こんにちは。
先日丸ビルで開催されましたMANGA/Super Athletes Collectibles/近代美術PartⅡ/Contemporary Art/近代美術オークション、SHINWA COLLET Watch Auctionにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。今週は、弊社にて今年最後のオークション・近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークションが行われます。
今回は、お茶道具が数多く出品されます。江戸前期の茶匠の筆が添えられた茶道具類や、樂家代々の茶碗、茶人から珍重されてきた見立ての品々、現代作家による写しの作品など、風合いや、用途、作家別でご覧になられても面白いかと思います。
なかでも近代に入り、古美術の蒐集家として質量ともに優れていたと知られる三者の数寄者に渡った作品をご案内いたします。
「祥瑞(しょんずい)」とは、中国明時代末期の崇禎年間(1628-1644)に景徳鎮で焼成された磁器で、小堀遠州など日本の茶人らの注文によって焼かれた染付を指します。胴部には、文人の美徳や理想を表す「三友」(松竹梅)を詠んだ漢詩と絵付けが施され、見込みにも太陽に例えられた「菊」という目出度い図柄があり、薄造りで文人趣味の品ある作です。
本作が、一番初めに世に出されたのは、薩摩出身の明治時代の実業家で、裏千家十三代圓能斎に茶の湯を学んだ赤星弥之助(1853-1904)の売立でした。赤星の旧蔵品の中には、現在国宝に指定されている南宋の画家・梁楷(りょうかい)の《雪景山水図》(東京国立博物館蔵)などが有名です。その後、文人画家・田能村直入に師事した田近竹邨(たぢかちくそん)(1864-1922)が所持しました。竹邨は、師の師である田能村竹田の《亦復一楽帖》を所持しており、これは現在公益財団法人名勝依水園・寧楽美術館が所蔵し、重要文化財の指定を受けている作品です。竹邨は、この作品を手にした喜びで、自身も「一楽荘」と号し、本作の箱にも「一楽荘」の蔵印を捺しています。そして三人目に、近代茶人・益田鈍翁(どんのう)の末弟にあたり古美術商・多聞店を開いた益田紅艶(こうえん)(1865-1921) の元へ渡りました。紅艶は、重要文化財である《玳皮盞 鸞天目(たいひさん らんてんもく)(茶碗)》を所有しており、現在は三井記念美術館の所蔵となっています。このように本作も、国宝や重要美術品に指定されるほどのコレクションを形成した、目の肥えた人物を魅了した逸品であると言えるでしょう。
また、「祥瑞」を“上手”とするなら、“下手”とされたのは、「古染付」でした。釉薬が胎土に密着せずにこぼれた部分・虫喰いが出来てしまうのが特徴的で、日本人は、その古朴さを愛でたと言います。
こちらは、今回出品されます古染附の香炉です。形も面白く、朴訥な草花や蝶の絵付けがなんとも愛らしいです。北大路魯山人は、明代に完成したこの染付の登場を「こんなスキッとした美しい焼物は実に見たくも見られなかったというべきだ」『魯山人著作集第一巻陶芸論集』(五月書房)と称賛しています。そして自身も古染付の写しを作成しており、今回はその中の一つ、鯰(なまず)の向付が出品されます。
魯山人の鯰向付は有名ですが、実際弊社で出品されるのは初めてのことです。なんとも言えない表情をした鯰。染付の色味は発色が豊かで、それぞれ異なる風合いを見せてくれます。
染付の味わい深い美しさをぜひご堪能いただければと思います。
また、今回もオークション当日は、下見会を開催しておりませんので、お気を付けください。
なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。お待ちしております。
(江口)