伊東深水の美人画―《春の雪》


こんにちは。
先月の西洋美術、BAGS/JEWELLERY&WATCHESオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
さて、今週26日(日)は、MANGA/Super Athletes Collectibles/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/近代美術オークション、SHINWA COLLET Watch Auctionを開催いたします。下見会場は通常通り銀座の弊社、オークション会場は丸ビルホール(丸ビル7F)となります。また、今回は日曜日の開催となりますので、お間違えのないようご注意ください。

今回も出品作品の中からこれからの季節にぴったりの一点をご紹介いたします。
美人画の名手・深水の線描の巧みさに改めてうっとりしてしまう名品です。

【 オークション終了につき、画像は削除させていただきました 】

247  伊東深水
《春の雪》
143.1×56.8cm(軸装サイズ244.5×79.5cm)
絹本・彩色 
右下に落款・印 共箱
「伊東深水名品展」1957年(白木屋/東京新聞社)出品
落札予想価格 ¥10,000,000~20,000,000


伊東深水(1898-1972)は上村松園、鏑木清方と並び称される、近代の日本画を代表する美人画家です。
1898(明治31)年、東京の下町に生まれた深水は、11歳で印刷の仕事に就き、その傍らで図案部門の顧問であった結城素明に画才を認められ、鏑木清方に入門します。再興第1回院展、第9回文展に初入選し、16歳の若さで画壇にデビュー。新聞や雑誌の挿絵、新版画運動への参加を活動の中心とした時期を経て日本画制作に専念し、その後は帝展や日展を中心に活躍。歌川派浮世絵の流れを汲む美人画や同時代を生きる女性たちを描いたモダンな風俗画で、美術界の評価のみならず広く大衆の人気を博しました。


舞い落ちる雪の中、傘を差して歩く女性を描いた傘美人の主題は、浮世絵の好画題として数多く制作され、浮世絵から多くを学んだ深水もこの主題を好んで描きました。
本作は、深水による傘美人の代表作の一つとして知られる《春の雪》(1946年作)と同じ下図を使用したと考えられる類似作品であり、1957(昭和32)年に開催された「伊東深水名品展」(日本橋・白木屋)の出品作です。
また、本作の箱書きには「青衿会美人展出品作」と記されています(参考図版参照)。これは『自由美術』第1巻第1号(1946年)や『鏑木清方と昭和の美人画―青衿会及び「婦人画報」関係作品所収―』(鎌倉市鏑木清方記念美術館、2021年)などの青衿会展関係の資料より、深水が中心となって結成した青衿会の第6回展(1946年)を指すものと考えられます。それゆえに本作も1946(昭和21)年頃に制作された作品でしょうか。


江戸後期の風俗に取材した作と思われる本作では、雪化粧した梅の花を楽しむような二人の女性の姿が、端正で流麗な線描によって艶やかに表現されて
います。
美しく結われた女性たちの髪、華やかな着物の文様と生地の質感、機能美に富んだ傘を緻密な筆致で描き出す一方、背景では梅の花の形態を様式化し、雪との組み合わせを情緒的に表しています。人物だけでなく、このように背景の自然描写に力を注ぐことは、昭和期の深水の美人画において重要なテー
マでした。本作では深水が得意とした雪を胡粉の濃淡と淡墨によって捉え、枝にふんわりと積もる様子を巧みに表して画面を充実させています。伝統的な主題を季節の風情とともに描き出した作であり、優美でありながら凛とした女性たちの佇まいには江戸の粋と深水の確かな描写力を感じさせます。


← 参考図版:本作に付属する箱書きです。

ぜひ下見会場で実際の作品をご覧ください
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                       このほかにも日本画は東山魁夷、加山又造、平山郁夫、杉山寧、徳岡神泉
                                         など、洋画は熊谷守一、国吉康雄など、外国絵画はシャガール、マルケ、
                                         ユトリロなどの巨匠たちの作品が出品されます。

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなど
の方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

(佐藤)