』というテーマにふさわしいヒトの「生」を語ってくれます。

「写真での表現、ポーズをとること、イメージを通した人のアイデンティティーへの探求作業」という小主題をもつ「ビエンナーレ1展示館」には、光州市民のボランティア参加によるパフォーマンスや観客の参加を積極的に誘導する作品で目立ちました。中でもイタリア出身の作家フランコ・バカリーの作品、「この壁にあなたの痕跡を写真に残しなさい」は、展示場に置かれた写真ブース(証明写真)に入った来訪者が、自らポーズをとりながら演出した写真を壁の全面に貼ることで完成させようとする作品です。参加者はその行為や残した痕跡(写真)によって彼の作品の一部となります。

4-1b.jpg 4-2b.jpg

フランコ・バカリー(Franco Vaccari) 
「この壁にあなたの痕跡を写真に残しなさい」

また、宗教的な人物、偶像、人形などで構成された「ビエンナーレ4展示館」では、今回のビエンナーレで一番の話題となった「テディベア・プロジェクト」を見ることができます。キュレーターでありながら収集家であるイデッサ・ヘンデルス(Ydessa Hendeles)が作り出したこの空間は、テディベアを抱いてポーズをとった人々の写真が3千枚以上展示されています。古い白黒の写真の中には仲よさそうに写された人とテディベア。今は一人ぼっちでその写真とともに展示されているあの時のままの人形の姿は、なんとなく寂しさを感じさせるものでした。

5b.jpg

イデッサ・ヘンデルス(Ydessa Hendeles)
「テディベア・プロジェクト(The Teddy Bear Project)」

6b.jpg

ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)
「陳腐さの到来」 1988
Polychromed wood
Deste Foundation, Athens
案内のスタッフさんが今回のビエンナーレで一番高い作品と自慢げに話してくれたジェフ・クーンズの「陳腐さの到来」。

ほかにも、第8回光州ビエンナーレは、メディア・アートの形を借りて残された光州事件や9.11テロ、そして過去世界で繰り返されてきた民衆への虐待と搾取という悲惨な歴史を見せることで、「歴史」が起こしたヒトの「死」が、個人の「歴史」の中ではどんな意味を持つ「死」として残されるのかを提示してくれます。


< 執筆:W>

続きを読む

アーティストLee・ Kang Wook

1_convert_20100617200704.png


梅雨入りの季節、ワールドカップの熱気で世界中が盛り上がっているようですね。皆様もわくわくと楽しんでいらっしゃいますでしょうか?
今日は、韓国内や海外での個展を中心にその活躍の場を着々と広げつつある韓国の若手作家の一人をご紹介させていただきます。

イ・ガンウク(Lee・Kang Wook)の作品を始めて目にしたのは海外のオークションハウスの下見会。近年、圧倒的に具象画が多い韓国の現代アート界では、抽象画とはちょっと珍しいと思いました。
34才という若い作家が作り出した抽象の世界は、淡く薄く色付けた平面のキャンバスの上に、宇宙の一部なのかある生き物の細胞なのか、まるで生きているような様々な線や点たちが生み出す妙な空間。

2_convert_20100617200835.png

キャンバスにグワッシュで描いたドローイングの上に、ジェル・メディウム(Gel Medium)とバインダー(絵具の固着材)を何度も塗り重ねることで立体的な「透明感」を作り出すイ・ガンウクの作業は、まるで、暖かくて柔らかい無定形の対象を剝製にするように、作家の内面からのイメージをキャンバスの上に固着させます。作家はこのような瞬間的な固着の過程を通して、観る人に動と静、生と死の意味を考えさせると同時に、その固着された対象の永続を望むようにも見えます。

彼の作品には、奥から染み出す鮮やかな色彩をより生々しく感じさせる「透明感」のほか、優れた「繊細さ」を感じることができます。洗練されたタッチとビーズやプラスチックとのストイックな組み合わせは、まるで細胞たちが生きているかのようにうねり、限定されたキャンバスの画面を超えて宇宙の何処までも広がっていくように見えます。それは温和で繊細な作家の性格からくるものでしょう。

