3月近代陶芸―名工の二人・三輪壽雪と金重陶陽


こんにちは。

先週の暖かさから冬に逆戻り。花粉も飛び始めましたが、やはり春の暖かさが待ち遠しいですね。

 

さて、今週末8日(土)に「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」を開催いたします。

今回は、なんと51作品もの茶碗が出品されます!鈴木蔵、細川護熙、荒川豊蔵、岡部嶺男、加藤唐九郎などなど…名工の作品が目白押しです。ここでは十一代三輪休雪(1910-2012)の隠居後の作品、三輪壽雪時代の作品をご紹介いたします。

三輪壽雪(じゅせつ)(1910-2012)は、萩の名門・三輪家に九代雪堂の三男として生まれました。兄の十代休雪(休和)の跡を継ぎ、十一代休雪として活躍し、1983年には萩焼で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。その後2003年に長男龍作に代を譲り、号した名が壽雪です。

LOT.217 三輪壽雪「鬼萩わり高台茶碗 銘 一」
H10.5×D17.2cm
胴部に掻き銘「寿」
共箱
「人間国宝 三輪壽雪 碧心展」出品 日本橋三越本店/2006(平成18)年
落札予想価格:★(成り行き)200万円~300万円

 本作は、2011年、壽雪が101歳の時に「一」と銘振りした茶碗です。大きく開いた口と、オブジェかのように主張しているごつごつした高台が、とにかく目を引きます。白と黒のコントラストは美しく、黒い部分は、鉄分が多く含まれている萩沖の見島の土を溶かし下塗りされたもので、その上から白釉(しろぐすり)を掛け、あとは亀裂が自然に入るに任せ、この景色は作られています。晩年になるにつれ、どんどん大きくなっていく茶碗は、壽雪の心の広さ、大きさを表すかのようです。陶芸研究家・評論家の林屋晴三(1928-2017)からは、「茶が飲めない茶碗があってもいいんじゃないか」註1)と評価されました。例え四苦八苦しながらでも、手に持ち茶を楽しみたくなる不思議な魅力ある茶碗です。

 

註1)『萩焼の造形美 人間国宝三輪壽雪の世界』 図録:三輪壽雪インタビューより 東京国立近代美術館工芸館他/2006年

 

LOT.143 金重陶陽「備前蓮ノ葉皿」
 W31.6cm
 底部に印銘「(ふんどう)」
 金重晃介箱 ホツ有
落札予想価格:★(成り行き)10万円~15万円

60歳で備前焼作家として初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された金重陶陽(1896-1967)は、備前焼中興の祖として知られています。幼い頃から天賦の才を持っていた陶陽は、花鳥などの細工物を得意としていた“でこ師“(細工師)である父に師事しました。その時代の備前焼と言えば、細工物(型物)が主であり、陶陽も24歳の若さで細工物の名工と言われるようになります。型で取った鳥や獅子に、後から毛を一本一本手書きする精緻な表現技法は、他の作家より抜きん出ていたといいます。

LOT.143も型物の蓮皿に葉脈を丹念に描いており、底部の中央には、蓮の茎もしっかりと付けられています。上面は三つの牡丹餅と変化に富んだ窯変が見られ、どの面からもじっくりと鑑賞したくなる逸品です。さらにその薄さを見れば、だれが見ても卓越した技術があることは一目瞭然です。LOT.146の向付は、印(手印)(てしるし)が入れられていないことから考えると、さらに初期作品なのかもしれません。陶陽の初期作品はなかなか出品されませんので、その技量の高さが顕著に窺える作品をご覧ください。

LOT.146 金重陶陽「備前公孫樹向付 五客」
 各H6.9×W14.7cm
 金重晃介箱 一客ナオシ有、三客ホツ有
 落札予想価格:★(成り行き)15万円~25万円

 

*下見会・オークション会場、スケジュール、そのほかの注目作品はこちら。

オークション前日と当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。

ここに紹介していない作品も名工たちの技術が冴えわたるものばかりです。ぜひ下見会場に足をお運びください。

 なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。お待ちしております。

                                        (江口)