北大路魯山人・香取秀真の蒐集した古美術/八木一夫の黒陶


 先日、丸ビルホールにて開催されました「Rubik’s Cube Charity Auction/MANGA/近代美術PartⅡ/近代美術/Contemporary Art/Luxury Evening Auction 」にご参加いただいた皆様ありがとうございました。盛況のうちにオークションを終了することができました。

 さて、前回オークションの目玉のひとつでありました「金茶道具一式」ですが、こちらは藤堂高虎を輩出した伊賀上野(現三重県伊賀市)藩主・藤堂家に伝わったものでした。そして今週末に行われます「近代陶芸/古美術/近代陶芸PartⅡオークション」の古美術オークションにも、名立たる大家が所有していた作品が出品されますので、そちらをご紹介いたします。

 

 

LOT.131「芦屋真形釜」
H24.0×D23.9cm
香取秀真箱
重要美術品認定証書付
『新撰 茶之湯釜圖録』掲載 四六(寶雲舎)
『茶之湯釜全集1 筑前芦屋の上』掲載 No.53(駸々堂出版)【本付】
落札予想価格:500万円~700万円

 茶の湯釜は、鎌倉時代末期より鋳造が始まり、室町時代・応仁の頃から多数製作され、肥前・伊勢・越前・石見など各地に分派したとされています。元々は、筑前国(ちくぜんのくに)(現・福岡県)遠賀(おんが)川沿岸の山鹿庄(やまがのしょう)芦屋津(あしやづ)で鋳造されはじめ、「芦屋釜」と称されました。芦屋釜は、真形のかたちをしており、鐶付は鬼面、肌は絹肌か鯰肌で優美な茶の湯釜としての特徴があります。本作もその一つで、室町時代(1336-1573)中期に製作されたと推測されており、なおかつ重要美術品の認定を受けた貴重な品です。また旧蔵者も、明治期を代表する鋳金工芸作家で、東京美術学校(現東京藝術大学)の教授や、文化財審議会専門委員などを歴任し、工芸作家として初の文化勲章を受章したことでも知られている香取秀真(ほつま)(本名秀治郎)や、京都国立博物館に茶室「堪庵」を寄贈した、近代京都を代表する茶人・上田堪一郎(堪庵)であったことからも、本作の茶の湯釜としての価値の高さが窺えます。

LOT.130「青井戸茶碗」
H7.1×D15.6cm
・『北大路家蒐蔵古陶展覧會』掲載 五十四 大阪日本橋松坂屋 / 昭和10(1935)年【本付】
落札予想価格:300万円~400万円

 こちらは、北大路魯山人【明治十五-昭和三十四(1882-1959)】が愛蔵した「青井戸(あおいど)茶碗」です。「青井戸」とは、高麗茶碗のうち、井戸茶碗をさらに分類した呼び名で、小振りで背も低く、口造りが朝顔の花のようにやや開いている特徴を持ちます。また、胴部から高台に掛けて肉が厚く削り出され、轆轤目が良く目立ち、他の井戸茶碗よりも侘び味が深いと茶人らに喜ばれ、茶の湯の碗に見立てられてきました。魯山人も、朝鮮で作られた焼き物を好んでおり、無造作な造りが、日本人の美意識と似通っていて“親しみを感じる”註)と述べています。【註)平野雅章編『魯山人著作集 第一巻陶芸論集』1980年】

 魯山人の美の琴線に触れた、侘びの美の宿る逸品と言えるでしょう。

 

また、近代陶芸オークションには八木一夫の黒陶作品が出品されます。

LOT.204八木一夫「多面的に」
H29.2×W24.2cm
下部に掻き銘
共箱
ホツ有
1978(昭和53)年作
・「没後二十五年 八木一夫展」出品 京都国立近代美術館他 / 2004(平成16)年
・『八木一夫作品集』掲載 No.158(講談社)
・『やきものの美 現代日本陶芸全集 第十四巻 八木一夫』掲載 P.75(集英社)
落札予想価格:400万円~600万円

 本作は、八木一夫(1918-1979)の代表的な作風と知られる黒陶です。陶器は、一度造形したものに火を通し、最後は自然の力に出来上がりを任せることが醍醐味でもありますが、八木はその偶然性をなるべく排除することを目指していました。辿り着いた結果が、黒陶であったといいます。低温で焼いた素地に煤を付着させ、磨くと金属のように陶器が黒光りするというもの。1957年から制作され始め、晩年には、黒陶に鉛板を貼るなどしてより無機質な要素を駆使し表現しました。本作も、鉛板が貼られた作品のひとつで、急逝する前年の還暦を迎えた年に制作されました。

 その後、八木と同じく現・京都市立芸術大学出身の加守田章二(LOT.203「壷」落札予想価格:200万円~300万円)や、栗木達介(LOT.202「銀彩花器」落札予想価格:60万円~90万円)の作品も出品されますので、ぜひ下見会場に足をお運びください。

 

 

オークションは、10日土曜日15時からです。当日は下見会を行っておりませんので、ご留意ください。スケジュール詳細は下記をご参考ください。

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