3_convert_20100617200905.png


「全体は自分であり、部分は自分を構成する最も微細な自分を示す。見る主体(観客)と描かれる客体(作品あるいは作家自身)との間を縮めることとは、結局、自分が自分自身にどのくらい近づけるかの問題であろう。」と作家は言います。それはまるで、人類の、性の、個人の区別は、顕微鏡で見てみればただの「細胞」に過ぎないと、人と人との間に生じる「差異」の儚さを教えてくれるようですね。

日本でも3回の個展経歴を持つイ・ガンウクに実際お会いしたところ、自己愛に溢れる愉快な方で、「自分を愛することって、他人を愛する一番いい方法です」というやさしい真理を教えてくれました。
アジアだけではなくアメリカやヨーロッパの有名なギャラリーでの個展や企画展を通してその評価を高めてきたイ・ガンウクは、現在イギリスのロンドンで制作活動を進めています。

4_convert_20100617200928.png
< 作業中のイ・ガンウクさん>

■プロフィール: Lee, KangWook (B.1976)
2001 (韓国)Hong-Ik大学校 美術大学 絵画科 卒業
2003 (韓国)Hong-Ik大学校 美術大学大学院 絵画科 卒業
2004 レジデンス:第3期ChangDongスタジオ(2004~2005(韓国)国立現代美術館)

【個展】
2007 Gallery Rho, ソウル
Hino Gallery, 東京
2006 Spring Gallery, 上海
2005 Galerie de Temps, 東京
Cheltenham Art Center, フィラデルフィア
Gallery Will, ソウル
2004 Gallery Rho, ソウル
Gallery Ju-ichi gatsu, 東京
2002 Total Art Museum, Jangheung(韓国)
Hanjeon Plaza Gallery, ソウル

【主な企画展】
2008 KAM’s Choice: The Soul of Korean Contemporary Art (Insa Art Center, ソウル)
Emergentism (Edge Gallery, 香港)
2007 Imaginary Moments (Im Art Gallery, ソウル)
月刊朝鮮〈2007評論家選定現代作家50人展〉
2006 現代日・韓展(ONO Gallery, 東京)
We Meet Prague-Korea Contemporary Art 16 Artists Joint Exhibition(Galerie Passage, プラハ)
2005 ソウル青年美術際-ポートフォリオ2005(ソウル市立美術館, ソウル)
韓・米現代美術の理解と交感展(Cheltenham Art Center, フィラデルフィア)

作家Homepage: http://www.leekangwook.com


〈執筆:W〉

続きを読む

ナムジュン・パイク アート・センター

【ナムジュン・パイク略歴】
1932年、韓国ソウル生まれ。
1956年、東京大学文学部美学・美術史学科卒業。
1956年 ドイツに渡り、ミュンヘン大学で音楽史を学ぶ。フライブルグ高等音楽院で作曲を学ぶ。
1962年 フルクサスの活動に参加。東京、ローマでの展覧会に出品。
1964年 ニューヨークへ移住。
1965年 ニューヨーク、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチにてアメリカでの初個展。
1977年 ビデオ・アーティスト久保田成子と結婚。ハンブルグ美術大学で教鞭をとる。
1982年 ホイットニー美術館で大回顧展
1984年1月1日、衛星中継番組「グッド・モーニング・ミスター・オーウェル」が米、仏、西独、韓国などで放送される。
1993年 第45回ヴェネツィア・ビエンナーレに招待出品。
1998年 京都賞受賞。
2000年 米韓で大規模な回顧展。ウィル・グローマン賞受賞。
2006年1月29日、アメリカ合衆国フロリダ州マイアミの別荘で死去。


