アール・ヌーヴォーの精華 2 ドーム《スミレ文花器》ほか


こんにちは。
3月の近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアート オークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
東京はそろそろ桜の時期が終わろうとしていますが、東北や北海道はこれから見頃を迎える地域が多いと思います。今年は大雪に見舞われたので、春の訪れがいっそう喜ばしいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さて、今週の12日(土)は、西洋美術/BAGS/JEWELLERY&WATCHES オークションを開催いたします。
今回は西洋美術オークションの出品作品の中から、おすすめの作品をご紹介いたします。
アール・ヌーヴォーを代表する存在であり、ガレとともにナンシー派の双璧をなすガラスメーカーとして名高いドームの作品です。

当社のオークションでも高い人気を誇るドームですが、その魅力は、徹底した自然主義に基づく精緻な装飾表現と生命の輝きを賛美するような明朗な作風にあります。
1878年、フランス北東部ロレーヌ地方のナンシーに移住したジャン・ドーム(1825-1885)は、既存のガラス工場を買い取り、日用的なガラス製品の製造を開始しました。翌年、長男のオーギュスト・ドーム(1853-1909)、1887年には三男のアントナン・ドーム(1864-1930)が経営や製造に参加します。そして1891年、ガレがパリ万博のガラス部門で大成功を収めたことに触発され、芸術性の高い高級ガラス工芸の製造に着手。装飾工房を新設し、ガラス職人だけでなく画家や彫刻家、金工作家などのスペシャリストを迎え、彼らの共同作業により、いっそう優れた作品の創作と新技法の開発に取り組みました。以後、シカゴ万博やリヨン博覧会などで受賞を重ね、1900年の第5回パリ万博ではアール・ヌーヴォー様式の作品を出品してガラス部門のグランプリを獲得し、国際的に高く評価されます。
そして、1914年に幕を開けた第1次世界大戦とその前後の時期、操業の中断、ドーム家や職人の世代交代を経て、作風はアール・デコ様式へと移行しました。さらに、第2次世界大戦後には純度の高い透明クリスタル作品の製造に力を注ぎ、それらをアール・ヌーヴォー期の技法やデザインと融合させるなど、今日に至るまで時代に即した新しい表現を探究し続けています。

 


  138   ドーム
 《鷺と水生植物文花器》
 H49.5×D22.4cm
 底部に金彩サイン
 
 落札予想価格
 ¥300,000~¥500,000


エッチングにより鷺と水草を浮彫りにし、それらを黒のエナメルと金彩で描き出した作品です。
繊細な線で描かれた鷺や水草、背景の土坡はあたかも水墨画のようであり、施された陰影は、水墨技法の隈のようです。
ガレのように、ドームが直接日本美術に触れたという記録は残されていないようですが、アール・ヌーヴォー期に巻き起こったジャポニスムの大流行に刺激を受けてドームもまた興味を抱き、作品に取り入れた様子がうかがえます。





 
 139   ドーム
 《スミレ文花器》
 H56.5×D15.4cm
    底部に金彩サイン

 落札予想価格
 ¥800,000~¥1,200,000

 
 Lot.138同様、エッチングの技法でスミ
 レを浮彫りにし、エナメル彩できわめて
 繊細に描き出した作品です。
 下部には金彩による幾何学文様が施さ
 れ、ドームがしばしば表現した自然主義
 的なモティーフと幾何学的な装飾との調
 和が見て取れます。
 なお、大きさもほぼ同じ類似作品が、ポ 
 ーラ美術館に収蔵されています。

 


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ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください。
このほか、今回はラリックや木製の家具類が充実しています。
※11日(金)、12日(土)の下見会はございませんので、ご注意ください。

ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)