こんにちは。
先週の近代美術/近代美術PartⅡオークションにご参加頂きありがとうございました。
今週は、今年初めての近代陶芸オークションが開催されます。今回は久々に300点を超える出品数ですので、ぜひお気に入りを見つけにいらしてください!
ではまずこちらの御紹介。
LOT.123 三輪壽雪「鬼萩割高台茶碗」
「壽雪」とは、十一代三輪休雪(1910-2012)の隠居名です。三輪家は萩焼の伝統的を守りつつ、革新的な技法や表現手法を駆使し現在にその技を繋げています。
今まで弊社では、“十一代”としての作品は扱ってきましたが、“壽雪”となられてからの作品は、初めての出品です。白釉のその白さと、萩の土が見え隠れしている様子は、今まさに雪が降り積もっていっているかのような臨場感を覚えます。通常の江戸時代から続く一般的な「鬼萩」よりも多くの小石や砂を混ぜ、釉薬を弾く見島土を部分的に塗り、荒々しさを増し制作しているそうです。
本作が作られたのが、2006年。なんと96歳の時の作品です。割高台の力強さといい、 “壽雪”となってから、円熟期を迎えたと言っていいかもしれません。その大きさもさることながら、手にするとその人柄も伺えるような味わいのある作品です。
また、三輪家の作品としては、壽雪の兄・三輪休和(十代休雪)や、長男・三輪龍作(十二代休雪・当代)の作品も出品されます。
三代にわたる休雪のそれぞれの茶碗を見比べてみるのもおもしろいかもしれません。
そして今回も「古美術オークション」を同時に行います。
乾山(1663-1743)は、仁清と並び称される江戸時代の名工です。兄は言わずと知れた、琳派の代表的な絵師・尾形光琳。この今回の作品は、「光琳派畫集」歴史図書社(初版は明治39年/審美書院)や、「乾山・抱一」(昭和16年/高見澤木版社)にも掲載されています。また、本作を所有していたのが、酒井抱一(1761-1829)のパトロンであった武州行田(現在の埼玉県行田市付近)の豪商・大澤久衛右門であり、代々大澤家に伝わってきていたことも分かっています。昭和3(1928)年に、大澤家に伝わってきた数多くの琳派の作品と共に世に出た中の一つなのです。この愛らしい鹿にまつわる箱の仕立てや所載からも、どれほど珍重されてきたかが伺えます。乾山の大胆で独創的なデザイン性がふんだんに発揮され、現代の作家が作ったとしても通用しそうな作風です。
色あせることない“古美術”乾山。
江戸時代から現代に渡る、芸術的な作品群をぜひご覧ください。
(執筆者:E)