ビデオ・アートの開拓者としてよく知られるナムジュン・パイク。ナムジュン・パイク アート・センターは、韓国のソウルから車でおよそ2時間かかる京畿道に位置し、京畿道の道立美術館の一つとして運営されています。

img_1.jpg
〈アート・センターの外観〉

パイクの生前である2001年から設立の企画が開始され、2008年に着工されたこのアート・センターは、パイク本人から〈ナムジュン・パイクが長生きする家〉という名を付けられました。

その施設をちょっと見てみると、全面積5,605㎡の地下2階・地上3階の建物には、1~3階の展示スペースや、資料室、アトリエ・スタジオ、収蔵庫、研究室などが揃っています。2,285点の収蔵品の中、常設展示されている作品は、例の〈三元素〉、〈TV魚〉、〈TV時計〉、〈ロボット456〉など、彼を代表する作品揃いで、「いつでも会えるよ!」と言うように来客を迎えています。

img_2.jpg
〈1階の展示風景〉 

img_3.jpg   img_4.jpg
〈2階の風景〉

まるで普通の家のようにいくつかの部屋に区切られた1階の展示場から2階への階段を上ってみると、1階の展示場全体を見渡すことができます。中でも、1階からではなかなか分かりにくかった大きな作品群の全てを見ることができ、とても新鮮な風景でした。流石〈ナムジュン・パイクが長生きする「家」〉です。


img_5.jpg   img_6.jpg
〈3階の展示風景〉        

自分で名づけたアート・センターが着工する直前に伝えられたパイク死去の報に接し、とても残念に思った人も多いことでしょう。
しかし、寛容的でありながら批判的であったナムジュン・パイクの芸術精神、そして「アートは、チャレンジである」と言った彼の話のように、ナムジュン・パイク アート・センターがこれから見せてくれる新たな展開はとても楽しみなものに違いありません。

以下は、2004年のニューヨークにて、韓国の朝鮮日報、Jung,JaeYen記者が取材した記事を訳したものです。ナムジュン・パイクのアートの世界をより身近に感じることができますように添付いたしました。

【2004年のある日、ニューヨーク】

-今一番やりたいことは何ですか?
「ウム。。恋愛!」

-恋愛はかなりの経験のお持ちではないでしたっけ?
「それが、まだ足りないの。」

-みんな先生を天才と呼びますね?
「いや、天才じゃありません。それはお世辞。」

-でも、美術史に残る偉大な芸術家ではあるでしょう?
「残るのは残るはず。」

-どんな芸術家としてですか?
「メディア・アーティスト。」

-それだけじゃ、ちょっと足りない気持ちになりません?
「じゃ、どうするの?」

-ビデオ・アートの創始者はいかがでしょう?
「どうでもいい。自分の仕事さえできるならばね。」

-恋愛の他にアート的にはなんかやりたいことはありませんか?
「本を書きたいね。自叙伝。英語で書くつもり。」

-タイトルは?
「スクルタブル・オリエンタル(scrutable oriental)。〈わかりやすい東洋人〉の意味なの。みんな東洋人に〈スクルタブル(scrutable)〉と言うからね。しかし韓国人はちょっと違うね。正直というか。。。」

-韓国人に言いたいこととかありますか?
「いっぱい働いて、いっぱい遊んでね!って。」

-遊びって大事ですか?
「大事。」

-良い遊び方は何でしょう?
「いっぱいお酒飲めば良いの。マッコリ(お酒の一種)をいっぱい飲んだら良い。」

-一番素敵な芸術家って誰でしょう?
「ウム。。ヨーゼフ・ボイス、ジョン・ケージだろう。」

-お体がちょっと不自由で、作業に不便ではありませんか? 治療も真面目に受けていないと聞きましたが。(この頃のパイクは、病気で車椅子に乗っていました。)
「元々怠け者なのよ。」

-手が不自由なら作業する際にいらいらしませんか?
「もちろん。しかし、私はコンセプチュアル・アーティストだから大丈夫。頭も大丈夫だし、話もできる。いらいらしたりはしないね。」

-ニューヨークに来てから40年、〈グッドモーニング・ミスター・オーウェル〉の発表からは20年ですね。あっという間ですね?
「そうね。仕方ないだろう。」

-どうしてニューヨークが好きなのですか?
「暑いから好き。犯罪も多いし。」

-だからお好きですって?
「アートはそこからだよ。人生がくさったらアートになり、社会がくさったらアートになるの。」

-以前、〈アートは詐欺〉と言いましたね?今度は〈社会がくさるとアートになる〉ですって?
「その通り。」

-何の意味ですか?
「そんな意味なの。」

-では、ソウル(韓国)ももっとくさったら芸術家がいっぱい生まれますかね?
「そうね。ソウルも腐敗してる。だからこそもっと良いアートが生まれるはずだ。」

-ナムジュン・パイクってどんな人ですか?
「わたし? バカ者。」

-どうしてですか?
「バカだからバカだろう? バカなの。バカ。狂ったやつ。」

-若い頃、狂ったやつってよく言われましたよね?
「もちろん、アメリカでは未だに言われる。」

-そう言われて大丈夫ですか?
「しょうがないじゃん。私はスノッブ(snob)だから。名声を楽しんでる。お金は持ってないけど名声は持ってた。」

-いったいどうしてピアノを破ったり、ネクタイを切ったりしたのですか?
「それが、ダダイズムだから。」

-人生って何ですかね?
「人生は、くさったマッコリだ。」

-それはどんな味ですか?
「知らん。私もまだ味見してないからね。すっぱいだろう?」

-最近も熱心に新聞を読んでいらっしゃいます?
「韓国の新聞、ニューヨーク・タイムズなどなど読んでる」

-アメリカ大統領選挙にご興味ありますか?
「うん。ケリーが勝って欲しい。平和主義者だから。」

-いつかは韓国に帰りたいですか?
「うちの家内が亡くなったらね。(愛情たっぷりの声で)家内はなかなか死なないの(笑)。元はビデオ・アートをやってたけど、私のせいであんまりやれなくて、すまない。」


【観覧概要】
日~木曜日:午前10時~午後7時
金~土曜日:午前10時~午後9時
*年中無休
*入場料:無料

< 執筆:W>

続きを読む

「シンオクジン・コレクション 日本の近・現代美術」展

韓国で一番大きくて奇麗な港町と言われる、釜山(ブサン)市にある「釜山市立美術館」では去る2月23日から4月18日にかけて「シンオクジン・コレクション 日本の近・現代美術」展というちょっと珍しい展覧会が開かれていました。

表題の展示は、シン・オクジンさんという韓国人のコレクターが集めてきた日本の近・現代美術の作品を紹介する展覧会で、シンさんは、本来画商として韓国の美術界でよく知られている方です。今回の展覧会では、そのシンさんが10年かけて集め、釜山市立美術館に寄贈してきた日本人作家の作品、およそ50点が公開されました。

img_01.jpg
〈展示風景1〉

梅原龍三郎をはじめとする近代作家や、草間彌生・奈良美智などのコンテンポラリーアーティストにわたる作品のラインナップは、日本の近・現代美術の流れを一度に観ることができます。中でもシンワの近代美術オークションに出品されたことがあるいくつかの作品との再会は、とても懐かしく嬉しいものでした。

今回の展覧会は、個人コレクターの寄贈による初めての日本美術の紹介ということや、韓国内での寄贈文化の定着の良い例として話題になり、メディアからの取材も多かったようです。

展示は、時代の流れによって五つのスペースに分けられ、各展示会場では油絵・水彩・版画・彫刻・立体など、各作家の個性がよく伝わるようにコレクションをうまく見せていました。
中でも、梅原龍三郎、レオナールフジタ、岸田劉生など、日本を代表する巨匠たちの作品は、「日本における近代美術はこちらです。」と言うように堂々と展示され、韓国人の来客を迎えていました。

img_02.jpg
〈展示風景2〉

画商として40年近く多様な作品を取り扱ってきたシンさんが、なぜ日本の美術をコレクションし始めたのか、それは両国の間にできた歴史を遡ってみることでわかるようになります。

シンさんの話によると、現在、韓国で高く評価されている近代美術の作家を調べるたびに、必ず日本の近代美術につながり、両国間の特別な美術史が見えてきたそうです。
それは、韓国の油彩画家の第一世代のほとんどが日本への留学の経験を持ち、その頃、西洋美術を直接学ぶことができなかった韓国の画家たちは、日本の留学生によって入ってきた西洋画、つまり「日本の洋画」をそのまま「西洋画」として吸収したということです。そのような美術史的な痕跡から、自国の近代美術を知るためにはまず日本の近代美術を知るべきだと考え始めたのが、シンさんのコレクションの始まりでした。

img_03.jpg
〈展覧会カタログ〉

img_04.jpg
〈韓国・空間画廊代表、シン・オクジンさん〉

韓国語・日本語・英語の3ヶ国語に訳された作品解説付きのカタログからみても、今回の展覧会のため、今までどんなに努力を注いだのかよく伝わってきます。
現在も進行中であるシンさんのコレクション、そして釜山市立美術館の展示企画は、これからもまた新たな展開を見せてくれることでしょう。

桜が満開に咲いた頃、展示会場のあちこちをゆっくり歩きながら、両国における本当の意味の美術史が始まった瞬間にふっと気付いた自分でした。

今週末からいよいよゴールデンウィーク。皆様、お好きなアートと共に素敵な連休をお過ごしください!


〈執筆:W〉

続きを読む

痛みを描くアーティストKwon, KyungYup

20100409-1_convert_20100409190830.jpg
「My heart」 162.2×112.0cm


「純粋な空間、無菌状態の人工的なこの空間に、たった一人で、自分自身の内面を見つめている少女は、身に刻まれた過去の痛みを持つ現代人の肖像です。」(作家ノートより)

桜の花びらの舞い落ちる季節、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今日は、この季節にふさわしい桜色の奇麗な絵をお見せすることから始めてみました。上の作品は、近年韓国を中心にアジアの各地からラブコールが高まっている韓国人女性アーティスト、コン・ギョンヨプ(Kwon, KyungYup)さんの作品です。

体の一部を包帯に捲かれた少女たちを通して人の魂を表現するコン・ギョンヨプさん。パステル風のやさしい空間から染み出す不思議な雰囲気は観る者に何気ない悲しみを感じさせます。また、絵の中の弱々しそうな人物は漫画やアニメに登場するような、傷つきやすい少女を連想させ、憐憫の感情を生じさせます。


●Kwon, KyungYupさんのプロフィール

【個展】
2010 Last Letter (Unseal Contemporary, 東京)
2009 Space of Memory(Gana Art Gallery, ソウル)
2008 Art Seoul 2008(ソウルアートセンター, ソウル)

【グループ展】
2010 The more, the better(Sun gallery, ソウル)
2009 Korea International Art Fair(Coex, ソウル)
HongKong International Art Fair(HongKong Convention Center, 香港)
2008 Opening Show(Times Art Gallery, 台北)
Blue Dot ASIA (Seoul Arts Center, ソウル)
MicroART69-Heart (In-Sa Arts Center, ソウル)
2007 Team preview “Art Show” (Gallery Indeco, ソウル)

20100409-2_convert_20100409190409.jpg
〈作業に夢中になっているコンさん〉


ご覧のように、コンさんが作品の中に象徴的なモチーフとして良く使っているのが、「包帯」と「眼」です。
中でも、必ず登場する包帯は、身体的・精神的な傷の象徴、すなわち、人間としての存在論的意味を含むすべての「傷」を表します。外からの刺激を遮断しながら、既に身に染み込んだ過去の傷を抱き込んでくれる包帯。それは、強い御守りであり、同時に優しい慰めです。

韓国ではアートフェア、オークション、展示会などでもうその人気を集めているコン・ギョンヨプさんは、その活躍の場を広げ、最近香港・台北での展示会を経て、アジア各地のオークションでもめざましい結果を見せています。中でも今度の5月8日からはいよいよ日本での初個展が開かれる予定で、皆様との初対面を楽しみにしているようです。

若い時によく感じたことがある根拠のない悲しみ、その中からまた生じてくる強い自己愛。韓国の若手の女性アーティスト、コン・ギョンヨプの作品、皆様いかがでしたか?


「Kwon KyungYup / LAST LETTER」Tokyo展
会期:5月8日(土)~29日(土)
レセプションパーティ:5月8日 17:00~20:00
会場:unseal contemporary
〒103-0026東京都中央区日本橋兜町16-1第11大協ビル2F
Tel&Fax:03-5641-6631 http://www.unseal.jp


< 執筆:W>

続きを読む

Andy Warhol, the Greatest

 この冬、ひときわ雪が降った韓国のソウルは、ポップ・アートの帝王、アンディ・ウォーホルの展覧会で盛り上がっています。昨年の12月12日から今年の4月4日にわたって開催される今回の「Andy Warhol, the Greatest」展は、今までのウォーホル展示としては韓国最大、およそ240点の代表作を見ることができます。

〈※会期終了につき、画像を配信停止致しました〉

 正式な展覧会名を、「時代を超えたポップ・アーティストの帝王、アンディ・ウォーホルの偉大な世界」という今回の特別展は、アメリカのピッツバーグ・アンディ・ウォーホル美術館とニューヨークのアンディ・ウォーホル財団、そしてフランスのグラン・パレ美術館など、世界有数の美術館や個人コレクターの協力によって叶えられたそうです。
 展示内容も、その名声にふさわしく彼の傑作揃いで、会場であるソウル市立美術館の三層スペースをうまく使った大きな展示スケールも見事です。

〈※会期終了につき、画像を配信停止致しました〉

 ご存知のようにアンディ・ウォーホルは、最初産業デザイナーとしてその名を知られ、その後ファイン・アートに転向することで、映画・広告・デザインなど、視覚芸術に全般にかけて革命的な変化を導いた伝説のアーティストです。
 今回の展覧会は、そのような彼の画業の始点から終点に向かう流れを、作家の意識を辿る形をとってうまく見せています。

〈※会期終了につき、画像を配信停止致しました〉

 展示スペースは、テーマによって10のセクションに分けられています。
 中でも、自画像を始め、マイケル・ジャクソン、ザ・ビートルズ、マリリン・モンロー、モハメッド・アリ、ジャッキー、アインシュタイン、ベートーヴェンなどの世界の有名のスターの肖像画が並んだ「Super Star Icon, I love Hollywood」セクションは、その人気が一番高いようで、大勢の観客の息でアツアツでした。
 また、「Light and Shadow, and other Experiments」セクションに展示されている< 回想>、< 影>などの抽象シリーズも、無意識のハイレベルから生じた作家の感覚を見事に見せてくれます。

〈※会期終了につき、画像を配信停止致しました〉

 なお、会期中には、ウォーホルを代表するメディアであるシルクスクリーンの体験イベントが行われます。ウォーホルの作業方法で自分のエコバッグを作ってみることができるこのイベントは、1回1時間の実習で、1万ウォン(約800円)の参加費で自分だけのオリジナル作品をお持ち帰りできます。

 自分自身と時代の欲望をポップ・アートという新しい形で捉え、現代美術史を変えたともいわれる天才アーティスト、アンディ・ウォーホル。
 アートを愛する皆様、もうすぐ春を迎えるソウルでウォーホルの作品をご覧になってみてはいかがでしょう。


[ 展覧会情報 ]
会期 : 2009年12月12日(土)~2010年4月4日(日)【休館:毎週月曜日】
会場 : ソウル市立美術館 Seoul Museum of Art
開催時間 火曜日~土曜日:午前10時~午後9時 / 日曜日・休日:午前10時~午後7時
URL:www.warhol.co.kr

< 執筆 W>

続きを読む